第46話 最強の助っ人
「黙れ!!そんなものくれてやるッ!!!
そんなことより!!ローダルス……貴様ッ!!
なぜ邪魔をする……なぜ、ここにいる……!!」
「そんなに怒るなよ。感動の再会じゃないかぁ」
「ふざけるなッ!!」
――知り合い……なのか?
アレンは、二人を交互に見た。
ローダルス。
お前はいったい……何者なんだ?
「貴方が“核心”に迫ろうとするから、いけないんですよぉ。
まだ……早い」
「……お前も、魔王の下に入ったのか!」
「面白いことを言いますねぇ」
ローダルスの笑みが、歪む。
「私が、あいつの下?
……冗談も、ほどほどにしなさい」
その瞬間。
ローダルスの表情が、今までに見たことのないほどの狂気に染まった。
「……丁度いい」
トラシオンの瞳が、殺意に濁る。
「ローダルス。お前を殺せば……」
次の瞬間。
トラシオンの姿が、霧のように掻き消えた。
――消失。
「……貴方は、本当に能無しですねぇ」
ローダルスもまた、消える。
直後。
骨が砕けるような鈍い音とともに、トラシオンの身体が地面に叩きつけられた。
「が……っ……!!」
息を詰まらせ、仰向けに倒れるトラシオン。
「……お、ま……え……
どう、して……俺の、動きが……」
「“俺の”?」
ローダルスは、上から覗き込み、楽しげに微笑む。
「違うなぁ」
そして、冷酷に告げる。
「――遊び飽きた。弱すぎてねぇ」
「……ッ!!」
「さっさと、帰れ」
見下すように吐き捨てる。
トラシオンの額には血管が浮き上がり、狂気と屈辱が入り混じった表情で天井を睨みつけた。
次の瞬間。
天井を破壊し、空へと消え去る。
「……はぁ」
ローダルスは、肩を回す。
「疲れましたねぇ」
――何者だ。
本当に……お前は、何者なんだ。
「アレンくん。私は帰ります」
背を向け、歩き出しながら言う。
「ただ、その前に一つだけ」
「……」
「君が、このまま先へ進めば――
必ず、奴が現れる」
「……誰だ」
「カルマ・クライン」
その名を聞いた瞬間。
アレンの全身を、氷のような感覚が走った。
「あの村を……焼いた……」
歯を食いしばる。
「俺が……必ず、殺す」
「……今の君では、勝てません」
ローダルスは、振り返らずに言う。
「――思い出せ」
「……?」
「君が……何を失い、何を選んだのか」
そう言い残し、霧の中へと消えていった。
(……思い出せ……か)
胸の奥に、嫌な感触が残る。
だが――
「アレン……あの人は……」
「今は、それより……ダイチくんだ」
アレンは、スミレを見る。
彼女は、はっとして、奥の扉へと駆け出した。
生態実験室。
その扉を、震える手で開く。
中には実験室と言うにはおかしい。植物だらけだった。
そして植物に埋もれていたが、白衣のような物も、混じっていた。
奥で声が聞こえる。
「……っ」
そこにいたのは――
あの日、目の前で失ったはずの少年。
炎に包まれた村で、必死に助けを求めていた――
その姿のままの、ダイチだった。
「……ダイチ……」
スミレの膝が、崩れる。
「……ごめんね……」
声が、震える。
「本当に……ごめんね……」
彼女は、少年を強く抱きしめた。
嗚咽を噛み殺しながら、何度も何度も謝り続ける。
「……ごめんね……」
だが。
少年は、そっと彼女の腕を押し返した。
「……誰ですか」
冷静で、無機質な声。
「僕は……あなたのことを、知りません」
――その言葉が。
静かに、深く、二人の心を切り裂いた。




