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23 修理工と魔”砲”銃

トレジャーハンター組合に顔を出すと、ホリィさんからメモを渡された。

メモに従って、枝道へと入っていく。

そして、メモに書かれたとおりの看板を見つける。


『ジャードの修理店リペア


修理店はドワーフ社会にあって、異質の店だ。

その主な仕事内容は稼動機の修理である。現代においても稼動機の需要は高い。絶対の忠誠心を持つ不眠不休の番人。

しかし、再現不可能な技術で作られた稼動機の修理には、特殊な能力が必要である。それは、技術的な問題だけではない。

稼動機のパーツを調達する才能。すなわちトレジャーハンターとしての才能である。


扉を開けると、四方の壁には大小さまざまな棚が並んでおり、大小さまざまなパーツがおかれている。

…ついでに埃も被っている。商品がそれでいいのか?

ただ、部屋の隅にポーンタイプの稼動機が鎮座している。動くかどうかは分からないが、両腕に搭載された砲塔。一瞬体が硬直するが、動く様子はない。


「おう。客か」


後ろから声をかけられて驚いて振り向く。まあ、店なんだから店員がいるのが当たり前か。

声をかけてきたのは、一人の中年のドワーフだ。黒く長いヒゲにいくつもの編込みがされている。

長年の作業による油や汚れが染み付いた皮製の作業用の前掛けに、同じような厚手の手袋。そこから伸びる腕は、想像以上に太く。大小さまざまな傷跡がある。


「はじめまして。トレジャーハンター組合のホリィさんからの紹介で・・・」

「挨拶するなら、その頭のもを取れ。それが礼儀だ」


言われてあわててバケツヘルメットを脱ぐ。


「で、背中のモンを見せろ」

「え?」

「ホリィ嬢ちゃんの頼みだろ。魔砲銃を見せろよ」


あ、やっぱりそういう事なのね。メモを渡して「ここに行って話を聞きなさい」としか、ホリィさんには聞いていなかったので、何をするのかわからなかったわ。

とりあえず、背負ったズタ袋から魔砲銃を取り出す。黒ヒゲドワーフはそれを受け取ると、中央の作業台において、解体していく。

ジャンク品の寄せ集めでしかない初見の魔砲銃を、オレより速い速度で解体してしまう。

さすがプロだ。


「…これはなんだ?」


黒ヒゲドワーフが、魔動銃の中にあるパーツを指差す。分かるわけがない。オレがこの魔砲銃で分かる事は、この線をマテリアルにつなげると魔砲が撃てるという事だけだ。中のパーツに関しても、基本的に元となったジャンク品に繋がっている物をそのままにしているだけだ。正直何の接続もないようなもの以外は、元のままにしている。

正直に答えよう。


「分かりません」

「何で、ここに組み込んでいる?」

「分からなかったので、そのままにしました」

「コレはいらん。コレもだ」


そういうと、中には言っているパーツをどんどん取り外していく。最終的には、オレの魔砲銃はシンプルな構造しか残らなかった。


「父ちゃん。ご飯…ってお客さん?」


奥から子供のドワーフが出てくる。父親と同じように前掛けに、ポケットには厚手の手袋も見える。そのまま、覗き込むようにオレの魔砲銃を見ると眉間に皺を寄せる。


「なんだこれ?すっげぇボロ」


よく言った。ぶん殴ってやろう。


ボカッ!


