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魔法の国でひたすら日本生活。  作者: 花澤文化
魔法の国で日本らしい生活をする。
12/24

第10日 魔法の国で決める。

「アンジェ・・・」

 走り回って探すこと数十分、宮殿近くの河原(宮殿の近くに河原があるというのもなんともミスマッチな光景ではあるが)に座り込んでいた。顔面蒼白というような感じではなく、少し落ち着いてはいるみたいだが、普段の元気な様子は皆無である。

「アンジェ!」

 俺の声にびくりと反応し、俺の方を見ると、また顔を下に落とす。

「アンジェ・・・お前・・・」

「どうしたんですか、あなたは。ジジ様が明日にはあなたが帰ると聞きましたが」

 さっきの話なのになんで・・・とは今更思わない。テレパシーのような魔法があるのか、それとも電話で直接伝えたのかは分からないが、それが可能な方法はたくさんあるからだ。

「お前、怖いんだろ、魔法の研究をしている両親を責められることが」

「・・・・・ロメリアですか?秘密にしてほしかったんですけれど、そもそも秘密にしてとも言ってませんでしたしね、しょうがない・・・か」

「ああ。つーかあの女俺の記憶とか消してたんだけどあれって合法なわけ?」

「催眠術の類ですよ。魔力を何度も使っているこの時代の人間には効きません。一時期、おもちゃとして流行りましたが」

 怖すぎるだろ。ほんと地球に生まれてよかった。

「で、何をしに来たんですか?」

「いや、お前のことが気になっただけ。あんな顔されたら驚くに決まってんだろ」

「・・・・・・」

「あのさ、お前が恐れてるのって・・・世間の批判もそうだが、ロメリアのことだろ」

「・・・・・なんでですか」

「なんでって・・・あいつの家輸送会社なんだろ。今回の件で魔力が足りなくなったら最悪、そういう会社が倒産すると聞いた。それで自分の両親のせいでロメリアの未来がつぶれたら・・・って心配してたんだろ」

「・・・・・」

 アンジェは黙りこむ。

「ロメリアの将来は輸送会社と決まったわけではありません」

「そうなのか?」

 てっきり後を継ぐ的な感じかと。

「両親はそうなると思ってますが、ロメリアは未知の国を調べたりすることが好きなんです。だからそういう職業に就きたいと、思っているはず・・・」

 そういえば俺のいる世界のことを知りたいと言ったのはあいつだけだっけ。

 というか、他のやつらも少し気にしろよ、知らん世界の人間だぞ。

「でも、それでも会社が潰れたら・・・大変なことになります」

 そりゃ、後を継ぐのもまだ先だろうし、今会社が潰れたら収入がなくなるわけだからな。下手をすれば学校にさえ通えなくなってしまう。

「私の両親は魔法の研究が大好きな人間でした。魔力の消費も考えず熱中することもしばしば、そんな両親の姿を見ていると・・・なんでか許せなくなってしまったんです」

 子供の分の魔力や、自分の家の魔力さえも研究に使用したことがあるらしい。子供のお小遣いを親が使うというのもなんというか、見たくはない場面ではあるな。

 そんな姿を子供ながら批判したくなったのだろう。反抗期にはよくあることではある。というか、反抗期じゃなくとも止めるだろう。

「別に魔力はよかったんです。私も使い道に迷うぐらいでしたし。でも魔力研究はかなり危険なんです。いつ暴走するかも、強力な魔法が発動するかも分からない・・・そんなところにいてほしくなかったから批判を続けたんです」

