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孤独な炎に祝福を  作者: 基龍 連
第一部 孤独のひとり未満
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第八章 雨上がりの虹

***MIND 連***


校長先生の言葉が、頭の中で何度も繰り返して流れていた。光、熱、そして気候を操る力……愛奈がそんな力を持っているなんて、想像もしていなかった。いつも明るくて、少しドジな愛奈からは、そんな強大な力はみじんも感じられない。

「とんでもない力か……」

俺が思わず呟くと、校長先生は穏やかな笑みを浮かべた。

「可能性の話だよ。まだ彼女自身も気づいていない。だが、天照大神の血をひく者ならば、いつか目覚める時が来るかもしれないね。」

校長先生の言葉には、少しの不安が混じっているように感じた。強大な力は、使い方を間違えれば大きな災いを招く可能性もある。校長先生は、それを懸念しているのかもしれない。

「ありがとうございます。少し、気がかりだったので……」

俺は頭を下げ、校長室を後にした。廊下に出ると、窓の外はいつの間にか雨上がりで、西の空には鮮やかな虹がかかっていた。愛奈がよく晴れ女だと言われているのを思い出し、もしかしたら、今の虹も彼女の力と無関係ではないのかもしれない、とふと思った。

教室に戻ると、愛奈は机に突っ伏して、難しい顔をしていた。手のひらには、相変わらず水色の炎のようなものが現れては消えている。

「やっぱり、ムズイか?」

俺が声をかけると、愛奈は顔を上げた。少し疲れた表情をしていた。

「うん……なんだか、炎を出そうとすると、逆に体の熱が吸い取られるような感じがするんだ。」

「熱が吸い取られる……?」

それは、校長先生が言っていた「熱」を操る力と関係があるのだろうか。だとしたら、愛奈が出そうとしているのは、炎ではなく、熱そのものなのかもしれない。

「ちょっと、手を貸してみろ。」

俺はそう言って、愛奈の手のひらをそっと包み込んだ。すると、微かにひんやりとした感触が伝わってきた。それは、昨日の冷たい炎とはまた違う、もっと穏やかで、優しい冷たさだった。

「どうだ?」

俺が尋ねると、愛奈は少し目を丸くした。

「うん……なんだか、少し楽になった気がする。」

俺の邪炎の熱が、愛奈の吸熱を中和したのかもしれない。だとしたら、俺と愛奈は、互いの力を補完し合える関係なのかもしれない。

その日の帰り道、俺たちはいつものように並んで歩いた。空にはまだ虹の残りが薄くかかっていて、街全体が洗い立てのような清々しい空気に包まれていた。

「ねぇ、連。」

愛奈がふと声をかけてきた。

「なんだ?」

「私、もしかしたら、炎じゃなくて、熱を操る力なのかも。」

「校長先生も、そんなことを言っていたわ。」

「そうなんだ……なんだか、まだよくわからないけど……でも、連が手を握ってくれた時、少しだけわかった気がする。」

愛奈はそう言って、少し照れたように笑っていた。その笑顔は、雨上がりの虹のように、どこか希望に満ちているように見えた。

「まぁ、焦るのは愛奈らしくないし、いつも通り自由気ままにやればいいよ。」

俺はそう言って、そっと、愛奈の頭を軽く撫でた。

「わぁ~連、そんなことするタイプだっけ?私に頭ポンポンなんて数年ぶりじゃない?」

「別に、たまたま偶然、当たっただけだろ。」

「愛に目覚めちゃった?」

まだ、過去の傷が完全に癒えたわけではない。復讐心だってある。それでも、愛奈の隣を歩く今この瞬間は、確かに、心が少しだけ温かい。

「んなわけないだろ…」

「そっか。」

「どうかしたか?」

「別に⁉連のことが好きな人が近くにいるのになぁ~って。」

愛奈の元気が急になくなったように見えたが、気のせいだろうか…

「馬鹿言うな。そんなの借りにいたとしてお前じゃないのはわかってるからな。」

「そのまさかなんだよ…」

「なんか言ったか?」

「いや何も⁉」

もしかしたら、愛も、生きる力になるのかもしれないな……

そんなことを思いながら俺は、夕焼け空に消え入りそうな虹を見上げていた。



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