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魔法の国でひたすら日本生活。  作者: 花澤文化
魔法の国で日本らしい生活をする。
11/24

第9日 魔法の国で迷う。

 思い出す。俺はあの時のことをこの瞬間と同時に思い出す。アンジェの不安そうな顔。それがトリガーとなって思い出す。ロメリアから聞いた話のことを思い出す。

「アンジェが魔法に敏感なのはご両親が関係しているのですわ」

 ある日。

 普段となんら変わりないある日。俺は子供の相手をしつつ、ロメリアの話を聞いていた。

「両親・・・?」

「はい。この世にあふれている魔法。みんなが使える魔法。そんな魔法を研究し、こうして普及したのはアンジェのご両親なんですよ」

「え・・・じゃああいつの両親ってかなりすごい人なんじゃ・・・」

「はい」

 魔法自体はもっと前からあったみたいですけれどね。とロメリアは自ら注釈を加える。

「普及もされていました。けれど、今のこの状態にしたのはアンジェのご両親が関わっているんです」

「よく分からんが・・・少しずつ改良されていて、今改良しているのはアンジェの両親ってことか?」

「そういうことですわ」

 なんとなくではあるがわかった。

 俺が魔法について何か言う度にああいう顔をしていた理由が。

「昔はアンジェ自身も反対していたんですよね。魔法の研究。理由は魔力の暴走など何が起こるか分からないから、らしいですけれど」

 今、その仕事をどう思っているかはアンジェしか分からない、ということか。

「だからあの子の前であまりの魔法のことは・・・と言いたいところでした。けれど、最近アンジェはあなたに会ってからさらに悩むことが増えたらしくて。それはとても素晴らしいことだと思うんです」

 考えることすらせず、ただ批判していたころよりは成長している、と言いたいのだろう。

「魔法をバカにされるのは腹が立つけれど、自分も魔法研究については反対。その微妙な立ち位置で迷っているということか・・・」

「昔より、元気になって私としては嬉しいですからね」

 とほほ笑む。

「でもロメリア。この話をされたからには今までのように気軽に魔法について触れることができなくなったぞ。しょうがないことではあるが、俺も人間。よほどのことがない限り俺はアンジェをバカになんてできなくなってしまった」

「確かに。それは困りましたね・・・」

 ロメリアはしばらく考え込む素振りをすると・・・急にぱぁ!と顔を輝かせ、

「それでは今の部分の記憶をまるごと無くすとしましょう」

「はい・・・?」

 そうして忘れていた俺の記憶。

 あんの女・・・!俺の記憶丸ごと消すとかそんなのありかよ!俺はアンジェの箒にぶら下がりながら今、そう思っている。


 



 長い長い廊下を抜ける。階段をかけあがり、さらに走り続ける。しばらく走ると目の前に大きな扉が。俺はこの大きな扉を見たことがある。最初に来たところ。この世界をまたぐ大きな建物。宮殿アルデラード。その大きな扉の奥にはジジ様がいるはずだ。

 俺とアンジェはそんな扉の前に来ていた。しかし中に入れそうもない。扉の前には俺達と同じように今回の事態について詳しく聞きたい人達でいっぱいになっていた。

 もちろん、ジジ様の部屋に魔法で通り抜けていくことはできない。生身の体では扉を通り抜けることはできない。つまり、今ジジ様に会うことはできないということだ。

「当然だな・・・」

 当然。

 こうなることは分かっていたはずだ。あのような少ない情報では国民が困惑するのも当然だ。

 しかし一気に情報を開示しても国民は混乱するだろう。情報を小出しにするつもりなのだ。そうやって国民の混乱を防ごうとしてもなお、この様子。

 魔力というものがどういうものかは分からないが、この国にとってどれほど大事なものかはこの様子を見ていれば一発で分かる。

 まぁ、そして、俺の隣にいるアンジェ。

「・・・・・」

 顔面蒼白。

 先ほどから一言も話さない。というかなんで俺がここに連れてこられているのかが分からない。俺がいると使える魔法も限られるはずだし、いち早くここに来るには1人で来た方がいいと思ったんだが。

 気付けば、俺も箒の先にぶらさげられ、ここに運ばれていた。

 先ほどここに来る途中でロメリアに会ったが、その時アンジェをとても心配しているように見えた。やはり今回の騒動とアンジェは何か関係があるのだろうか。

「せっかく・・・・認められたのに・・・」

「アンジェ・・・?」

 ぶつぶつと呟いている。何を言っているのかは聞き取れない。

 そして俺が訪ねてもアンジェは聞いていない。

「お前・・・」

「・・・・・・・・っ」

 アンジェは呟き終えると走ってどこかへと行ってしまった。って・・・。

「お前俺はどうするんだよ!」

 一度来たことあるから分かるが、ここアルデラード宮殿の内部は迷路のようになっている。魔法エレベーターやら色々な乗り物を使ってここに来なければならない。

 もちろん瞬間移動的な魔法があれば一発でここに来れるし、浮く魔法があるだけでも大分違う。さらに言えばテレポート装置も近くにあるのでそれで来ればもっと楽なのだろう。

 ただ、俺はそのどちらも使えない。

 だから歩いて外に出るしかないのだが・・・それってどのぐらい時間かかるんだ?しかも道も覚えていないし、これもしかして迷子なのでは・・・?

