レドルート 序章
第四章 〆
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【レド√】
後夜祭で賑わう夜のパーティーを抜け出し、私はある人物の姿を探していた。
「レド……どこへ行ってしまったのかしら?」
いつでもルデンの側にいた彼が、長時間席を外すのはなかなかに珍しい。
後夜祭のような不特定多数がルデンと接触しそうなパーティーであれば尚のこと。
(ルデンがレドを探していたから、私もなんとなく彼を探しに来てしまったのだけれど……)
ルデンを置いて帰るわけがないので、学園内にはいるはずなのだが────。
「────」
(あ、レド!)
彼が中庭に入っていく後ろ姿が見えた。
声をかけようとして、思いとどまる。
(そうだわ……今ならもう、気配を消す魔法を使ってもいいのだし、レドを驚かせちゃおうかしら!)
鏡を見なくても分かる。私は今とても悪い顔をしていることだろう。
(レドには散々、いきなり背後に立たれて驚かせられたもの。少しくらい仕返ししたっていいわよね?)
今はレドのそれにもだいぶ慣れたが、ダイヤ生になったばかりの頃は、それで散々心臓を痛めたのだ。
レドは今の私のように魔法を使って気配を遮断しているわけではないのに、何故だかいつも気配なく近づかれてしまう。
(そういえば……常に足音もない気がするわ)
完璧な従者はそういうところにまで気を配っているのだろうか。
レドは中庭を抜け、人気の少ない時計塔付近に向かった。
(レド、どうしてこんなところに───)
「────来たか」
───突然、黒いローブを身にまとった人物が、物陰から姿を現した。
(レドの……知り合い? それにしても、ローブの人も全く気配がなかったわ……)
ローブの人は……声を聞いた感じ男性だろうか。
ローブを深く被っていて、姿の判別ができない。
レドは彼に用があったようで、ここで待ち合わせしていたようだ。
(話すにしてもこんな人気のないところで……? ……いいえ、それはともかく、これじゃあ立ち聞きするようで悪いわね。早くこの場を離れて───)
「……ふ、良い仲間ができたじゃないか」
私が場を離れるよりも先に、ローブの男がレドと話し始めてしまった。
しかも気になるのが、ローブの男の声音が明らかに嘲笑的だったこと。
この場から動くタイミングを逃した私は、気配を消したまま木の陰で耳をそばだてた。
「……無駄話をするつもりはない。命令は」
さらに驚いたことに、レドの声音が酷く冷たい。
眼前にいるのが本当にレド本人なのか、疑ってしまうほどに。
「……ふん、相変わらずつまらないやつだ。まぁいい。上からの命令が下った。───第二王子を始末しろ」
(……!? い、今……なんて?)
「……」
「一週間以内に任務を遂行しろ。殺し方はお前に任せるそうだ、クロユリ」
ローブの男は、レドを『クロユリ』と呼称した。
「……了解」
(え……どういう、こと……?)
指先が震える。
このローブの男は一体誰なのか。何故第二王子の従者であるレドに、そんな話を持ちかけるのか。
(上からの命令……? 上って、一体誰のことを指しているの?)
眼前で交わされている会話は、一体なんだというのか。
レドの表情からは、何一つ感情が読み取れない。
恐ろしく冷たく、冷酷な瞳が妖しく揺らいでいる。
(彼は────本当にレドなの?)
そんな見たことも無い彼の顔を見て、私は思わず後退りした。
すると足元で、枝がパキッと折れる音が小さく鳴る。
「ッ!」
ヒュンッと、頬の横すれすれを小型の刃が通過した。
振り返ると、背後の木に鋭利な刃物が突き刺さっている。
(……っ)
ローブの男は正確に音の鳴った位置を特定し、投げてきた。───殺すつもりで。
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「……? 気配はない……風、か」
男は瞬時に放った殺気を鎮めた。
「……命令は確認した。長居は目立つ。去れ」
言われるまでもない、とでもいうように鼻を鳴らすと、男は目を細めて言う。
「……くれぐれもしくじるなよ、クロユリ」
男は夜の闇に紛れて姿を消した。
「…………」
レドは木に刺さった刃物を抜き取ると、何事も無かったかのように、その場を立ち去った。
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