第25話 いつもと違った日常
朝の学園は、いつも通り賑やかだった。
廊下には笑い声が響き、教室ではすでに席について談笑する生徒たちの姿がある。
だが――その空気が、一瞬で変わった。
ガラッ。
教室の扉が開く。
「遅れましたー……」
聞き慣れた声と共に入ってきたのは、アレン、コウキ、サーレ、そしてレミア。
しかし――
その並びを見た瞬間、教室のざわめきが止まった。
「……は?」
「え……?」
「なに、あれ……?」
誰もが目を疑った。
なぜなら。
サーレとレミアが、並んで楽しそうに話しながら歩いていたからだ。
「ねぇ、それでさ――」
「ふふ、それ絶対おかしいでしょ」
穏やかな声。
柔らかな表情。
昨日までの、無表情で他人を拒むようなサーレの姿は、そこにはなかった。
「……サーレ?」
「嘘だろ……」
「レミアと普通に会話してる……」
教室中が静まり返る。
「おい、サーレ。お前どうしたんだよ」
思わず誰かが声をかける。
「ん? 何が?」
不思議そうに首を傾げるサーレ。
「いや、だから……」
「……いや、なんでもない」
言葉を失い、引き下がる。
コウキはその様子を見て、肩をすくめた。
「お前ら大げさすぎだろ。なぁ?」
「……」
アレンは何も言わず、少しだけ視線を伏せた。
――変わったのは、サーレだけじゃない。
教室に戻ってきた自分自身も、きっと何かが違う。
けれど、それをどう言葉にすればいいのか分からなかった。
「おーし、席につけー」
そこへベルダ先生が入ってくる。
教室は慌ただしく静まり返った。
「最近、任務続きで気が張ってるだろ。ってことで、今日は息抜きだ」
生徒たちがざわつく。
「放課後、交流を深めるために外出学習を行う。グループは――」
ベルダは小さな箱を取り出した。
「くじ引きで決める」
「うわ、運ゲーじゃん!」
「頼む、変なのと当たりませんように……!」
次々と紙を引いていく生徒たち。
「えーっと……5班」
「俺も5班だ」
「まじか、俺も!」
そして。
アレンが引いた紙にも、同じ数字が書かれていた。
「……5班」
顔を上げると、そこにはアイネと、見覚えのないクラスメイトが三人。
「あ、アレン一緒じゃん」
アイネが軽く手を振る。
「よ、よろしく……」
「あ、うん」
「よろしく……」
ぎこちない空気。
その様子を、サーレは少しだけ残念そうに眺めていた。
「別か……」
「なに? 一緒が良かった?」
レミアが小声で聞く。
「……いや、別に」
そう言いながら、視線は無意識にアレンの方へ向いていた。
「目的地は街のショッピングモール。集合時間は放課後すぐだ。解散!」
ベルダの号令と共に、教室は一気に活気づく。
「どこ行く!?」
「飯からだろ!」
「服見に行こーぜ!」
そんな喧騒の中で、アレンは静かに息を吐いた。
――久しぶりの、何も起きない日常。
なのに、なぜか少し胸がざわつく。
この先に、何かが待っている。
理由は分からない。
けれど――
そんな予感だけが、心の奥に静かに残っていた。




