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第66話 2人だけの絵

「マリカ……なんで」


「アレンが、どこかに行ってしまう気がした。でも、ここに一度戻ってくる気がした。……いや、いてほしかった。アレンにとっても、大事な場所でいてほしかった」


「……」


「なんで。どこへ行くの」


マリカの瞳に、涙が浮かぶ。


やめてくれ。

そんな目で見つめないでくれ。


揺らいでしまうから。

一緒にいたいと思ってしまうから。


守れないかもしれないのだから。


――でも、少しだけなら猶予……あるかな。

最後にひとつだけ、描けるかな。

二人だけの絵を。


「分かった。マリカ。二人で、絵を描こう」


アレンは笑って、そう言った。


嬉しかった。その言葉が。

こんな最低な日が、いつもの大好きな日常を壊すとすぐに分かってしまうほどの今日を、忘れてしまうほどに。


二人は鉛筆を持った。


一年も部活をしてきたんだ。

上手くなるに決まっている。


「最初と比べて、上手くなったね、私たち」


「当たり前でしょ。みんながいたんだから」


――あぁ、眩しいな。アレンの笑顔は。


あなたの笑顔が見たい。

私が、笑顔にさせたい。


そう思ったあの日の自分。

叶えることが出来たよ。


でも、薄々分かってる。


どこかへ行っちゃうんでしょ。


だって、自分を犠牲にしてでも助ける人なんだから。


止めたい。

でも、止められない。


……あぁ、悲しいな。


なぜか、二人が描く絵は繋がっていた。

なぜか、二人とも「手」を描いていた。


最初は、

「なんだこれ。これが手って言いたいのか? 枝じゃねぇか」

なんて、バカにされたっけ。


でも、もうバカにされない。


出来上がった絵では、

手が、固く握られていた。


――なんでか、僕には分からない。

でもマリカ、君の記憶にはあるんだろう。


僕のない記憶が、これを描かせたってことは、

僕にとっても、大事な何かだったんだろうな。


「この絵、飾っていいかな」


「聞かなくてもいいよ。したいようにするしかないでしょ」


やっぱりアレンは、ずるい。


独り占めしたいって、思ってしまう。


でも、私だけがいい思いなんて出来ないよね。

誰かを助けるんでしょ。


なら、私も行きたい。

アレンを隣で見ていたい。

支えたい。力にならなくても。


……でも、そうはいかなかった。


「ごめん。マリカ。ここから先は……ひとりで行かなきゃ」


アレンは、私の意識を飛ばした。


極力、痛くないように――

優しかった。その手が。


最後に瞳に映ったのは、

悲しい目をしながら、去っていくアレンだった。


そんな顔……しないでよ。


私が、アレンを守りたいよ……。


必ず、行くから。


アレン。

大好き。


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