「最悪だ・・・」

 周りを見ても知り合いはいそうにない。いたとしてもこの混乱だ。俺を助けてくれるとは限らない。なんで俺みんなと全然違うところで恐怖しているのだろう・・・。

 しょうがない、1人でなんとかするか・・・今までのように。いつものように。

 そう考えて歩き出そうと足を踏み入れるとまわりが知らない世界へと変わっていた。

「あ、あれ・・・」

 いや、厳密に言うと知らない世界ではない。

 知っている部屋、だ。いきなりのことで驚いたが知っている。ここはジジ様のいたあの大部屋。しかしあの部屋は現在扉で閉ざされていて、そして扉の前にはこの混乱の内容を知ろうとする人々であふれていたはずなのだが。

 俺は知らない間にその扉の中へと入っていたらしい。

「・・・・・」

 そんなことは普通ありえない。ありえない場合この国でよく絡んでくるのは・・・魔法。

 すなわち魔法で俺はここに移動させられたのだ。

 ということは・・・。

「ジジ様・・・・・」

「やぁ、モモ。久しぶりだね」

 にっこり笑顔のおじいさんがそこにいた。長い白いひげはさすがの貫禄。三角帽子も異様に似合っている。長いローブもまたその貫禄を出すものの1つとなっている。

「なんで俺をここに・・・?」

「む?なんだ、てっきり帰るものかと思っていたのだが」

「帰る・・・?ああ!もしかしてもう準備が?」

「うむ」

 ジジ様は大きくうなずく。

 そう、俺がここ来てから1カ月が経とうとしている。あと1週間ぐらいかかるのかと思っていたが、もう帰る準備ができていたらしい。

「でも確か魔力はもうないはずじゃ・・・」

「ふむ・・・確かに魔力はない。ここ1、2年は我慢しなければならないだろう。しかしモモのために溜めた分も魔力はもちろん残っている」

「・・・・・それってもしかして・・・」

「ははは。気に病んでいるのかい。もしかして魔力がない中、無理してモモの移動ワープ分を溜めたのではないか、と」

「い、いや・・・」

「もし、そうだとしてもモモには帰る権利がある。ここへモモを連れてきてしまったのは私たちの責任だ。被害者であるモモを元の世界に帰さず、のうのうと1、2年過ごすことなどもってのほかだ」

「・・・・・・」

「君はこういうことを気にしない人間だと思ったのだが」

「そうです。俺は自分のことが一番大事ですから。それにそう思えることを悪いとも思っていない。そう思える自分のことが誇れるそんな人間です」

 だから遠慮するなんて選択肢はない。

 それに俺は被害者なのだ。ここで帰るべき。しかし思い出してしまった。本来ワープ魔法を使うには1、2年使って魔力を溜めるしかない。すなわち1、2年分の魔力がワープ魔法には必要ということだ。だからもし、ここで俺が帰ることを選択しないのならば、この国の人たちは魔法を使って今と変わらない生活を少なくとも1、2年は保障されるわけである。

 その間に新しい魔力発生源を探してしまえばよい。

 今はその猶予さえないのだから俺がその魔力を使わないだけで大きく変わるはずだ。

 でも、

「俺は・・・・・」

 俺はどうすればいい。

「迷うことはない、モモ。君にはもともと関係のない問題だ。もし、君がこの世界に来なくて、普通にワープが相手側の国に繋がっていたとしてもこうなっていたのだ。たまたま君が来たというだけで」

「でも・・・・・アンジェが・・・アンジェの様子がおかしいんです」

「・・・・・君が知ることではない。これ以上何も知る必要はない。明日、君のワープを行う。それまでに準備しておきなさい」

 知っている。俺はその理由を知ってしまっている。

 アンジェは恐れているのだ。自分の両親が一生懸命研究した魔法をこのままでは否定されるのではないか、と。自分の両親が研究した魔法がこのまま廃れていくのではないか、と。

 少なからず、ひねくれたやつ、俺みたいなやつは魔法批判をするだろう。魔力が足りないせいで魔法が使えないという事実から目を逸らし、魔法はやはり不完全だったと批判するだろう。

 さらにその魔力と敵対するような企業はここぞとばかりに進出するに違いない。ここぞとばかりに魔力の悪いところを上げ、それがたとえ過剰な表現だったとしても躊躇せずに公に晒すのだろう。

 アンジェは恐れている。

 自分の両親が批判の的とすることを。

 俺はその場から動けない。どうすればいいのか分からない。

 いや、迷うことはないはずだ。俺は関係ない。

 でも。

「・・・・・」

「・・・・・・少しモモのことを誤解していたのかもしれんな。1人で生きれて、1人で悩む。けれど結果は先に進むということで落ち着く強いものだと思っていた」

 そうだ。その通りだ。

 今までもそうしたきたし、今後もそうするつもりだ。

「しかし違ったみたいだ。モモ、君は他の人間と同じ、他人を気にして生きていく弱い生き物なのだよ。他人を気にしないように努力する、ということは他人を気にしているのと同じことなのだからな」

