第76話 2人は進む
「皆はどこに連れていかれた」
「地下です。このホテルの、真下に」
「地下?」
「ええ。ロビーのカウンター下に、隠し通路があります。そこから地下へ続く階段が。エレベーターでも行けますが、リスクが高い。おすすめしません」
「……なんで、そこまで分かっている」
「私を人間と一緒にしないでください」
「答えになっていない」
「今、それを言う必要がないからです」
「いつなら言う」
「最後、ですかね」
ローダルスの言う“最後”。
その意味は分からない。だが、今は聞かないことにした。
「そうか」
「では、頑張ってください」
「お前は行かないのか?」
「トラシオンとは仲が悪いので」
「……分かった」
「行こう、メル」
「あぁ」
「ローダルス。ひとつだけいいか」
「どうしました?」
「ありがとうな」
アレンはそう言い、歩き出す。
「ええ……また……会いましょう」
⸻
「メル」
「どうした、アレン」
「ここからは透過で行けるか」
「任せろ」
「……本当にあったな。これが隠し通路か」
その時、雷の音が微かに聞こえた。
コウキ?だが...上から聞こえた気がする。何が起こってるんだ
二人は薄暗い階段を下っていく。
やがて、広い空間へと出た。しかし暗く、前はよく見えない。
その瞬間、次々と照明が点灯する。
「お待ちしてましたよ。アレンくん」
「……ッ!?」
なぜだ。透過しているはずなのに。
「そして、そちらの方は存じ上げませんが……透過、ですね」
「ッ!?」
「エリスから聞きました」
「お前は誰だ。なぜ、こんなことをした」
「申し遅れました。僕はベルグ。そして――アレンくん。君の力を、貰いたいんです」
「どういう意味だ」
「魔王の力……ですよね」
「なぜそれを知っている」
「僕らは、魔王を殺したい」
「答えになってない!」
メルは一気に距離を詰め、拳を振るう。
だが――
「……何故だ!?」
吹き飛ばされたのは、メルの方だった。
床を転がり、壁に叩きつけられる。
立ち上がろうとするが、明らかに動きが鈍い。
「僕の能力です。【ドロワ】。そう呼んでいます」
「……」
アレンは相手を睨みつける。
「怖いですね。でも、やめた方がいい。僕に危害を加えようとした瞬間、その行動は無効化され、相手へと返される」
「……攻撃しても無駄だと言いたいのか」
「はい。その通りです。さぁ、着いてきてください」
「できない」
「……はい?」
「お前がここにいるなら、今やっておかなきゃ厄介になる。俺たちは救いに来てる。そのための障害は、全部壊す」
「物分かりの悪い人は嫌いですね。無駄ですよ」
「無駄なことはない。アレン。お前なら、出来る」
「あぁ。メル、協力してくれ」
「任せろ。俺の筋肉は飾りじゃない。何千回でも受けてやる」
「……はぁ。めんどくさ」
そう言いながらも、ベルグは僅かに口角を上げる。
アレンとメルは、互いに視線を交わし、笑った。
「殺さない程度で、だぞ。メル」
「当たり前だ。――悲劇は、繰り返さない」




