第56話 決闘の申し出
全てが終わったあと、僕はダイチとスミレを学園へ誘った。
だが、二人は首を横に振った。
「この村を、もう一度豊かな村にしたいんだ」
そう言って、二人は笑った。
「村を元に戻せたら、必ず会いに行くから。楽しみにしててね」
その笑顔は、最初に出会った時の二人とはまるで別人のように、真っ直ぐで澄んでいた。
思わず、僕も微笑んでいた。
過去は消えない。
守れなかった人たちを忘れることも、きっと一生ない。
それでも――胸の奥が、少しだけ軽くなっていた。
そして僕は、学園へと帰った。
突然姿を消した僕を、みんなは心配していた。
学園に来ていたのに、慌てた顔で外へ飛び出していったのだから、無理もない。
僕は何事もなかったかのように教室へ戻り、いつも通り席に着く。
そして、またいつもの授業を受けた。
――まるで、何もなかったかのように。
だが、その裏で。
「あれが、魔王の力を持つ者か」
「あれを、やれば……」
「焦るな。準備が台無しになる」
「全ては来週。修学旅行で、だ」
その声は、誰にも届かぬ場所で、静かに交わされていた。
「みんな〜、席につけ〜。来週はなんと、修学旅行だぞ〜!」
教室が一斉に沸き立つ。
だが、僕にはそれが何なのか、よく分からなかった。
すると、隣の席のコウキが小声で教えてくれる。
「お前、修学旅行知らねぇのか。まぁ、みんなで泊まりに行って、遊んだり学んだりする行事だよ」
「そうなのか……なんだか楽しそうだな」
「うちの学園じゃ、一年と二年が合同で行くんだ。普段交流できないからな。しっかり交流してこいよ」
二年生――
真っ先に思い浮かんだのは、あの時出会ったエリス先輩だった。
初めての修学旅行。
胸の中に、期待と不安が入り混じった感情が広がる。
そんな時、不意に声を掛けられた。
「ねぇ、アレンくん」
「え?」
振り向いた瞬間、告げられた言葉に、思考が止まる。
「僕と、戦ってくれないか」
あまりにも突然の申し出に、
僕は、何を返せばいいのか分からなくなった。