「・・・・・」

 ジジ様は黙って俺を見ている。俺は下を向くことしかできなかった。

「帰りは私の魔法で家まで送ろう、それでいいかな」

「・・・はい。でもその前に今回のこの事件について詳しく教えてください」

 ふむ、そう言うとジジ様は静かに上を見た。

「まず、今回の騒動は魔力発掘場所の数が極端に減ったことによって起きた。本来なら1つの場所で1年ぐらいもつものがほとんど。しかしたまたま運の悪いことにそれが1カ月程度しか続かなかった」

 だから慢心していたのだ、という。

 まだ新たな発掘場所を探さなくてもいいだろう、と考えていたらしい。俺からしてみれば本当にどうしようもない慢心だと思う。

 俺にそう思える権利がなくとも、そう思ってしまう。

「しかしその採掘場所の魔力が完全になくなる前に君のワープ分は確保していた。しかし、これから先、1、2年分の魔力は新たな採掘場所を探さなければいけない。それに今年は魔力研究が多くてな。発展のためには必要なことだったが、魔力を使いすぎた」

 ・・・それか。

 それがアンジェが気に病んでいる一番の原因か。

「新しい採掘場所を探すにはどのくらいの時間が・・・?」

「数か月、必要だと思われる」

 数か月・・・。

「そして色々な手続きがあってな。魔力を欲する国は他にもある。そこと契約を結び、この採掘場所は自分の国のものだとして、実際国民に支給できるまで、数か月。合わせるとやはり1、2年は魔力の使えない生活が続くこととなるだろう」

 ・・・。

 もし、はやめに発掘場所が探せたとしても短縮できて、1、2か月・・・。国民を納得させることはかなり難しいだろう。

「魔力が使えないだけならば、まだ平気な方だ。確かに魔力はこの国に強く根付いておる。しかし、それだけではない。一番の危険は魔力関連会社の終わり、だ」

「魔力関連会社・・・?」

「うむ。魔力は様々な人間が関わり、こうして支給されている。魔力を輸送する会社、魔力を均等に分ける会社、などなどな。そこの人間の収入が0になってしまうのだ。下手をすると倒産、リストラなどが多く起こってしまう」

「・・・・・」

 まわりの企業も・・・。

 これでは・・・アンジェがまた責任を負ってしまう。自分の両親が研究していることで多くの人間に迷惑をかけてしまうと、そう思ってしまう。

「ロメリアは平気そうだったか」

「え・・・」

 俺はなんでそこでロメリアが出てくるのか分からなかった。しかしジジ様は失敗した、というような顔をすると、「忘れなさい」と呟いた。

「ど、どういうことですか!ジジ様・・・ロメリア・・・になんの関係が・・・」

 ジジ様はやれやれと言ったように、頭をかく。

「ロメリアの両親は、主に父親の方が魔力輸送会社なのだよ。有名なね」

「な・・・」

 あいつはそんなこと一言も・・・!

 それどころかアンジェを心配するような感じだけを俺に見せて・・・あいつ自身はまるで普通かのように振る舞っていた。

 一番ピンチなのは・・・ロメリアじゃないか。

 違う。アンジェは両親への批判も確かに心配のうちだった・・・でもそんな世間の一感想、一批判よりもロメリアのことが・・・ロメリアに迷惑をかけてしまったのが・・・許せなかったんだ。

「分かりやすい・・・」

 分かりやす過ぎる。結局は友達だ。俺に一番足りなかった人付き合いがまたここで足を引っ張っている。それであいつはあんなに苦しんでいるのだから・・・。

「それは君も同じじゃないかな」

 ジジ様は俺を見る。

「君も今、その人付き合いが足を引っ張っているのではないかな。もしここに来て誰とも関わらなければこんなに迷うことはなかったはずだ」

「・・・・・」

「明日来なさい。そこで君のワープを行う。いいね?」

 そう言うとジジ様は杖を軽く振った。

 気付けば、自分の家。すでに一か月は過ごしたであろう広い広い住み慣れたこの家。あの宮殿からはかなりの距離があるのだがそれを一瞬ですませてしまうあたりジジ様はやはりかなりの魔法使いなのだろう。

 俺は無言で荷物をまとめ始める。

「・・・・・」

 確かに俺は人を頼ることが苦手で、人と関わることが嫌いだった。それはここでも同じだ。今でもあいつらと会うとめんどくさい、とさえ思う。

 だが、人に嫌われることと、頼られることには慣れている。慣れていても辛いものはあるけれど、それでも慣れていないやつよりは平気なつもりだ。

 だったら・・・適材適所。

 俺はある決意をし、荷物をまとめることを放棄し、再び家を出るのであった。

今、シリアスというか少し真面目なシーンが多めとなっております。そんな話も恐らく次回でおしまい。

そこからどうなるのか、はたまた連載が終わるのか、ぜひ読んでいただけたらな、と思います。

次の話は恐らく、物語の中でもターニングポイントというか、そういう感じになると思います。


ではまた次回。

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