番外編 ある薬師の日記にて
えー、すみません。
しばらくお休みしてしまったので、番外編投入しました!
勢いで書きました!
ゴメンナサイ
○月×日
城に招かれたという街薬師が医療塔に来た。
黒髪黒目の女の子だ。
正直、なぜ招かれたのか理解できない。
レイランド殿下の恩人だという彼女。でも、そんな才女には見えない。
そりゃまあ、癒し系かもしれないけど。
特に美人でもないし、まあ、可愛いかもしれないけど。
頭よさそうにも見えない。実際、ぽよよんとしているし。
この国、というかこの大陸では魔法が盛んなため薬に頼る人は少ない。
怪我は癒しの魔法で治る。
薬が必要なのは病だけだ。
だから、薬師という職業になる人はかなり少ない。
だが、少ない代わりに優秀な人が多い。
実際、俺がこの城勤めに合格した時は夢かと思ったくらいだ。
しかし、そのための努力は怠らなかった。
だからこそ、街薬師ごときが殿下を救ったというのが信じられない。
しかも、猛毒で有名な『アバロス』の治療法をしっているのも信じられない。
この俺だって、この城にきて尊敬する薬師長から教わって初めて知ったのに。
しかも、王妃専属だと?
現在王妃様についているのは、第七魔術師団長と薬師長の二人だ。
その二人でさえ、王妃様の体調不良を改善できていないというのに。
ただの街薬師になにができるというんだ。
そう、思っていた。
今日、初めてその女の子を見ても、その考えは変わらなかった。
○月x日
街薬師こと、エヴァ・トゥルーツリーが薬師長につれられて俺達薬師に挨拶に来た
。
初めて声を聞いた。
まあ、可愛い声だった。色気はないが。
しかし驚いた。
なんと、あのディセル殿下の妹弟子だというではないか。
と言うことは、かの有名な『時渡りの魔女』の弟子なのか。
納得だ。
だから、城に招かれたのか。
だから、王妃様つきになったのか。
…人は見かけによらないのだと、思った。
しかも、話てみるとなかなかの人物だ。
明るいし、博識だし、それに俺達城の薬師をちゃんと立てて、敬っている。
俺達に負けないくらい優秀なのに、驕っていない。
こんな奴もいるんだな。
どうやら、そう思っている奴は俺だけではなかったらしい。
同僚の顔もほころんでいたのを、俺は見た。
まあ、話していて楽しいし、癒されるし、こいつが城にいるのもいいかもと思った。
○月×日
エヴァは面白い。
今日は俺達薬師にハーブティを入れてくれて、ゆっくり話もした。
ちょっと天然で、可愛い。
しかも興味深そうに俺達の研究の話を聞き、アドバイスや研究の手伝いまでしてくれた。
正直、同僚皆がエヴァを仲間だと認めている。
もちろん、俺もだ。
それに、薬師長さまだってできなかった王妃様を見事元気にさせた。
確かにエヴァと話をしているとなぜだか元気になる。ほっとする。いつの間にか時間が過ぎている。
エヴァにくっついている侍女は、かなり美人だが、少し怖い。
それだけがネックだ。
エヴァと一緒に仕事するのが楽しみになった。
○月×日
なんということだ!
エヴァの化粧水が注文殺到しているらしい。
さすがはエヴァだ。
しかし、そのせいでなかなかエヴァがこちらに顔を出さない。
この間ちらりと見た顔は青白かった。
大丈夫だろうか。
俺達が手伝うことは可能だろうか?
薬師長さまに言ってみようと思う。
…きっとそう思っているのは俺だけじゃないと思うから。
○月×日
これまた事件が起きた。
なんと、エヴァの扱っている技術を国公認とし、売り出していくらしい。
いい考えだ。
さすがは皇太子殿下。
あれは売れる。俺もそう思う。
どうやら、俺達薬師たちからエヴァの技術を教わり手伝いをするメンバーを募集するらしい。
もちろん、名乗りを上げた。
…というか、まさかの全員名乗りを上げた。
それどころか、薬師でない第七魔術師団の奴らまで名乗りを上げたらしい。
…選ばれたい。
一緒に仕事したい。
一緒にいたい。
俺は祈る。どうか、俺が選ばれますように。
○月×日
やった!
選ばれた!
俺の他に5人、選ばれた。
合計6人がエヴァ直々に技術を教わることになった。
発表された時の医療塔は、のちのち伝説になるだろうと思うくらいすごかった。
阿鼻叫喚。
まさにそんな状態だ。
そして、ついに明日新しい職場、ハーブ園の中にある薬師堂でエヴァに会う。
俺達がこれから新しい風を巻き起こすんだ。
この感動をどう表したらいいんだ。
ともかく、明日からエヴァと同じ職場だ。
喜びに胸が震える。
さあ、明日よ。早く来い!
コリンズ・バケイティシオンの日記より
「…っぷ。プははははっはあっははははは!!!!死ぬ、死ねますわ。わ、笑い死にしますわ…!」
「なんていうか、さすがだよねえ。エヴァ様。ここまでくると、尊敬するわ」
「…薬師たち…ぞっこん?」
「そうねぇ。ぞっこんねぇ。というか、アリアス。よくこの日記手に入れたわね。」
「あら、いやですわ。落ちていたから拾っただけですわ。」
「…へえ。落ちてた、ねぇ」
「…アリアス、嘘、いけない」
「あら、嘘ではないですわよ?」
「…そうね。たまたま、忍び込んだ部屋の机の上に、落ちていたのよね。たまたま。」
「ええ。そうですわ!」
「「「・・・・・・・・・・・・。」」」
「ま、まあ、いいや。とりあえずこれ、報告するの?」
「…殿下は、やめておいたほうがいいと、思う…」
「そうね。殿下はダメね。エヴァ様が可哀想だものね。王妃様だけにしましょう」
「あら…それは残念ですわ。コレを見た殿下も面白いと思いますのに。」
「…それは面白そうだけど、やめときなさい。アリアス」
「でも…やっぱり…」
「うん。」
「「「「エヴァ様の側は、飽きないねぇ(ですわねぇ)」」」」
その後、日記は模写され、本体はきちんと元の場所に戻されたそうです。
エンド
楽しんで頂けたでしょうか?
久しぶりすぎて、不安です…。
感想お待ちしてますm(__)m