ルデンルート 序章
第四章 〆
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【ルデン√】
後夜祭で賑わう会場を抜け出し、中庭のベンチで夜風に当たる。
頬を撫でる風が、やけに心地いい。
僕は、今日の出来事を思い返しながら目を瞑る。
彼女の戦う姿はとても優美で───凛としていて。
戦う彼女の横顔が、目に焼き付いていた。
あの瞬間、彼女の魔法を見た誰もが、彼女に魅了されていた。
王宮魔導師も度肝を抜かれるほどに。
今日の出来事で、皆が彼女を認めたことだろう。
それはとても喜ばしいこと。
そう、僕たちは皆に彼女のことを知ってもらいたかった────はずなのに。
どうしてだろうか。後夜祭で学生たちに囲まれた彼女の姿を見た時、なんとも言葉に言い表せない感情が胸の奥にドロドロと湧き上がった。
人混みから彼女の腕を引き、その場から連れ出してしまいたい。彼女の瞳に映るのは、僕だけがいい。
そんなふうに思ったのだ。
……なんて傲慢な考えなのだろうか。
一瞬でもそんな考えが頭をよぎり、己に嫌悪する。
彼女へのこの感情の正体に、気が付かないほど鈍感ではない。
僕は彼女が────。
はぁ、と息をつき、溢れ出そうになった感情に蓋をする。
(それにしても、王宮魔導師はさっそく彼女の力に目をつけたな)
演術が終わった後、訪れていた王宮魔導師たちが彼女のことを根掘り葉掘り聞いて回っていた。
僕の元にも入れ代わり立ち代わり、彼女へ話を通してほしいと交渉に来た者さえいた。
恐らく彼らは、学園を卒業したら城で王宮魔導師として仕えないか、という話を彼女に持ちかけたいのだろう。
彼女の実力であれば、卒業せずともすぐに声がかかるはずだ。
そして間違いなく、最前線の魔導師部隊へと配属されることだろう。
ここで言う最前線とは、戦場でのこと。
王国は未だに魔族との戦に備えている。
殺傷性の高い魔法を得意とする彼女は、王国にとって強力な戦力となる。
彼女が他国へと渡る前に、国で囲っておきたいと考えているはずだ。
他種族との争いなど、不要だというのに。
頭の痛い話だ。
王国に目をつけられたら、いくら僕が王族であろうと介入が難しくなる。
彼女だけは、なんとしても守らなくてはならない。
彼女には、自分だけのためにその力を使ってほしい。
(僕にも力があれば……)
彼女の代わりを務めることができるだろうか?
誰かがこちらに近づいてくる気配がする。
(レドではない───)
一瞬身構えたが、どうやら王宮魔導師のようで、こちらに悪意はないようだ。
「ルデン様、少々お時間宜しいでしょうか?」
「あぁ、構わないけれど……何度も言うがベリルには───」
「いいえ、此度はルデン様にお話が」
「僕に?」
「はい。最近、ルデン様の加護の調子はいかがですか?」
「……っ」
(……あぁそうか。そういえば、この王宮魔導師はあの実験の場にいた気がする)
「 ……ああ、問題なく稼働している」
「ならば安心いたしました。王もルデン様を気にかけておられましたので」
「……」
父上が気にしているのは僕自身ではなく、僕の加護の方だろう。
(魔法がなくても……不便はあるが不自由はない)
彼女が口にした言葉が、酷く心に残っていた。
僕の加護は、あとどれくらい保つのだろうか。
僕の加護は、いつ機能を停止させるのだろうか。
いつか来るであろう終わりが、明日かもしれない恐怖。
「不自由はなくとも……誰かを守る力を失うのは、やはり────」
僕の独白は、風によって掻き消されていった。
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