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魔法の国でひたすら日本生活。  作者: 花澤文化
魔法の国で日本らしい生活をする。
13/24

第11日 魔法の国で描く。

 結局というかなんというか、流れで俺はこの魔法の国ユラドラに残ることになった。魔力が溜まるまで1,2年。時間の流れが地球とは違うため、こちらの1日は地球の1秒にあたるため、それほど困ると言うことはないのだが・・・。

 はやく帰るにこしたことはない。

 正直めんどくさいし。この世界。驚くことは多いけれど魔法が使えない俺は特に便利だとかって感じることはないしなぁ。それは自分の判断のせいだけれど。

 まだ夏が始まったばかりで家は暑い。扇風機を回しているものの、いかんせん範囲が狭すぎるのだ。こんなときは扇風機の前でアイスを食うに限るな。

 冷蔵庫を開けてアイスを探す。確か大分前に買ったような・・・。

 がそごそと手を入れて探していると、インターホンの音が。

 どうせ来るだろうとは思っていた。俺はアイスを探すことをやめて玄関まで歩く。ドアを開けるとそこにはやはりお決まりの・・・。

「ってアンジェだけ・・・か?」

「私だけでは何か問題が?」

 笑顔で睨むという器用なことをしながら俺を見るアンジェ。いつもだったらロメリア、それに近所のちびっこ何人かを連れて来るのだが・・・。

 とりあえず家の中に入れ、リビングのソファに座らせる。アンジェは少しそわそわした後、俺を見る。あ、これなんかめんどくさいことになるパターンだわ。

「今日は私個人の用事で来ました」

「用事?」

「はい。現在私たち、私とロメリアは夏休み中なんですよ。それで課題が出てしまいまして・・・」

「お前まさか課題手伝えとかそういう・・・」

「違います」

 なぜかそこはきっぱりと言う。

 責任感があるのか真面目なのかは知らんが、そこは譲れないものがあるらしい。

「自由研究がありまして・・・」

「自由研究!?」

 高校にそんなのあったっけ・・・?俺の記憶だと小学生までだったような気も・・・。学校ごとに違うのかもしれないが、珍しい部類ではあるのだろう。

「それで異世界の研究をしようかと思いまして、何かいい案ありませんか?」

「結局俺じゃねぇか!」

 自由研究を考えるのって実際にやるのより大変な場合もあるんだけど・・・。しかしここは異世界。ユラドラの全てが俺に新鮮ならば、逆に地球の全てがここの住人には新鮮に見えることだろう。

 と言われてもなぁ。

 なるべく簡単で・・・・・か。

「アンジェ、絵を書いてみたらどうだ?」

「絵・・・?」

「おう。恐らくだけどこっちの絵って魔法を使うんだろ」

「うーん・・・魔法というか、自分で考えたものをそのまま紙とかに投影できるんですよね。それは結局光による見え方が変わっただけで実際紙に描かれているわけじゃないですけれど」

「それはなんというか・・・マジな意味での騙し絵だな・・・」

 魔法が便利とはいえ、それでは正直劣化というか・・・。

「ただ、才能はその方がよく見えるんじゃないですか?絵を描く才能じゃなくて考える才能」

 私はそれが一番芸術家として必要なものだと思いますけどねーとどうでもよさそうに答える。実質どうでもいいのだろう。

 芸術家とか、漫画家とかそういうのはどこか夢の職業という感じがする。俺ら普通の人間からは程遠いところにある職業。だからどこかどうでもよさそうに、関係なさそうに話してしまう。

「でもお前の言うことが本当ならそういう職業になれるハードルも下がってるのかもな」

 ハードルが下がると言うと聞こえは悪いが、そういう意味ではなく、才能があるものが入りやすいということで。才能がないにしても挑みやすくはなっていて、夢に向かってたくさんの人が頑張れる、ということだ。