 けれど、親はやめなかった、と。

「本当に楽しそうでした。子供のように、楽しそうに研究していました」

「・・・・・た?過去形?」

「両親は7年前に死んでいます。魔法の暴走のせいで。今でこそ安全に使える魔法ですが、新しい領域に踏み込むには危険も伴います」

「な・・・」

 絶句する。

 そこまでは誰からも聞いていない。いや、言うべきではない、と判断したのだろう。

「じゃあ今回の件はお前の親は関係ないんじゃ・・・」

「今の研究は私の両親が行った研究を元にしたものです。関係あります」

 そもそも、とアンジェが言う。

「ジジ様は国の主です。そのジジ様の部屋に一国民である私が簡単に入れると思いますか?」

「・・・・・お前」

「私はその後、ジジ様に預けられ、3年間この国を支配する側に立って過ごしていたんです」

 それは王、という意味だろう。

 すなわち王族。そのように育てられてきたということか。

「私は元一般人ですから、あの宮殿にいるのが申し訳なくて今は外で過ごしてますけどね」

「・・・・・そうか」

 そう言うしかなかった。

 事態はもっともっと深刻で複雑だったから俺にどうこうできる問題ではなかったのだ、アンジェの問題は。

「俺が魔法をバカにした時、機嫌が悪くなったのもそのせいか」

「恥ずかしいですけれどね、子供みたいですが」

「いや・・・」

 それは正しい反応だ。

 親をバカにされたら普通は腹が立つのだろう。俺は・・・分からないけれど、アンジェは正しいはずだ。

「アンジェ、俺はでも魔法を使うことはできない。でも謝りたい」

「やめてください。私だって最初は魔法が許せませんでした。自分の親を自分から奪った魔法が・・・でもなぜかその魔法をバカにされても腹が立つんです。もう・・・自分が分からないんです」

