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第43話 研究所の職員

アレンとスミレは、研究所の正門へと辿り着いた。


高い塀に囲まれた建物は、異様なほど静まり返っている。

風の音すら、どこか遠い。


「……静かすぎる」


スミレが呟く。


まるで、建物そのものが息を潜めているかのようだった。


中へ足を踏み入れると、鼻を刺すような薬品の匂いと、微かな機械音。

そして――壁の隅や床の亀裂から、不自然に伸びる蔦。


(……植物……?)


胸騒ぎを覚えながら、アレンは声を張った。


「すいません。ダイチくんはどこですか」


沈黙。


やがて、廊下の奥から、足音が近づいてくる。


「……君たちに、教える義理はないよ。」


白衣を着た男が、疲れ切った表情で立っていた。


「出来れば、手荒なことはしたくないんです。」


「君たちは……彼の、なんなんだ?」


「私は、あの子の姉。返して!」


研究員の手が、わずかに震えた。


「……そんなに大事なら、最初から守っておけ!」


声を荒げる。


「もう時間が無いんだ!! 遅すぎたんだ、君たちは!!」


アレンの目が、細くなる。


「……それでも、出来れば手荒な真似はしたくない。」


その背後で、黒い靄が揺らめいた。


魔王の力が、静かに目覚める。


「……彼よりも、大きい力の持ち主か。」


研究員は、苦しそうに息を吐く。


「だが……彼は制御が出来ない。世界を終わらせかねない存在だ。」


「……どういう意味ですか」


「彼は――周囲の物を、植物に変える。」


「……植物?」


「物も……そして、人もだ。」


スミレの息が、止まる。


「……人も……」


「私は、ここで何年も彼の世話をしてきた。」


研究員の声は、次第に弱くなっていく。


「ある日、彼は無自覚に能力を使った。研究員の一人が……植物に変わった。」


「そんな……」


スミレは、何も言えず、唇を噛みしめる。


「彼は悪くない。分かっていた。だから、隠し続けた……だが、もう限界だった。」


男は、顔を覆った。


「……頼めるかい。」


指の隙間から、涙が落ちる。


「もう一度……彼の笑った顔を見たいんだ。」


「……」


「彼は、これからを生きる子供だ。だから……頼む。」


スミレは、強く頷いた。


「当たり前。私が……絶対に助ける。」


アレンも、静かに言う。


「誓いました。だから……見過ごせません。」


二人は、同時に走り出した。


研究員は、その背中を見つめながら、ただ立ち尽くしていた。


「……頼んだよ。」

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