表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/35

白銀の巨人

第十六章


再演算


空が、止まっていた。



裂け目。


白銀の巨人。


世界を押し潰していた重圧。



その全部が、

静止している。



ゼロの一言で。



誰も動けなかった。



グラウスですら、

息を呑んでいる。



炎帝は理解していた。



今までのゼロは、

まだ“人類側の延長”だった。



強い。


異常。


法則外。



だが。



まだ“存在”として理解できた。



しかし今。



違う。



世界そのものが、


ゼロへ従っている。



命令ではない。


支配でもない。



もっと自然。



まるで。



「それが当然」



みたいに。



白銀巨人の“黒い穴”が、

ゆっくりゼロへ向く。



顔はない。



なのに。



全員が感じた。



見られている。



レンカの全身へ、

鳥肌が走る。



その瞬間。



再び“声”が響く。



『――観測対象確認――』



『――管理権限照合――』



『――識別コード――』



言葉。



今度は、

少しだけ意味が分かる。



だが。



それが逆に恐ろしかった。



管理。


権限。


コード。



まるで。



世界そのものが、


人工物みたいな言葉。



アステリアが震える。



未来視が、

断片だけ映していた。



巨大構造物。


終わった文明。


光の海。


無数の黒い空。



そして。



空へ浮かぶ、

“別の世界”。



アステリアは、

吐き気を覚えた。



これは。



見てはいけない。



その時。



ゼロが、

白銀巨人へ歩き出した。



空中を。



足場もない。



なのに。



彼が進むたび、

裂けた空間が安定していく。



空間断裂が、

修復されている。



ミカエルが、

小さく呟く。



「閉じている……?」



レンカが振り返る。



「え?」



ミカエルの顔は、

青ざめていた。



「彼が歩いた場所だけ、

世界が正常化している」



つまり。



世界崩壊現象より。



ゼロの存在の方が、

優先度が高い。



その異常さへ、

全員が気づき始めていた。



白銀巨人が、

ゆっくり腕を動かす。



空間が軋む。



その動きだけで、

アーカディア全域へ衝撃波。



超高層塔群が揺れる。


雲海が吹き飛ぶ。



レンカが叫ぶ。



「っ……!!」



だが。



ゼロが、

右手を上げた。



それだけ。



その瞬間。



白銀巨人の動きが、

完全停止する。



凍結。



時間停止ではない。



もっと根本的。



“動作権限そのものが奪われた”



ような静止。



そして。



ゼロが、

初めて感情らしいものを見せた。



ほんの僅か。



面倒そうに。



「帰れ」



小さな声。



だが。



その瞬間。



白銀巨人の身体へ、

無数の亀裂が走った。



空間ごと砕ける。



裂け目が崩壊。



世界の傷が、

閉じ始める。



『――警告――』



『――再演算不能――』



『――管理権限衝突――』



巨人の声が、

初めて乱れた。



ノイズ。



悲鳴にも似た、

電子的破裂音。



そして。



白銀巨人が、

消えた。



存在ごと。



裂けた空も、

閉じる。



青空が戻る。



風。


雲。


光。



全部。



何事もなかったように。



アーカディアへ、

日常が戻る。



だが。



誰一人、

安心していなかった。



なぜなら。



今。



全員、

理解してしまったから。



ゼロは。



“終焉”じゃない。



もっと別の。



“世界側の存在”だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