「そこらへんは俺にはどうしようもないからな。解決なんかできない。ずっと納得のいくまで悩んでいくしかない」

 俺は主人公ではないから、なんでもかんでも解決できるような人間ではないから、弱い人間だから。だからここからはアンジェが長い年月をかけて悩むしかない。

「でも、今回の問題は任せろ」

 俺はそう強く言った。

 弱い自分を隠すように強く。

「え・・・」

 アンジェは俺を驚いたように見る。

 まぁ、任せろなんて言ったことなかったしな。いつもめんどくさがって、お前らと自分から絡んでいくようなこともしなかったし。

「なんで・・・」

「なんでって・・・謝罪代わり」

「でも私だってあなたに冷たい態度をとって・・・こうやって自分が弱った時だけ饒舌に語って頼って・・・そんなの・・・」

「謝罪代わりでもあるし、俺がけじめをつけるためでもある」

「けじめ・・・?」

「今までの俺へのけじめ。ここで俺が動かないと俺は一生変われない気がする」

 このままではいけない。

 必死に悩んでいるアンジェの姿は俺に大きく影響を与えた。俺も・・・今のままじゃダメなのだろう。今の中途半端のままではいけないことだ。

 俺は・・・一番でなければならない。今の迷っている自分は俺らしくない。今の俺を変えるためにも俺は動かなければならない。

 人と繋がりを持たずに生きていくことは・・・不可能で難しい。だからそこは変えなければならない。でも俺は大きく俺を変えたいとは思わない。

 俺は自分のことが好きだからな。

「でも・・・どうやって・・・」

「だから任せろって」

 俺は立ち上がる。

「頼ることもしないし、人は今でも嫌いだ。だけど、人に頼られて、貸しを作ることは昔から大好きだった。貸しを作った時だけが唯一俺が人を頼れる時だからな」

 ズボンについた葉っぱや土を払い落し、背伸びをする。

 ここからは俺との戦いだ。

「変わるために・・・」

 そう言って俺は宮殿アルデラードへと走って行った。





 ジジ様に事情を話して、先ほどのように国全体に声が響き渡るようにしてもらった。

 というか国民への事情報告をジジ様がしていたのでそれを借りたのだ。だからすでに国民には魔力採掘場所不足と魔力研究のせいということが伝わっている。

 俺が今からすることは全国民に聞いてもらわなければならない。だからさっきの通信手段が必要だったのだ。俺はゆっくりと息を吸う。

 ちなみにジジ様には明日帰るお別れを国民にしたいと話してある。かなりあやしまれたがなんとか大丈夫そうであった。

 もちろん、俺がこれからすることはお別れなんてものじゃない。

「あー、あーみなさん聞こえていますか」

 しゃべる。

 ちなみに機材は一切必要ではなく、椅子に座り、ジジ様の作った魔法のマイクのようなものに話すだけで国全体に声が響き渡ると言うものであった。

 ジジ様の部下らしき人が国全体に広がり、俺の声が伝わっていることをジジ様に連絡する。どうやら魔法は成功みたいだ。ここは心配していない。

「俺は地球から、ここ魔法の国ユラドラに来た異世界人です」

 出だしはこれでいい。次だ。

「俺はこの国の魔力を勝手に使ってこの国ユラドラにテレポートしてきました」

 そう、言った。

 ジジ様は驚いた顔をして俺を止めようとしてくる、しかし俺はそれを手で制した。お願いだから話させてくれとそういう意味を込めて笑う。

「そのせいでこの国の魔力が不足していると、聞いてなんてことをしてしまったんだと思いました。だからこうして俺はここで謝罪会見をさせてもらっています」

 ジジ様の部下が、国の様子を言葉で伝えてくる。どうやらかなり騒然となっているみたいだ。

「俺が自分の世界に帰る分の魔力はもちろんこの国に置いておきます。魔力がたくさんあるかと思って少し魔がさしただけなのです。だから俺は魔力を置き、1、2年この国のために貢献すると決めました。ジジ様もそれを許してくれています」

 俺のことは許してくれていないみたいですが、と最後に付け加える。

「魔力は俺が使ってしまった分は全て補えると思います。魔力採掘場所不足は本当ですが、魔力の研究のせいで魔力がなくなったのは嘘です。あそこの部分は国民が混乱しないようにとジジ様が後で話す予定のカムフラージュだったのです」

 俺は途切れないように、強く言う。

「だから悪いのは全て俺でした。もう2度としません。まことに申し訳ありませんでした」

 強く。

 この魔法は電話番号の概念のようにあ、この魔法の感じはジジ様のだなというのが伝わるようになっている。だからジジ様の魔法を使うしかなかったのだ。

 逆にジジ様の魔法を使ってこうして話せば、ジジ様お墨付きの正しい情報へと変化する。

「本当はもっと後に伝えたかったと混乱させないようにと考えてくれていたのですが、無理言って今、話させてもらいました。お聞き苦しかったとは思いますが、これからはこの国に貢献できるよう頑張っていくのでどうか、よろしくお願いします」

 そう言って魔法を切った。

 ジジ様は俺を見ている。

「・・・・・これで君はこの国全員から嫌われてしまったぞ。我が国で魔法がどれだけ大切なものか分かっているだろう。その元となる魔力が勝手に使われたのだ。許すわけにはいかない事実だろう」

「知ってますよ」

 あくまで軽く、ゆっくりと、余裕があるかのように言う。

「俺の帰る魔力は今後の1、2年の魔力として使ってください。俺はまだ帰りません」

 そう言うとジジ様の部屋を出るために歩き出す。

 後悔はない・・・と言ったら嘘になる。嫌われるのは慣れていてもきついものがあるし、俺はそんな世界であと1、2年過ごしていかなければならないのだ。

 大変だろうなぁ。

「失礼します」

 頭を下げ、扉を開く。

「この国を救った救世主が嫌われ者として認識されるとは・・・皮肉なものだ」

 ジジ様が悲しそうな声で何か言ったような気がしたが俺には聞こえなかった。

 扉を閉める。

 扉の外には俺をここまで連れて来てくれたロメリアがいた。アンジェは確実に反対されるだろうからこの計画を言うことはできないし、ロメリアしか頼める人がいなかったのだ。

「ありがとう、ロメリア」

 しかしロメリアの顔は浮かない。

「あなたは・・・これでいいんですか?」

「できれば何も言わないでほしいんだが・・・」

「そういうわけにもいきません!あなたは結局同じことをしているんです・・・アンジェが責任を感じる対象が国民や私からあなたに変わっただけで・・・」

「それでいいんだよ。よく分からないけど、友達に責任感じるとかなんか寂しいだろ。それに国民だと規模がやばい。せいぜい俺に責任感じておとなしくするといいさ」

 そう言って、ロメリアに、

「だから俺を家まで送り届けてくれ。これから1年はお世話になるからな」

 ほんと、こっちの1日が地球の1秒で助かった。それがなかったら間違いなく単位落としまくって進級不可だったからな。

「ありがとうございます」

「え?」

「私の家も救っていただいたわけですし・・・」

「どういたしまして」

 そう言うとロメリアと2人で箒をまたがり、空を飛びながら外へと出る。後で気付いたことなんだが、2人箒というのは地球で言うあいあい傘のようなものだと分かってロメリアに謝ったことは懐かしいことではなかった。





