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魔法の国でひたすら日本生活。  作者: 花澤文化
魔法の国で日本らしい生活をする。
14/24

第12日 魔法の国でパレードを見る。

「なんでここにいるんだ?」

 とは大学入学式の時の御堂のセリフである。前から仲のよかった御堂は俺が順位的に高い位置にいることを知っていた。いや、謙遜はしない。俺は一番だった。高校の時もどの教科でも1位をとっていたのだ。だからこそ言ったら悪いが微妙な大学へ進学してきたことが不思議だったのだろう。

 でも誰よりも驚いたのは俺である。

 今考えれば俺は迷っていたのだろう。自分の考え方が正しいのかどうか。しかしその事実に気付きたくなくて、まわりや親の期待に応えることも嫌になって、反抗心が働いた。

 本当難しいようで単純な理由だった。

 今現時点でも俺はどうすればいいのか分からない。まさか大学をやめてもう一度受験する・・・というのは考えたけれどどうせどこの大学に行っても今の状態じゃ変わらない。

 だからといって今のままふらふらととりあえず一番を目指して頑張っていてもいいのだろうか。一番を目指すことは悪くないな。とりあえずは今の大学で一番をキープしなければ。

 何を弱気になっている。俺のアイデンティティ。今の大学が全国で一位というわけではないので厳密には一番ではないかもしれないが、他の大学と競える場所・・・資格とかそういうのか。そこで俺は見せてやればいいのだ圧倒的な差を。

 そう・・・なぜならば。

「俺は天才だから!」

 大きく叫ぶ。ここが自分の家でよかったと心底思った。

「何を大きく叫んでいるんですか。というか少しは謙遜とかそういうのはないんですか?」

 が、しかし俺の家にはいつもの子供数名とアンジェが来ていたのだった。

「俺は謙遜しない。俺の努力で身についた才能だからな」

 ふふんと笑うも、、アンジェはけっ、と嫌そうな顔をして宿題を始めた。

 夏休みも最初の週が終わろうとしている。こちらの世界では学校に通っていないため夏休みそのものがないわけだが、この子供連中は違う。

「というかお前ら、最近当然かの如く俺の家にいるが、外で遊べ。というか色々めんどくさいからすごい頻度でくるな」

 毎日毎日休みだからか知らないが、こいつらは暇さえあれば俺の家に来る。厳密には毎日。

「お兄ちゃんちが一番広いんだもん」

「テレビもでかいしー」

 なんという現代っ子。まさに俺もその道を通っていたわけではあるのだが、親が厳しかったため、あまり堂々とテレビを見たり、ゲームをしたりはできなかった。

 それがどうだ。今では俺がこいつらを怠けさせるいい場所を提供しているではないか。

「よし、お前ら、俺が地球の遊びを・・・」

 と言いかけたところで、何やら外が騒がしい、とアンジェが呟いたのだった。この家は防音であり、よほど大きな音ではない限り聞こえないはずなのだが・・・耳をすますと確かに騒ぎ声のようなものが。

 外からだ。

「なんだ・・・防音じゃないのかよ、この家」

「残念ながら防音といっても魔法ではないのでたかが知れてます。それに外がうるさすぎるのです。恐らく、パレードではないかと」

「パレード・・・?」

 それはあの遊園地とかで乗り物に乗りながら踊ったり、着ぐるみを着て、その乗り物に立ったりするあれなのか。俺はそんなところに行った覚えがまるでないので想像だ。

 小学生ぐらいから俺の負けず嫌いは始まっていたので、遊んでいる暇なんてなかったのだ。

「いいなあ、遊園地・・・」

「子供みたいなファンシーな夢を見ていないで外を見たらどうですか?きっとモモさんが想像しているものとは大きく違うと思います」

 というアンジェの言葉により俺はダッシュで窓から外を見る。

「はや・・・子供ですか・・・」

 というような声は全部無視して、外を見るとそこには・・・。

「大名行列・・・?」

 人の大群がそこにはいた。しかもその大群は一列になっていて、学校で昔習った大名行列に他ならない。着ている服はローブのような感じで魔法使いっぽさを出してはいるが、大昔にタイムスリップしたような気がする。

「えぇ、似たようなものです。お偉いさんの大名行列」

「お偉いさん・・・?」

 夏休みですからねぇ・・・とどこか遠くを見る仕草をした後、

「この国、ユラドラは広いです。それこそ、ジジ様だけではとても1つにはできないぐらいに。そこでユラドラをいくつかの地域に分けたのです」

「世界で言う、国。日本でいう、都道府県ということか」

「『とどうふけん』というのはよく分かりませんが、国、みたいなものですね。そしてジジ様はそれぞれの地域に自分の部下を送り込んだのです。それがあの行列の中心人物。ここらへんの地域を統率する魔法使いです」

 知事みたいなものか・・・と俺は1人納得する。しかしまるで祭だ、厳粛な感じはまるでせず、盛り上がっているような感じもする。

 ふと外をもう一度見ると家の外にはたくさんの人がいて、その行列を見て騒いでいるのだった。

「おい、あれいいのかよ。なんか反逆罪だーとかにはならないわけ?」

「そもそも監視とかそういうことをするためにいるわけではないですから。ゆるーい感じなんですよ」

 とは言うものの、お偉いさんだとかって言われると緊張する。ほんと逆らったら処罰、とかにならないよな、そもそも逆らう気もないのだけど。

「あ、あと行列のときは家から外に出て、姿を見せることが礼儀となっています」

「おい!それをはやく言えよ!」

 俺は慌てて服を準備し、なるべく正装っぽい服に着替える。靴を履き、思いっきり走って玄関から外へと繰り出した。

 わああああああああああ!

