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24 先輩と分け前

「乾杯!」


酒場で杯をぶつけ合う。

カザル=ボーダーの酒場の一つだ。こっちは三人。向こうは二人。

先輩トレジャーハンターであるジーグと、その相棒であるハガロス。黒毛で顔に大きな向こう傷がある大柄のドワーフである。

カップを飲み干してカビ酒の泡のついたひげを袖で拭いながら、上機嫌でジーグは口を開く。


「いや、オレはお前が【銀階級】になると確信していたよ」

「嘘つけ、賭けの時に不満たらたらだったじゃないか」

「それは違う。ああやって、不服そうにする事で、賭ける奴の気勢を削ぐ、オレの緻密な作戦ってやつだ」

「はいはい。緻密緻密。シーダ。お代わりだ」


そんなジーグに、ツッコミながらハガロスが横を通る給仕の女ドワーフにお代わりを注文する。

話を聞いて分かったのだが【鉄屑拾い】時代のオレが【銀階級】に昇格できるか賭けが行われていたらしい。そして、大穴ともいえる昇格に、このジーグは賭け、そして当たったというわけだ。

金貨数枚の配当を渡されれれば、そりゃご機嫌になるという話である。

ちなみに、その当時からのオレのあだ名が”バケツ頭”だそうだ。

そりゃあ、今だにバケツのヘルメットをかぶっているが、ひどい話である。


「シーダちゃん。こんな仏頂面やめて、オレと結婚しない?」

「おあいにく様。ハガロス。はい、お代わり。このお皿下げちゃうね」


そういうと、給仕は汚れた皿を下げて奥へと引っ込む。その給仕の髪には銀色の飾り玉が結われている。同じ装飾の飾り玉がハガロスのヒゲにもついている。

何てことはない、二人は婚約中というドワーフ社会の習わしの一つだ。

つまり通報事案発生である。


こちらの通報案件であるガラハドとドリスは少し肩身が狭そうだ。

まあ、今までの奴隷階級では入ることができない”普通の”酒場だ。酒場デビューともいえる。周りはそんなこと気にしていないし、何を隠そうオレも普通の酒場デビューだったのだが、とりあえず話を合わせる事にしよう。





まあ、要するにオレ達は次の探索で、ジーグたちと一緒に遺跡に潜ることになった。

なぜか決定事項である。まあ、逆らう気もないが。

何せ、ホリィさんからの三回も念押しされての紹介だ。断ったら後が怖い。


「オレ達の目的は遺跡の探索だが、それだけじゃない。探索はするが、目的の遺物を探すのも重要だ」

「目的の遺物?」

「カザル=ボーダーには、稼働機やジェネレーターを欲しいという奴は大勢いる。だが、目的の物がいつもあるわけじゃない。特定のジェネレーター、特定の稼働機。それ等のパーツ。そういった物を個人的に提供するわけだ」


カザル=ボーダーにも稼働機やジェネレーター、それに人造人間ヒューリーは数多くいる。しかし、そのすべてが純正品というわけではない。様々なパーツを組み合わせたジャンク品。何とか動くだけという代物が主流だ。

一般人なら、それでも十分だろう。だが、上流階級にしてみれば、ツギハギの道具を使うのは、外聞が悪い。ましてや、技術第一主義の職人バカでしかないドワーフにしてみれば、なおさらだ。


「こいつは、なかなかバカにできないのさ。そういった依頼を出すのは、町でもお偉いさんだ。ギルドの幹部。氏族。彼らに信頼されることは、そのまま認められることになる」

「偉いって、今回の依頼人はお前の親父じゃねぇか。それも稼働機のパーツだ。大した金にはならん」

「うるへ~。ウチの親父だって、偉い方なんだよ」


ハガロスのツッコミに、悪態で返すジーグ。


「でだ、目的のもののアタリはついた。だが、そこが結構厄介な場所でな。こっちが目的にものを確保するまで、敵を抑える必要があるんだ」

「囮か?」

「ハガロスも一緒だ。捨て駒にするって話じゃない。そんなことしたらホリィちゃんにバラバラにされちまう」

「出入り口が二つあるのさ。オレ一人では抑えられん」


警戒するオレに、ジーグがおどけて答え、ハガロスがフォローを入れる。


「場所が場所でな、ゆっくり物色もできないような場所だ。とはいえ、手に入る品はピッカピカの完品だ。ジャンク品なんて目じゃない額で売れる」


そういうと、やってきたお代わりのカップをオレ達の方に押しやる。

ちなみに、酒場での支払いは向うのおごりだ。


「でだ、お前たちも気になっているわけ前の話だ。目的の品以外の取り分はオレのチームとお前たちのチームで均等に分配する」

「いいのか?」


条件としては破格だ。こっちは素人に毛の生えた新人。向こうは階級は同じでも、曲がりなりにも本職の集団だが、それゆえに裏を穿ってしまう。


「トレジャーハンターの長い歴史の中で確立した、一番もめない分配方法なんだ。お互いの人数が何人でも関係なしだ。ただし、目的の品の報酬はコッチの総取りだ」


後でホリィさんに確認しよう。そうでなくても、本職のトレジャーハンターの仕事を学べる機会だ。


同意を告げるように、差し出すカップに自分のカップをぶつけると、中身を飲み干した。


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