第11話
皇都から少し離れたところにお祖父様のお屋敷がありました。公爵家の先代当主の家に相応しい立派なお屋敷なのですが、人の気配はあまりせず、綺麗に保たれていなければ、廃屋に間違えそうな物寂しいところでした。
私はユリエル様と一緒に書斎へと向かいました。そして書斎の前でユリエル様に少し待っている様に言われました。
〈コンッコンッ〉
「ジーク入るぞ。」
ユリエル様が書斎へと入りました。私は扉の隙間から中を覗きこむと三年前と比べて少し痩せたお祖父様がいました。
「聞いたぞ。ついにばれたそうじゃないか。」
「何の話をしにきたかと思えばその件か。精霊社の宮司様はよっぽど暇なようだな。」
「いやいや、自分の孫にストーカーの様な真似をする奴よりかは忙しいよ。ああ、すまん。それすらもできなくなったんだったな。」
憮然として黙りこむお祖父様。そんなお祖父様を見て笑いながらユリエル様は言います。
「すまんな。少しからかい過ぎた。」
「ふん。」
「何せ儂のところに可愛いらしい子が訪ねて来たんだが、その子にお前との仲介を頼まれてな。つい嫉妬してな。」
「私にか?こんな老いぼれに何の用なんだか。」
「お前が老いぼれなら10も歳上の儂は屍か。まぁいい。入ってきなさい。」
ついに呼ばれました。私は書斎の中に入ります。
「お久しぶりでございます、お祖父様。」
私を見て固まるお祖父様。私はそんなお祖父様を傍目にユリエル様と向かい合います。
「ユリエル様、少しの間、お祖父様と二人っきりにさせていただけませんか。」
ユリエル様は心配そうにこちらを見て「大丈夫か。」と尋ねてきます。私は「大丈夫です。」と答えるとユリエル様は書斎から出ていってくださいました。
私はお祖父様と向かい合います。
「突然、お邪魔して申し訳ありません。どうしてもお祖父様にお聞きしたいことがありましたのでユリエル様に無理を言って連れて来てもらいました。」
「私には何も答えることはない。」
お祖父様がそう言ってますが無視させていただきます。
「三年前、お祖父様がお父様にお母様と別れ別のお方と結婚するよう仰ったとユリエル様にお聞きした時、ユリエル様は私達のためではないかと呟かれました。」
お祖父様は苦虫を噛み潰したかの様な顔をしております。その表情で私は確信しました。
「お祖父様は私とエリオ兄様にしっかりとした後ろ楯をつくろうとしたのですね。」
当時、お父様は決闘によって当主の座を奪った者と言われ、領民の信頼を失っていました。また、一応宰相という役職についていましたが決闘によってお祖父様を表舞台から追い出した責任として国皇陛下に任命されたからにすぎませんでした。そのためディスケンス家は公爵家とは名ばかりなほど落ちぶれていました。その上私達兄妹は将来領地を受け継ぐ資格がありませんでした。
お祖父様は伯爵家と縁を結び後ろ楯にすることでそんな私達兄妹の将来の苦労を減らそうとしたのでしょう。
「知らん。そんな下らないことを聞きにきたのか?」
そっけなく返すお祖父様。しかし問題ありません。お祖父様がいらした次の日から仕事が忙しくなったお父様の様子とさっきのお祖父様の態度から間違いないとわかりました。だから、
「いいえ」
私の質問はこれではありません。
「お祖父様はどうして私達に会いに来て下さらないのですか?」




