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第88話 一人では疲れるからな

「トラシオン!!

メルは悪いやつじゃない!!

お前が一番わかってるはずだろ!!!」


「黙れ!!!

私は……!! 私は!!!!」


――分かっていたさ。最初から。


母を殺したのは、私だ。


忘れられるわけがない。

だが、それを認めることができなかった。


戻れない。

もう、戻れない。


魔王に……。


「ロペオール!!!」


メルの声。


振り返ると、その姿は変わっていた。

だが関係ない。

メルであることに変わりはない。


「トラシオン様!!!」


エリスの声。


……でも、戻れない。

もう、遅かった。


薄々、気づいていた。

背後から迫る存在に。


――ホワール・エスラ。

魔王軍幹部。


来ないでほしかった。

だから、遠ざけた。


私だって、メルが好きだ。

エリスが好きだ。


だが、君たちは弱い。

だからこそ、遠ざけた。


アレン。

君に、助けてほしかった……私を。


その瞬間、建物が大きく揺れ、崩れ落ちる。


トラシオンの背後から、何かが現れた。


――格が違う。


「トラシオ……」


違う……なんで……そこにいるんだ。


「ザヴィレ!!!!?」


ザヴィレの身体が、みるみる干からびていく。


ロペオールが飛び込んでくる。


「来るな!!!」


ザヴィレは残る力を振り絞り、ロペオールを吹き飛ばした。


「ザヴィレ……!!!

なんで!!!!」


「……生きて欲しいからだ。

大事な人がいるんだろ……。

目を逸らすなよ……。


俺みたいになるなよ……」


ザヴィレは、優しく微笑った。


――なんで、お前は一人で……。


「ザヴィレ!!!

任せろ!!!


守るって言っただろ!!!」


アレンの声。


……また使うのか。


【球電!!!】


閃光と爆音。


ホワール・エスラの腕が弾かれ、

トラシオンが解放される。


【フェニックスの炎!!!】


優しい炎が、ザヴィレの身体を包む。


それは温もりのある炎。

再生の炎とも呼ばれる炎。


不死鳥――フェニックスが

自傷と再生を繰り返すための炎。


不死の源とも言われる、伝説の炎だった。



《全部嫌いって言ったけど、

それでも俺は彼女が好きだった。》


《信用して欲しいって言葉は、ただの過程だった。》


《時間を過ごすうちに……

俺は彼女を信用できなくなっていた。》


《疑ってしまっていた。》


《嫌な所ばかりが目についてしまった。》


《彼女なりに考えているって、分かってた。

もう一度、信用したかった。》


《だから願った。》


《でも……限界が来た。》


《俺はこれ以上いれば、

貴方をもっと傷つけてしまうと思った。》


《だから、幸せでいてほしかった。

それだけだった。》


《理解してほしいは、その過程の感情。》


《それ以上に――

俺は、貴方が好きだった。》


《何度も泣いた。

何度も会いたいと願った。》


《死にたいと思ったのは、

支えがなくなった喪失感だったのかもしれない。》


《もう一度……

ただそれだけでいいから

貴方に会いたかった。》


《でも、それが叶わないなら――》


《俺は、

少しでも心が分かり合えた友を守りたい。》


《そして来世で、

貴方に会えることを願いたい。》


《俺に全部を思い出させてくれてありがとう。

アレン。》



「何……考えてんだよ……。

ザヴィレ。


守るって言っただろ!!!

お前の望みも叶えてみせる!!!


だから……

死ぬな!!!!」


「エリス先輩!!!

ザヴィレを!!!」


「チッ……邪魔を……」


「邪魔をするな」


アレンは静かに言った。


「これは――

僕たちの喧嘩だ」


「お前がアレンか」


男はゆっくりと名乗る。


「俺はホワール・エスラ。

魔王軍幹部だ」


「なんでトラシオンを狙う」


「分かっているだろ。

そいつは幹部にあるまじき行為をした」


「お前らが勝手に決めただけだろ!!!


勝手なルールを押し付けるな!!!」


「社会も同じだ。

従わなければ、人権すら与えられない」


「人間と、お前らを一緒にするな!!!」


アレンは地を蹴った。


だがその瞬間。


横に、メルが並んだ。


「アレン!!!」


「なんで!?」


「相棒だって言ったろ」


メルは笑う。


「横に立つもんだ。

支えるもんだ」


アレンは一瞬困った顔をした。


そして、笑った。


「ありがとう。

……また忘れてたな」


「頼める強さ」


「任せろ」


ホワール・エスラが笑う。


「お前らじゃ勝てない。

トラシオンと俺を同時に相手にすることになるぞ」


「関係ない!!!

救うと決めたなら守る!!!


それが僕だ!!!」


アレンの身体が熱を帯びる。


【無重力の炎】


青い球状の炎が宙に浮かぶ。


爆発ではない。

対象を焼き尽くす炎。


「小細工など――」


しかしホワール・エスラは軽々とかわす。


その瞬間。


【ビカクシダ】


巨大な葉が盾のように広がった。


「俺が盾になる」


メルが叫ぶ。


「いつまで突っ立ってんだ。ロペオール。


お前のダチがやられてんだろ!!!


これでいいのか!?


さっさと起きろ、頑固野郎!!!」


「黙れ!!!

お前に言われる筋合いはない!!!」


トラシオンは勢いよく立ち上がる。


――ビカクシダ。


共生。

助け合い。

信頼。


「お前もそう思ってたから

この力を使えたんだろ」


「……メル」


トラシオンが言う。


「覚悟はできてるか」


「当たり前だ」


メルは笑う。


「俺はお前で

お前は俺だ」


「フッ……」


二人は、強く抱き合った。


「なんだよ……

仲良いんじゃねぇか……」


次の瞬間。


二人は、ひとつになる。


「そんなんじゃねぇよ」


そのトラシオンは

眩いほどに輝いていた。


「お前を守る」


「ダチも……」


「エリスも守る」


そして、小さく笑った。


「――一人では、疲れるからな」


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