 翌日、家で目を覚ましたのはインターホンの音でだった。誰かが訪ねてきたのだろう。軽く顔を洗って玄関へと行く。これが普通だと思われがちだが、こんな朝早く訪ねるのって無礼というか、普通ではないような気がする。

 めんどくさく思いながら扉をあけるとそこにはアンジェがいた。すごい機嫌悪い顔をしている。

「よ、よお。入るか?」

「これから学校なのでいいです。というか!」

 ずいっと顔を近づけて俺を睨む。

「なんなんですかあのスピーチは!」

「いや、だから俺にはあの方法しかなくて・・・」

「もうこの国の人たち全員から嫌われることになってしまったんですよ!魔力が再びたまるまで後1、2年はあるのに・・・」

 下を向いてしまう。

 こうなることが分かってたから言いたくなかったんだよな。

「でもな、アンジェ。もうやってしまったことなんだ。ぐちぐち言ってももう遅い」

「なんでそんな勝ち誇ってるんですか・・・。あなたが嫌われてしまったんですよ・・・」

 なんというか玄関先でする話でもないような気がするが・・・。

「俺はいいんだって。どうせ後1、2年だしな。お前はずっとここにいるんだろ?」

「それは・・・そうですけど・・・」

 言い淀む。つーか今更いろいろ言われてもどうしようもないんだがな。

「それ以外にも自分が帰る分の魔力も全部使っちゃいますし・・・」

「そのことについては俺の勝手だろ。今、帰りたくなかったんだよ。どうせ帰ってもやることは変わんないし。だったらもう少しこの国のことを知りたい」

「・・・・・・分かりました。まだまだ言いたいこともたくさんありますがもう学校ですので」

 ようやく終わるのかと安堵する。

 学校、昔俺はクラスが苦痛でしかなく、はやく滅べと思っていたが今ほどありがとうと思ったことはない。学級委員長がクラスの頂点だと思い、立候補したものの誰からも票が入らなかった中学1年生時代、絶対に忘れない。

「あの・・・・・代わりといってはなんですが・・・」

「ん?」

 しかしまだ言いたいことがあるのかアンジェはなかなか行こうとしない。ちなみに外朝なのにクソ暑い。太陽がかなり頑張っているせいだろう。クーラーがないので扇風機にあたりたいところではあるのだけど・・・。

 魔法のアイス系統があれば涼しいんだろうな。俺には関係ない話だが。

「あの・・・国のみんなが嫌っても私だけは好きでいてあげます」

 と真面目くさった顔で言い放った。俺は驚いて少し唖然とする。その沈黙がなんの沈黙か分からないのか、アンジェはすごく恥ずかしそうに目を俺から逸らした。

 その仕草に俺はこらえきれずに笑いだす。

「あはははは!そうか、そうだな」

「むー」

 しかしその態度が気に入らなかったのかすごい睨んでくる。いや、まさかそんなセリフが出るとは思わなかったから面白くなっただけなんだが・・・。

 不安そうに下を向くアンジェを見る。

 俺は少し笑って、

「頼むよ」

 そう言った。

 俺が初めて人に頼ったときはこの時であった。アンジェは照れくさそうにはにかむと箒に乗り、空高く飛んでいく。

 さて、俺はこの世界で今日は何をしようか。

2話連続投稿です。できれば2話連続で見ていただきたかったのでこのような形になりました。1話にまとめてもよかったのですけれどね。


もう少しだけ続きますが、次の話からはまたのんびりとした話になると思います。

でかいシリアスはこれで終わりの予定であります。

国のみんなの反応など、どうなるのか。ぜひ読んでいただければなと思います。


ではまた次回。

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