第41話 時間はない
「どういうことですか!? 校長!」
思わず声を荒げたアレンに、校長は静かに手を上げた。
「落ち着きなさい、アレンくん。彼は――危険すぎたのだ。彼は...ディアセントとも少し違う。レビュラを超えた先の能力...と言うのが1番正しいのかもしれない。」
その言葉に、胸の奥が強く締めつけられる。
アレンが驚いた理由は二つあった。
一つは、「処分」という言葉の重さ。
そしてもう一つは――ダイチという名。
もし、あの時、目の前で救えなかった少年が生きているのだとしたら。
確証などない。それでも、胸の奥で、直感が叫んでいた。
――あの子だ、と。
「……彼は、どこにいるんですか。」
「ダンジュル研究所だ。」
「ダンジュル研究所……?」
「表に出せぬ研究を行う施設だ。場所は公には認知されていない。」
そう言って、校長は一枚の地図を差し出す。
「ここから南。イシェル街を越えた先にある。」
「……ありがとうございます。」
アレンは深く頭を下げ、校長室を後にした。
扉が閉まり、部屋に静寂が戻る。
校長は、誰もいない空間に向かって、ぽつりと呟いた。
「あぁ……言い忘れてしまったな。」
薄く笑い、その目は、冷えきっていた。
「ダンジュル研究所へ、魔王軍が彼を奪いに向かっているという情報を。」
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アレンは、学園を飛び出した。
授業のことなど、頭から消えていた。
「ローダルス、いるか。」
「えぇ、もちろん。……面白くなってきましたねぇ。」
「まず、スミレのところへ行く。」
「走るのは面倒ですねぇ。」
その瞬間、ローダルスの姿が歪み、巨大な鳥の魔物へと変貌する。
「私が運びましょう。」
鋭い爪がアレンの肩を掴み、次の瞬間、地面が遠ざかった。
「場所は――」
「分かっていますよ。」
風を切り裂くような速度で、二人は空を駆けた。
やがて、質素な家の前へ降り立つ。
「随分と簡素な住まいですねぇ。」
「スミレは――」
「アレン!!」
背後から、息を切らした声が響く。
振り返ると、スミレが駆け寄ってきていた。
「物凄い速さで飛ぶ何かを見て、慌てて戻ってきたんだけど……なに、これ……」
「落ち着いて聞いてくれ。」
アレンは一度、深く息を吸う。
「確証はない。でも……ダイチくんの行方が、分かったかもしれない。」
「……ほんと!? どこにいるの!!?」
「ダンジュル研究所。そして――」
言葉が、喉に引っかかる。
「明日、処分されるらしい。」
その瞬間、スミレの表情は、音を立てて崩れた。