 と、楽しそうな人々の騒ぎ声。大きく手を振るものもいれば、なにやら紙吹雪を飛ばしているものもいる。今日は無風のようなものだし、恐らく、魔法。

「有名人みたいなものなんですよ。大きく手を振るのは自分を見てほしいから、魔法を使うのはここまで上達したと魔法を見せるためです。有名人にサインもらうようなものですから」

「サインか・・・」

「色紙もってくればよかったですね」

 と馬鹿にしたような笑みでこちらを見るアンジェ。なぜか思考がだだ漏れだったらしい。行列はゆっくり進み、その中心人物がいるひと際大きな場所が俺の家の前を通るまで少し時間がある。

 俺は走って家の中にペンと紙をとりにいく。

「まぁ、そもそもサインというのは例え話で本当にサインしてもらうなんていうのはどんな田舎者でもしませんけどね、っていない!?」

 ペンと紙を持って外に出るとアンジェは驚いた顔をしていた。それに構わず、そのままお偉いさんの方を見ると・・・。

 魔法の風が吹きぬけた。

 その結果、中心人物を覆っていた傘や、カーテン部分が揺れ、人の顔が見える。とても美しい人だった。見ているだけで罰を与えられそうな、お金もとれるのではないかというほど綺麗。

 綺麗過ぎて人間ではないのではないか、と思ってしまうほどに。

 動いていた足が止まる。

「わー!ロードだー!」

「わー!」

 その俺の横を俺の家にいた子供が走り抜けていく。ロード・・・?

「アールシュライン・ロードアウト。それが彼女の名前です」

「長い名前・・・というかあいつら!極刑になるぞ!」

「いや、いつの時代ですか・・・」

 というか、とアンジェは前置きをして。

「あの人もジジ様の部下です。外見的にはこの世のものとは思えないほど綺麗ですが、地位的にはあなたが普通に話しているジジ様より下なんですよ」

「それはお前が案外気楽に話していたからそういうものなのかと・・・」

「私にとっては家みたいなものですし」

 とあっさり何食わぬ顔で答えるのだった。

 何も考えてなんかいなかったのだが、そう考えると俺はジジ様に数々の無礼をしてきたのではないだろうか。今更ながら恐ろしくなる。

 あの優しそうな顔を見るとなぜか和んでしまうのだ。

 しかし目の前のやつは違う。あいつは和むような外見の持ち主なんかではなかった。

 ってあいつってのも失礼か。

「それもまたしょうがないことかと。和む、というのは親しみのわく、見慣れたようなことであり、彼女の顔はとても見慣れたそれではないのですから。彼女はハーフなんです」

「ハーフ?ハーフっていうとナルミルみたいな感じか?」

 確かあいつも人魚とのハーフであんな馬鹿力を出せるらしいが・・・今考えてみると人魚って綺麗なイメージでとても力が強いイメージではないのだが。

「人間ではありませんからね。力は低いといっても人間外の範囲の話で人間からしてみればそれはもう馬鹿力のように思えるのですよ」

「でもあいつドラゴンとか倒してるんだろ」

「それはまあ、単純な力だけではありませんから」

 アンジェは俺の目の前で軽く杖を振る。

 そうか、そういえばこいつらには魔法があるのだった。最低限の力に魔法を加えて倒している、というわけか。考えれば考えるほどすごいな。

「彼女、ロードも人魚とのハーフなのです。ただ、ナルミルさんとは違って力の部分はまるで受け継いでいなくて、人間離れした綺麗な姿を受け継いだ、ということですよ」

「・・・・・というかさっきから気になっていたんだが、そのロードさんとやらはお偉いさんなんだろ。なのに、なんというか、みんな家族を受け入れるみたいに馴れ馴れしいというか。現にお前もロードって呼び捨てにしているし」

 さっきの子供たちが呼び捨てにしていたのはそういう上下関係を理解していないからだと勝手に思っていたのだったが、さすがにアンジェがそれを知らないはずがない。

「まぁ、見ていてください」

 アンジェの視線の先には先ほどの子供たち。

 ロードさんが座っている人力車のようなものに近づいている。わーわーきゃーきゃー話す姿はまるで友達と会話しているようで、とてもお偉いさんと話しているとは思えないものだった。

 ロードさんもそれを見て口元を緩ませる。そして、子供たちの方を向いて、

「ロードも遊ぶ!遊びたい!」

 と叫んだのだった。

「・・・・・・・」

「彼女、あんな外見ですけれど、まだ子供なんですよ。10歳もいっていなかったような気がしますよ」

 いや、明らかに大人びているというか、気持ちの問題じゃなくて外見的にも。

 というか、あの子供たち俺の方を指さしてないか。なんか凄まじく面倒なことになりそうな予感。

 するとロードは俺の方を見て大きく手を振った。

「あれはどういうことだ」

「友好の証じゃないですか。明日からお世話になるっていう」

「・・・・・・」

 俺はただ、俺の家に入り浸る人間がこれ以上増えませんように、と祈ることしかできなかった。





「ふむ、ということは君も異世界から来た、というわけかな」

「・・・・・」

 宮殿、ジジ様の部屋にて。

「なんというか今年はそういう日なのかの。しかししょうがあるまい。安心しなさい、君の前にも異世界から来た人間がいるのだ。魔力が溜まればすぐにでも帰れる。できれば落ち着いて、過ごしてほしい」


大分間隔があいてしまいました。次こそははやめに投稿したいと思います。

同時に並行して書いていたものがもう少しで終わりそうなので恐らく大丈夫かと。


毎回のことですが、見てくださったみなさんありがとうございます。


ではまた次回。

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