第71話 相棒。
「メル……」
「アレン。俺は、どうすればいい」
「君は――」
「俺は殺してしまった。あいつと、同じだ」
「そんなことは……」
「アレン。俺は今でも、その人が好きだ」
「……」
「アレン、お前がその人に似ている。だからな、守らせてほしいんだ。ただの押しつけかもしれない」
「メル……」
「二度と叶わねぇ恋を引きずっても、それでも愛し続けたい。誰かを守りたい。そして、俺の心も、人格も守ってほしいんだ」
「……守る」
「俺は辛いこと全部、もうひとつの人格に押し付けてた。なのにアイツは、それを引き受けてくれた。アレン、俺にお前を守らせてくれ。そして、俺を守ってくれ」
その言葉が、嬉しかった。
これが、信頼なのだ。
自分が守るだけじゃない。
守ってもらいたい。
一人で背負うんじゃない。
背負われたい。
心の奥にずっとあったその願いを、知らぬ間に押さえ込んでいた。
だからこそ、この言葉が、何より欲しかった。
「ありがとう。メル」
「アレン……」
「戻ろう。守ろう。守るから、守ってくれ」
アレンは泣きながら、メルに笑いかけた。
――まったく。
アレン。お前のその笑顔は、ずるい。
俺まで泣きそうになるじゃねぇか。
……ばかやろう。
メルは、アレンを抱えた。
戻りたい。
守りたい。
僕が、みんなを危険にするかもしれない。
けれど、横に守ってくれる人がいる。
それだけで、少し救われた。
ほんの少しで、十分だった。
罪は、背負わなきゃいけない。
それでも、歩いていける。
「戻りましたか。アレンくん」
目の前に、ローダルスが立っていた。
「よく帰りましたね。よくやりましたよ。トラシオンの片割れくん」
「それやめろ。俺はメルだ」
「どちらでもいいでしょう」
「ちっ」
「では、状況を整理しましょう」
ローダルスは淡々と語り始める。
「まず、君たちのクラスメイトは攫われました。知っているように、彼らは魔王軍ではありません。人間と魔物、魔王の目的に賛同しない高い知能を持つ魔物、そして強くなりたい、壊したい――普通とは違う心を持った人間たちで構成される集団」
「ジェ・コンプリース、です」
「……人間と魔物の集団?」
「そんなことが……」
「あります。知能の高い魔物は思想が強い。魔王に対抗するため、自分が上に立つため、様々なものを利用する。その過程で、社会から弾かれた人間を取り込み、勢力を拡大した。それが、ジェ・コンプリースです」
「そして本題は、エリスという女について」
「エリス先輩……」
「だが、エリスは俺のように人格を奪われ、魔王の元へ――」
「えぇ。ですが、彼女は逃げ出した。いや……逃がされた、と言った方が正しいでしょう」
「どういうことだ?」
「逃がした者が誰か。想像はつきますか? メルくん」
「……もう一人の、俺か?」
「正解です」
「トラシオンが!? 何故!?」
「分かりません。ただ一つ言えるのは、彼が魔王の意向に背いたということ。処分されるのも、時間の問題です」
「……ッ!」
「あいつが……!」
「君たちのやるべきことは二つ」
ローダルスは鋭い目で告げる。
「クラスメイトを取り戻すこと」
「そして――」
「トラシオンを救い、説得し、仲間に引き入れることです」




