第64話 久しぶり
「……過去を、思い出させてくれ」
「ほぉ」
「出来るだろう。お前なら」
「なぜ、そう思いました?」
「……なんとなく」
「良いのですか? 思い出して」
ローダルスは、いつもの嘲笑を消し、珍しく真剣な表情で問いかける。
「貴方にとって、思い出せば力を得る代わりに、心は蝕まれる。今の生活は、帰ってこないかもしれない」
「今の僕じゃ、助けられないなら……やるしかないよ」
「……分かりました。ひとつ言っておきます。必ず、帰ってきてください」
「あぁ」
ローダルスが指を鳴らした。
その瞬間――
視界が揺れ、景色が一変する。
気付けば、僕は学園に立っていた。
だが、そこは僕の通うレグナス学園ではない。
――どこだ、ここは。
「おい、アレン。今日も部活行くぞ」
「アレン! 早く行こ!」
突然、後ろから肩を組まれる。
驚いて振り返ると、見覚えのないはずの二人が立っていた。
だが、何故か――名前が浮かぶ。
胸の奥が締めつけられ、涙が溢れ出ていた。
知らないはずなのに。
とても懐かしくて、悲しくて、そして、嬉しい。
「……マリカ。シュウ……」
「おい……なんで泣いてんだよ、アレン。どうした? なんかあったか?」
「大丈夫? 泣かないでよ。バカ」
「……ごめん。なんか、嬉しくて」
「なんだよ、それ」
「バーカ」
これから起こる、最悪の事態。
この二人が――死ぬ。
なら、守るしかない。
その時まで、少しくらい感傷に浸ってもいいよね。
アレンは、二人と並んで美術室へ向かう。
――過去を、取り戻すために。
◇
「……なんだ、これは」
「彼の過去の中ですよ」
「なぜ、俺をここに?」
「彼は、一人では超えられない。彼の過去を見て、支えることが出来るのは――同じ人間だけですよ。トラシオンの片割れくん」
「……何故、それを。お前、何者だ?」
「古の守り神……ですかね」
トラシオンは、鼻で笑った。
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「エリスさん。着いてきてください。手荒な真似は致しません。」
「従うと思うの?」
「従わなければその後ろで眠った人達が危険に晒されます。」
「...ッ!」
「私が彼らを地下まで安全に運びます。着いてきていただけますね?」
「保証は出来るの」
「はい。私一人で地下には行きます。あの者はここに居てもらいます。これでいいでしょう?私の能力は運ぶだけですから。」
「貴方もディアセントなのね。」
「私含め、この団体は全員ディアセントですよ。」
「では行きましょうか。」
「おい。ここじゃ思ったように闘えねぇだろ。外に出ようぜ。」
「本来なら君の言葉に従いたくない。けれど、僕もそっちの方がいいよ。外は好きだから。さぁ...行こうか。」
こいつら、何企んでやがる。
エリス先輩...アレン...みんなを頼むぜ。




