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孤独な炎に祝福を  作者: 基龍 連
第一部 孤独のひとり未満
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第七章 紫の向こう側

***MIND 連***


愛奈の言葉に、俺は少し考え込んだ。七色の気持ちを伝えるのは、確かに簡単なことではないだろう。特に、七色のように内気な性格の子にとっては、人前で自分の想いを話すことは大きな壁となるはずだ。

「無理はしない方がいいと思う。七色に押し付けるのも違うしな。」

俺はそう言って、七色に優しく微笑みかけた。七色は少し安心したように、小さく頷いた。

「ありがと…ございます…」

その後の帰り道、愛奈は少し考え込むように空を見上げていた。

「連って、意外と優しいんだね。」

唐突な愛奈の言葉に、俺は少し戸惑った。

「別に…優しくない。ただ、面倒なことには巻き込まれたくないだけだ。」

そう言いながらも、七色の不安そうな顔が頭から離れなかった。柴野の過去を知った今、柴野に対する見方も少し変わった気がする。紫色の炎に苦しめられながらも、強がっている柴野を想像すると、胸の奥が少し痛む。

「それにしても、ヒダる神か…人をダルくしたり、死に追いやってしまうなんて、とんでもない先祖だな。」

俺は、メモに書かれていた内容を思い出し、思わず呟いた。

「本当にね…。でも、その声が聞こえるせいで、あんな風になっちゃったんだとしたら…やっぱりかわいそうだよ。まぁ人の先祖をバカにするのもどうかと思うけど…」

愛奈の声には、いつもの明るさの中に、少し心配の心が混じっているように見えた。

「まぁ、俺たちにできることは少ないかもしれないけど、柴野のことを理解してやろう。」

俺はそう言って、夜空を見上げた。月明かりが、どこか寂しげに俺たちを照らしていた。

翌日、学校に行くと、七色双葉が少しだけ勇気を出して、柴野流星に話しかけている姿を見かけた。遠くて何を話しているかは聞こえなかったが、柴野はいつものように突き放すような態度は取らず、少しだけ立ち止まって七色の言葉に耳を傾けているようだった。

俺は、その光景を遠くから見守りながら、事態が少しずつ良い方向へ向かっているのかもしれないと感じた。

体育の授業では、昨日に引き続き「炎の連神制」の訓練が行われた。俺は、黒い角や羽、尻尾を出すことにだいぶ慣れてきた。体の隅々まで力がみなぎる感覚は、不思議と心地よかった。

愛奈は、相変わらず水色の炎を出すことに苦戦していたが、校長先生に言われた「少し特殊な炎の形をしたもの」を探すように、真剣に取り組んでいた。時折、手のひらに水蒸気のようなものが現れては消えるのを繰り返していた。

「うーん…やっぱり難しいよぉ…」

休憩時間、愛奈は少し落ち込んだ様子で呟いていた。

「焦るなって言っただろ。愛奈には愛奈のペースがあるんだから。」

俺はそう言って、愛奈の肩を軽く叩いた。

「でも…連はもうそんなにできてるのに…」

「俺は俺、愛奈は愛奈だ。それに、俺の先祖は邪神だぞ?なんか、最初から力を持っていそうなイメージだろ。」

「うーん…まぁ、そうかもしれないけど…」

愛奈はまだ納得がいかないようだったが、再び手のひらに意識を集中させ始めた。

その時、体育館の隅で一人、黙々と紫色の炎を操る柴野の姿が目に入った。彼の周りには、常に微かな悲しみのような空気が漂っている。

柴野は、一体どんな気持ちで炎を使っているんだろうか…

俺は、柴野の背中を見つめながら、改めて七色のメモに書かれていた言葉を思い返していた。

そうしていると、朱印先生が来て、

「それじゃあ、今日はここまでにして、黒澤は次は実技訓練だな。」

まだ、あるんだ…と思いながら、午後の授業が終わると、俺は一人、昨日の校長室での会話を思い出していた。校長は、愛奈の「少し特殊な炎の形をしたもの」について、何か知っているようだった。少し気になったので、放課後、校長室を訪ねてみることにした。

「失礼します。」

ドアをノックすると、校長先生の穏やかな声が聞こえた。

「どうぞ。よく来てくれたね、黒澤くん。」

部屋に入ると、校長先生はいつものように優しい笑顔で俺を迎えてくれた。

「どうしたのかな?」

「あの…昨日の体育の授業で、白咲の炎について少し気になったことがあって…校長先生は、何かご存じなのでしょうか?」

俺がそう尋ねると、校長先生は少し考え込むように顎に手を当てた。

「う~ん…天照大神の力は、一筋縄ではいかないからね。炎を操るというよりは、もっと根源的な力を持っているのかもしれない。」

「根源的な力、ですか?」

「そうだ。例えば…光、熱、そして…気体を操る力とかかな。」

校長先生の言葉に、俺は思わず息を呑んだ。熱、気体を操る力…それは、愛奈が時々「晴れ女」と呼ばれることと、何か関係があるのだろうか。

「白咲さんは、まだ自分の力に気づいていないようだけど…いずれ、とんでもない力を発揮するかもしれないね。」

校長先生は、遠い目をしてそう言った。その言葉は、俺の心に深く刻まれた。

愛奈の力は、炎だけじゃないのか?もしそうなら、これから先、一体どんなことが起こるのだろうか。俺は、まだ見ぬ愛奈の力に、少しだけ期待と不安が入り混じったような感情を抱いていた。



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