第24話 余韻と少しの悲しみ
私たちは魔物を討伐し、村の人たちから深く感謝された。
夜も遅かったため、村に泊めてもらえることになり、皆、疲れ切った様子ですぐに眠りについた。
私は一人、外へ出て、月を見上げていた。
サーレが戻ってきたことが、とても嬉しかった。
それでも、胸の奥には少しだけ、言葉にできない悲しさが残っていた。
あの日から、私はずっと待ってきた。
突然、サーレは私を――いや、世界のすべてを無視するようになった。
まるで、何も見えていないかのように。
理由は、なんとなく分かっていた。
きっと、彼の親のせいだ。
でも、私には何もできなかった。
それでも、ほんの少しでも戻る可能性があるなら。
そう思って、私は毎日、彼に話しかけ続けた。
次第に、彼は周囲から嫌われていった。
私も毎日声をかけていたから、変人扱いされた。
だけど、そんなことはどうでもよかった。
私は知っている。
彼の優しさも、泣き虫なところも、強がりなところも。
全部。
だから、失いたくなかった。
どれだけ戻らなくても、戻るその日まで、私は待つと決めていた。
――それから何年も経った。
すべてに興味を失っていた彼が、ある日、誰かに興味を示した。
転入生の、アレンくん。
嬉しかった。
もしかしたら、戻れるかもしれないって。
でも同時に、分かってしまった。
彼を戻せるのは、私じゃない。
その事実が、少しだけ、苦しかった。
それでも今日、ようやく気づけた。
アレンくんが、照らしてくれたんだ。
サーレの世界を。
そして、私がずっと待っていた月を。
今日の満月は、いつもより一段と輝いて見えた。
「……ミア。レミア!」
呼ばれる声に、私は目を開いた。
視界に映ったのは、心配そうに覗き込むサーレの顔。
その横には、アレンくんとコウキくんもいる。
「なんで外で寝てたの、レミア。心配したよ」
あぁ、そうだ。
月を見ていたら、そのまま眠ってしまったんだ。
「ごめん。月を見てたら、つい……」
「バカ」
そう言って、サーレは私の手を引いた。
「帰ろ、レミア」
その言葉が、胸にじんわりと染みる。
「サーレ。久しぶりだね」
気づけば、そんな言葉が口からこぼれていた。
名前を呼んでくれたこと。
話しかけてくれたこと。
戻ってきてくれたこと。
全部が嬉しくて、抑えられなかった。
サーレは、少し驚いた顔をしてから――
ふっと、笑った。
「うん。久しぶり」
その笑顔は、温かかった。
記憶の奥にあった、あの頃のサーレだ。
帰り道、私たちは並んで歩きながら、たわいもない話をした。
アレンくんは、最初に思っていたよりずっと優しくて。
コウキくんも、ぶっきらぼうだけど、意外と面倒見がいい。
コウキくんが、サーレの変わりように「気味悪ぃ」とぼやく。
それを見て、アレンくんと私は顔を見合わせて笑った。
……楽しい。
やっぱり、サーレの笑っている顔が一番好きだ。
あの夜月は、静かに夜空を照らしていた。
その光が、これからも彼を照らし続けますように。
月夜と君へ編 ~完~




