第27話 無理やりに
アレンは困ったように視線を泳がせた。
「いやぁ...でも、僕、お金もないですし……」
「大丈夫!」
間髪入れず、彼女は満面の笑みで言い切った。
「バイトしてるから、お金ならあるの! 遠慮しない!」
「え、でも……」
「はい、決まり!」
そう言って、半ば強引にアレンの腕を掴み、ずんずんと歩き出す。
こうして二人は、お化け屋敷の入口から、そのままショッピングモール内のフードコートへと向かうことになった。
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一方その頃。
お化け屋敷の出口では、アレンと同じグループのクラスメイトたちが、困った顔で立ち尽くしていた。
「……あれ? アレン、出てこなくない?」
「迷子になったんじゃ……」
「さすがに心配なんだけど……」
だが、その心配をよそに、当の本人は全く別方向へ連れていかれていた。
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フードコートへ向かう通路。
二人が歩くたび、周囲の視線が集まる。
アイドルのような美貌を持つ少女と、銀髪に赤い瞳を持つ整った顔立ちの少年。
その並びは、どう見ても普通ではない。
「……ねぇ、あの二人」
「映画の撮影?」
「有名人じゃない?」
そんな声が、あちこちから聞こえてくる。
だがアレンは、緊張のあまり周囲に目を向ける余裕すらなかった。
「……あの、すみません……」
小さく呟きながら、ただエリスに引っ張られるまま歩く。
その姿を、偶然、別行動をしていたコウキとサーレのグループが目撃する。
「……は?」
「……え?」
二人は同時に足を止め、揃って二度見した。
そして顔を見合わせる。
「なぁ、今の……アレン、だよな?」
「……だね。しかも、あの人と一緒」
だが、声をかける間もなく、人混みに紛れて二人の姿は見えなくなった。
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フードコート。
二人は向かい合い、ラーメンを前に座っていた。
「改めて、私はエリス。レグナス学園の二年生」
「僕は、アレンです。一年生で……」
「え、同じ学園なの!?」
エリスの目が、ぱっと輝く。
「すごい偶然! 嬉しい!」
勢いよく身を乗り出し、じっとアレンの顔を覗き込む。
「ねぇ、それ――」
彼女はアレンの銀色の髪と、赤い瞳を指差した。
「髪って地毛? 目も?」
「え……あ、多分、そうです……」
すると、エリスの表情が一瞬で変わった。
「……っ!」
息を呑み、次の瞬間、宝物を見つけた子供のように目を輝かせる。
「やっぱり……! やっぱり本物だったんだ……!」
「え?」
「最高……! 最高すぎる……!」
何がどう最高なのか分からず、アレンは困惑する。
「その見た目で、その雰囲気で、その控えめな性格……!」
「……?」
「漫画とアニメの強キャラ全部盛りじゃん……!」
興奮気味にまくし立てるエリスに、アレンはただ小さく首を傾げた。
だが、その空気を切り裂くように、聞き慣れた声が響いた。
「――アレン!」
振り返ると、同じグループのクラスメイトたちが立っていた。
「やっと見つけた……って」
次の瞬間、全員が固まる。
「……エ、エリス先輩!?」
学園内でも有名な存在。
そんな人物が、アレンと向かい合ってラーメンを食べている。
混乱する一同の中で、アイネが一歩前に出た。
「……じゃあ、アレンくんは返してもらいますね」
そう言って、少し不機嫌そうにアレンの手を引く。
「え、あ、ちょ……」
アレンが戸惑う間もなく、エリスが楽しそうに口を挟んだ。
「じゃあ、私も一緒に同行しようかな〜?」
にやり、と挑発的に笑う。
アイネはじっと睨み返すが、エリスはすぐに肩をすくめた。
「冗談だよ」
少し残念そうに笑い、アレンに視線を向ける。
「また学園でね、アレンくん」
そう言って軽く目配せし、エリスは人混みの中へと消えていった。
その場に残された一同は、しばらく呆然と立ち尽くしていた。




