表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/35

変わらぬ世界

第十九章


長すぎた時間


誰も、すぐには喋れなかった。



空中庭園。


夜風。


遠くの修復光。



世界は、

いつも通り動いている。



なのに。



空気だけが、

決定的に変わってしまっていた。



文明をやり直す。



世界を再演算する。



観測者。



そして。



繰り返される世界。



レンカは、

頭が追いつかなかった。



理解不能。



だが。



本能だけが、

叫んでいる。



“聞いてはいけない話だ”



グラウスが、

低く口を開く。



「……つまり何だ」



炎帝の声は、

わずかに掠れていた。



「世界は、

何度も滅んでいると?」



ヤクモは答えない。



酒瓶を揺らす。



中身は、

もうほとんど空だった。



ミカエルが静かに聞く。



「あなたは、

何を知っているのです」



ヤクモは、

少し困ったように笑う。



「知ってるっていうかねぇ」



その笑みが、

妙に弱かった。



「長く見すぎただけだよ」



レンカの背筋へ、

寒気が走る。



まただ。



この男。



時々。



“人間の時間感覚”で喋らない。



アステリアが、

ゆっくり顔を上げた。



未来視暴走のせいで、

瞳が赤く充血している。



「……ゼロは」



彼女の声が震える。



「何なんですか」



沈黙。



ヤクモは、

空を見る。



星。



無数の光。



遠い月。



そして。



ほんの少しだけ、

目を細めた。



「さぁ」



小さく笑う。



「本人に聞けば?」



グラウスが怒鳴る。



「ふざけるな!!」



熱量が爆発。



周囲温度急上昇。



修復術師達が、

遠方で悲鳴を上げる。



だが。



ヤクモは、

微動だにしない。



炎帝が睨む。



「貴様は、

恐怖がないのか」



数秒。



沈黙。



その質問だけ。



妙に重かった。



ヤクモは、

少しだけ考える。



そして。



「あるよ」



静かな声。



全員が固まる。



初めてだった。



ヤクモが、

ゼロを恐れていると認めた。



レンカが息を呑む。



だが。



ヤクモは続ける。



「でもねぇ」



酒瓶を空へ向ける。



「怖いっていうより、

もう見てられないんだよ」



その言葉だけ。



妙に、

悲しかった。



アステリアが、

震える声で聞く。



「……何を」



ヤクモは答えない。



いや。



答えられなかった。



長い沈黙。



風だけが吹く。



やがて。



「昔さ」



ヤクモが、

ぽつりと呟く。



「ゼロって、

もっと人間っぽかったんだよ」



空気が止まる。



レンカが、

目を見開く。



グラウスも。


ミカエルも。


アステリアも。



全員、

言葉を失った。



ゼロ。



終焉の覇者。



世界法則すら歪める存在。



あれが。



“人間っぽかった”?



ヤクモは、

遠くを見る。



昔を見ていた。



「笑ったり」



「怒ったり」



「馬鹿やったり」



「まぁ、

普通に生きてた」



その声は、

あまりにも自然だった。



まるで。



本当に、

昔の友人を語るみたいに。



レンカが震える。



この男。



本当に。



“ゼロと同じ時代”を知っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