第72話 コウキの戦い。
「ここならいいだろう? 不良くん」
「あぁ。やろうぜ」
「君が僕に勝てば、彼らを解放するように頼んであげるよ」
「そりゃありがてぇな」
「まぁ……勝てば、だけどね」
相手は楽しそうに笑った。
「それとさ。正当防衛って、どこまでがセーフだと思う?」
「あぁ?」
━━━━━━━━━━━━━━━
暗い道。
くだらない笑い声が響く。
じゃれ合う弱者ども。
世間では、こういう連中をヤンキーと呼ぶらしい。
……本当に、くだらない。
思わず笑いが漏れる。
殴られるために必要なこと、知ってる?
それは——
いかに自分を弱そうに見せるか。
そして、その弱そうなやつにバカにされた瞬間。
連中はこう思う。
「自分なら勝てる相手だ」と。
だから、襲いかかってくる。
今日も今日とて、僕は嘲笑う。
案の定、奴らはこっちへ向かってきた。
風を切る音。
鈍い衝撃。
……でも弱すぎて、何も感じない。
「ねぇ。正当防衛ってどこまでセーフだと思う?」
「あぁ?」
「僕はね……半殺しまでOKだと思ってる」
その瞬間。
僕の笑みは、歪んだものへ変わった。
一人、また一人と倒れていく。
五人……六人。
少ないな。
でもさ。
勝てると思った相手にボコボコにされて、
惨めに命乞いする姿。
あれが本当に——
最高なんだよなぁ。
あぁ、また笑ってしまった。
でも仕方ないよね。
だって。
弱いものいじめが一番楽しいんだから。
今日はこの程度か。
「そこのレディー。あとは頼むね〜」
「じゃ、誰か来る前に逃げろ〜」
僕はその場を去る。
あぁ。
楽しいなぁ。
これが——
僕の最高の人生。
━━━━━━━━━━━━━━━
「どうかな? 僕の人生。最高だと思わない?」
「最高? 最低の間違いだろ」
「合わないね。やっぱり不良は嫌いだよ」
「そうかよ。俺もお前が嫌いみたいだぜ」
コウキは肩を回す。
「それによ……暴力じゃ何も解決しねぇ」
「はぁ?」
「喧嘩と暴力は違う。俺らが今からするのは喧嘩だ。教えてやるよ」
「違うね」
男は笑う。
「一方的な殺しだよ。」
その瞬間。
コウキは素早く背後へ回った。
「早いね……」
男の手が動く。
何かを取り出した。
「でもさ」
男は楽しそうに笑う。
「殴るしかできないなんて、言ってないんだよ」
取り出したのは——小刀。
「これを使ってでも半殺しにして、悲鳴を聞いて、助けてくださいって懇願させる」
「それが一番楽しいからさぁ」
「んなもん持ったやつ、何回も相手してきてんだよ!」
コウキは拳を握る。
「素手でな!!」
【ネビュラ解放】
「なにそれ……面白いね君」
【雷光】
雷が走る。
「雷か。確かに金属は雷を引き寄せやすい」
男は笑う。
「けれどね……」
雷が直撃した。
だが。
「そんな刺激——」
煙の中から声が響く。
「受け飽きてんだよ。」
コウキは体勢を立て直す。
「【雷撃!!】」
雷が再び走る。
「離れたところから撃っても変わらないよ」
次の瞬間。
男は——
目の前にいた。
「なっ——」
刃が走る。
刺される。
だが。
こっちは鍛えてきた。
受けてやる。
……そのはずだった。
凄まじい衝撃。
小刀が——
コウキの腹を貫通した。
「な……んで……」
小刀なんかで。
貫けるはずが——
「油断しすぎたね」
男は淡々と言う。
「能力持ちはね。君だけじゃない」
「相手を観察しないとさ」
刃が何度も突き刺さる。
血が溢れる。
コウキは血を吐き、地面に倒れた。
……やべぇ。
これ。
死ぬ。
「悲鳴も上げないし、しょーもないなぁ〜」
男は肩をすくめる。
「まぁでも絶望した顔は見れたし」
「次の獲物でも探しに行こ〜っと」
背後に——
凄まじい殺気。
男はゆっくり振り向く。
嘘だろ。
何回も刺した。
立てるわけが——
「どこ行くんだよ……」
血だらけのコウキが立っていた。
「終わってねぇだろ」
「てめぇぶっ倒すまで……」
拳を握る。
「死ねる訳ねぇだろぉが!!」
男は目を見開く。
「はぁ?」
「イカれてるだろ……こいつ」
「化け物じゃねぇか」
コウキは笑う。
「いいなぁ!!」
「てめぇやるためなら——」
「化け物にだってなってやらぁ!!」
拳を握りしめる。
「俺には守りてぇものが——」
「いや……」
「守らなきゃいけねぇものがあんだよ!!!!」




