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三、奈良の最初の旅 その2

秋篠寺から西大寺駅まで歩くことにした。

沙希は黙ったままであったので、

私は昨日の夜のことを考えていた。


ドアを開けると彼女がもたれるようにしてきたこと。

そしてそのあとの体での会話となったこと。

真夜中になり、二人ともなにも身につけないままに、

まどろんでいると彼女が体を重ねてきたこと。

その後浴衣を着て眠り込んだが

明け方になり彼女が求めてきたこと。

そして気がついたとき、

彼女は自分の部屋に戻っていた。

それから朝食後二人でホテルを出てきたのであった。


平城駅に着いて近鉄線で西の京に向かった。

駅を降りるとすぐに薬師寺の山門に着く。


私はここの東院堂の聖観音菩薩像が好きである。

観音様は数あるけれど、

ここの観音様は正統の観音様という気がしてくる。

観音は人々の求めに応じて姿形を変えるという。

私の隣にいる彼女ももしかしたら観音様の化身かもしれない。

そんなことを彼女に囁いたら

かすかに体をぶつけてきたので、

肩に手を回したがすぐ外した。

ここは神聖なお寺であるのだ。


そのあと薬師三尊像を拝観してから

唐招提寺まで歩く。

沙希は少し歩くのが遅れがちになり黙っている。


唐招提寺は仏像もいいけれど

なんといっても金堂が素晴らしい。

まさに天平の甍である。

エンタシスの丸柱の脇に彼女を立たせて

しばし眺めていると時間を忘れるような気がした。

いつまでもそこに居たかったが、

彼女は帰りの新幹線の時刻を気にし始めていた。


一緒に帰るのは危険であるので、

別々に帰るとして

私はもう1泊することしていた。

あたりが小暗くなってきたので

早めの夕食を柿の葉寿司の店で取ることにした。

部屋に通されて酒を飲み始めてふと見ると、

彼女の顔に疲れが浮かんでいた。

そのことを言うと

「あなたこそ昨夜はお疲れの様子だったが

私は眠れなくて一人取り残されたのです。

奈良の夜はずっと起きていようと

貴方は言っていたのに・・・」

と詰ってきたのであった。


別れの時間が迫ってきた。

今度いつ会えますか

と彼女は聞いた。

私は帰ってから連絡するというと

いつも私が連絡しないと何も言ってくれないくせにと

また私をなじる。

私は別れ際のやり取りが苦手だった。

それで適当に2週間後の日を約束して、

駅まで彼女を見送った。

これが彼女との最初の奈良の旅であった。


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