第67話 僕にできること。力が欲しい
向かう場所は、分からない。
けれど、僕の中の記憶が教えてくれた。
足は、勝手に動く。
だが、辺りは魔物だらけ。
――全部、捨てたんだ。
友達も、居場所も、心も。
少しくらい、暴れてもいいよな。
魔王。
お前を殺すための、肩慣らしだよ。
アレンは、力を解放する。
悲しい。
心が痛い。
それでも、進まなきゃいけない。
守るために……。
アレンの腕が肥大化し、黒く染まる。
魔物の頭を引きちぎる。潰す。殴り飛ばす。
戦い方なんて、どうでもいい。
お前らが悪であることに、変わりはないのだから。
なぁ、俺の記憶。
なんで、全部を見せないんだ。
その方が、あの時の俺が分かるのに。
なんで、こうなったのかも。
アレンは、全速力で走りながら魔物を殺していく。
全部、お前のせいだよ。魔王。
お前を殺せば、皆が幸せになるんだから。
なんで俺は、生きている。
なんで学園に通ってる。
あの時のクラインへの絶望と殺意を、俺はどうやって超えた。
なんで、魔王の力を持った。
勇者たちは、どこへ行った。
無限に、考えが湧き上がる。
魔王の力。
恐らく、全部は引き出せていない。
今、僕にできるのは――
単純な肉体強化。
自身の体の一部を、魔王の体の一部へと変形させること。
物に力を宿すこと。
魔王の力が、これだけなはずがない。
どうすればいい。
どうすれば、強くなれる。
どうすれば、お前を殺せる。
――もう、着くんだな。
あいつの元へ。
⸻
「ついに来ますよ。対面です」
「アレン……なんで、そんなに頑張るんだよ」
「どうしました?」
「お前には、分からないだろう。人の気持ちなんて」
「えぇ」
「大事な人を守れないのは、辛い。でもな……守るために、大事な人を傷つけることも、死ぬほど辛いんだよ」
「……そうですか」
「アイツは、助けられるのか」
「……我々は、見るしかないんですよ。彼を」