 詳しくないから知らないが、画材、筆やら全部そろえるとそれなりの値段になるんだろう。それに自分の考えたことを絵で表現しろというのも難しい。

 だから考えたまんまを映し出せるこの国の芸術はみんな目指せるようなものなのだ。

「とは言ってもその中から才能があり、と判断されるのは結局かなりの少なさなんだろうけれど」

 俺自身、1位をとることに執着してはいるが、それは才能ではなく努力しての話だ。だから、一度必ず俺はどの分野でも失敗している。

 だからこの話は俺にとっても夢話というわけだ。

 俺はつい最近買ってきた子供用の絵具セットを広げる。

「なんかすごいおもちゃっぽいですね・・・」

「事実おもちゃだしな」

 キッチンの方へ行き、今朝俺が食べて洗ったヨーグルト容器に水を入れ、それをいくつか台に乗せて運ぶ。アンジェは筆やらなにやらをよく観察していた。

「珍しいか?」

「いえ、あなたが来てから少し地球という星について調べたときに見たことがあります」

「あぁ・・・」

 そういえば、こいつ醤油のこと墨汁とか言ったりしてたっけ。それならば筆ぐらい知っているのだろう。しかし触ったことがないのか筆の先をいじったりしている。

「それあんま触るなよ。広がったりするからな」

 俺はそう注意して大きなデッサン用の紙を持ってきた。さらに床には新聞を敷く。

「よし」

 デッサン用だが、なんとかなるだろ。俺自身こういうのには詳しくないし、高校生の自由研究レベルならなんとかなるはず。

「よし、なんか描きたいものとかあるか?」

「そうですねぇ・・・」

 アンジェはそう言うと部屋の中をきょろきょろと見まわす。俺の部屋の中から探すのかよ。アンジェはテレビの置いてある台の上にある木彫りの熊人形をじっと見つめていた。

「あれなんかどうでしょうか?」

「木彫りの熊か」

 まぁ、いいんじゃないか、と俺は言う。立ち上がり熊の人形をアンジェの近くに持って来てやった。

「モモさんも描きましょう」

「え・・・俺も?」

 驚きつつも暇ではあったし、絵ももちろん俺の得意分野。断る理由などない。

「うっし、やるか」

 そう言って2人してひたすら熊の人形を見つめる。

「モモさん、この水はなんですか?」

「それは筆につけるんだ。水でぬらしてから絵の具をつけて描く、それはたぶん基本だとは思う」

 俺の中学までの知識。

 高校では絵はあまりやらず、大学に至ってはそもそも芸術科目がなかった。

「おお!」

 なめらかに色が塗られていく。

 アンジェは楽しそうに筆を動かした。なんやかんや言ってもアンジェも高校生だ。見たことのないものにはそれなりの好奇心があるのだろう。

「いや、お前本番用の紙に試し描きすんなよ・・・」

 俺は新しい紙を出してアンジェに渡す。

 しかしその時言われた言葉はありがとうというお礼ではなく、

「ごめんなさい」

 という謝罪の言葉だった。

 唐突な事態についていけなくなる。俺はしばらくかたまった。

「な・・・どうした?」

「演説です、あなたの。私、だけじゃなくて国のためにあなたは嫌われ者になってしまった」

 嫌われ者という表現はくるものがあるな・・・オブラートに包んでほしい。

 実際、嫌われているというよりは避けられているんだよな。悪口ではなく、遠目から見ているだけ。ただ、それだけのこと。

 俺は小さい頃からそれなりのことにあってきたので平気ではある。

「それよりも嫌われている俺のところにお前が来ちゃっていいのかよ」

「あなたが嫌われて私があなたを避けるってかなりひどいことですね・・・」

 アンジェは俺を見ずに床を見る。

「そんなことはしません。一応、助けてはもらいましたし」

「一応って・・・」

「今まで冷たい反応しかしてませんでしたし・・・」

「そんな気にしてないけどな」

 慣れてるし。

「いえ、これは私の問題ですので」

 そう言うとどこか吹っ切れた表情で微笑む。

「ありがとうございます」

 今度こそきちんとお礼を言った。アンジェはそのまま紙の方を見て真剣に何かを描き始める。すごい集中力、というかまだ見ぬ不思議な文化に触れて嬉しそうに楽しそうにしているというところだろうか。

 さっさっさっという音が聞こえてくる。俺はその場から立ち上がり、台所へと行く。

 台所まで飲み物取りに来たのだが、あの様子だと邪魔しない方がいいな。

 しばらく待つ。

 俺は暇をつぶすために適当にうろつく。相変わらずもったいないぐらい広い部屋だ。

 大きな窓からは太陽の光が差している。

「ん・・・?」

 その時、夜でもないのに流れ星のようなものが見えた。緑色っぽい綺麗な流れ星。

「なんだ・・・?」

 しかし俺の思考はアンジェの「できたー!」という大きな声でかきけされることになる。

 まぁいいやと思い、アンジェのところに行くと、自信満々そうに絵を掲げている。

「それは・・・?」

「卵です」

 その通り、それは卵である。

 見ればすぐにでも分かる。ただ、なんでそのチョイスなのか。木彫りの熊はどうなったのか、色々と聞きたいことはあるが、どこから言おうか分からなくなるぐらい聞きたいことがある。

「というか私こそ聞きたいんですけど、あの卵なんですか?」

「ああ」

 なるほど、木彫りの熊の近くの座布団の上に置いてある、卵。俺がアルバファミリーからもらった卵である。そのまんま何もせずに過ごしていればいいと突き返され、なぜか俺が育てているということなのだが・・・。

「あれはメッカさんにもらったんだ」

「メッカおじさんに?」

「うん、なんかなんもしなくていいから持ってろって」

「珍しいですね、メッカおじさんが人に生き物の卵を渡すなんて、それもド素人に」

「いや、まぁそうなんだけどね・・・」

 ド素人って。

 言い方があるだろ。

「それはダメだ。丸描いただけだし、却下」

 アンジェが教えを請うんじゃなかったと後悔しましたと言いだすまでそう時間がかからなかった。教える時でさえ俺は妥協しないのだ。






 そんなモモ=イオロイの住む家から少し離れた場所。

 緑の流れ星の行方はそこだった。そこに落ちたのだ。クレーターなどはできず、隕石のように煙などもあがっていない。

 そこに緑の流れ星が急に出現したかのように。

「あれ・・・?」

 その流れ星の中心が話しだす。

「ここはどこ・・・?」

 不安そうに首をかしげて、あたりを見る。流れ星の正体は人、だった。また、厳密にいえば、緑色の流れ星なんかではなく・・・緑色のワープ。翻訳ワープ。

 また1人、ここに異世界から来た人物が増えたのであった。

モモとアンジェが和解後どうなったのかを軽く書きたいなぁと思ったのと次へ繋げるための話を書きたいなぁと思い、この話に。

11話ということですが実質10.5話ぐらいです。


1話完結が多いため、明確な章分けはあまりないのですが、一応前回が切れめだったので。


この先もいろいろなことをしながらのんびりと暮すお話を書いていきたいと思います。


あと、最後に。前回あたりにアンジェが好きとは言っておりますが、恋愛的な好きとは少しだけ違ったりします。

そこらへんも後々。


ではまた次回。

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