オレの拳よりも早く、父親のジャードのゲンコツが脳天落ちた。


「って~…」

「黙ってろ。セッコ。飯は後だ。お前はジーグ呼んで来い」


目の端に涙を浮かべて、セッコと呼ばれたドワーフのガキは奥へと引っ込む。

ケケケ。ざま~みろ。


「で、お前はどういう魔法を撃つつもりだ?」


ジャードの親父が聞いてくるが、オレに特別なビジョンがあるわけでもない。

マテリアルギルドにも、魔砲のアプリを販売しているが、使用の前提条件などの設定がさっぱりわからなくて、後回しになっているのだ。


「いいか、魔砲を使うだけなら、これだけの装置で問題ない。だが、まともに、魔砲を撃つつもりなら、これだけではだめだ」


そう言うと、カギのかかった戸棚から小型のマテリアルを取り出し、ついでに棚からいくつかのパーツを取り出す。

そして、手早くその小型マテリアルにケーブルをつなげて行く。


「光弾を4発撃つアプリだ。射程は短いが威力はある。だが。これを相手に当てるには、最低でもコイツが必要になる。照準装置だ。」


そういうと、棚から取り出したいくつかのパーツを組み込んでいく。


「いいか、魔砲銃で魔砲を打つにはいくつかの追加装置が必要になる。このアプリなら、この照準装置でいいが、より長距離に正確に打つならより良い照準装置がいる」


もちろん、オレのジャンク魔砲銃に余計なパーツを付けるスロットや、ネジなどないのだが、そこは針金や粘土で組み込んでいく。


「他にも、威力を安定させる変換機。追加弾倉。弾道補正をする調整機。次の弾を早く打てる様になる連装機。反動を減らす減少機。光量を抑える補光機。まあ、基本的な追加装置はそんなもんだ」

「ちょっとメモっていいですか?」

「覚えろボケ!」


ガツン。


今度はこっちにゲンコツが落ちてきた。

おかしい、メモを取るのは社会人の基本のはずなのに。ただ、言われたいくつかには心当たりがある。マテリアルギルドのカタログでみた魔砲アプリの前提条件に書いてあったはずだ。そこに、ランクというか数値が書いてあったが、それが各装置の性能なのだろう。


「…で、この色々付いているのは何ですか?」


頭を抑えつつ聞く。

すでにオレの魔法銃はいくつもの装置が付いて、一回り大きくなっている。最初に余計な物を外したはずなのに、それよりも重くなっているようだ。


「お前は何を聞いていたんだ?」

「はい?」

「これが照準だ」

「…え?」


あの、一回り大きくなっているんですが?


「これと、これで弾道補正をして、これがその管理する中枢。で、このケーブルをマテリアルに刺して…ほれ」


差し出された魔砲銃を受け取る。

ズッシリと手ごたえのある重量感。明らかに、持ってきた時より重くなっている。


「照準装置ってこんなに大きい物なんですか?」

「いや、安物だけど、いいものになればもっとデカくなるぞ」


これ以上かよ!?

そうか、だから魔”砲”なんだ。銃じゃないんだよ。大砲なんだ。個人用携帯大砲なんて代物なんだから、でかく重くなるわけだ。


「さっき言っていた、他の装置つけたら、とんでもない重量になりますね」

「だから魔砲のアプリに必要な装置だけを付けるんだよ」


さすが、使い手の少ない魔砲術。汎用性が皆無だな。

大鑑巨砲主義…




「おう。いらっしゃい。何だよ、親父?」


そんな、”無敵艦隊”とつくようなフラグを感じていると、店の奥からあくびと共に、一人のドワーフがやってくる。黒いひげで、技師のドワーフと似た顔立ちで親子なのだろう。ヒゲの長さが短い上に寝癖だらけ。服もしわくちゃだ。本当に起き抜けなのだろう。


「もう昼だぞ。ジーグ」

「一昨日まで仕事だったんだぞ。昨日だって査定を終えて…」

「はん。目的の物を見つけられないで、仕事したつもりでいるなんて笑わすな」

「遺跡の中で、そう簡単に見つけられるかよ」

「それが出来ないから半人前なんだ」

「へいへい。分かりましたよ。で、その半人前に何の用事だよ?」

「客だ。お前のな」


そういわれて、若いドワーフがこちらを向く。上から下まで見て、オレの腰に


「ああ、お前が“バケツ頭”か」


そして、うれしそうに笑う。

おい、ちょっと待て。なんだよその名前。

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