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RoughJewel ──ラフジュエル──  作者: norn
第四章 〜過去〜

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予期せぬ事態

 

 ───────────────────



 休憩時間が終わり、いよいよ、交流祭最後の試合が幕を開ける。


「───いよいよだね。僕たちも観客席(ちかく)で見ているから。二人とも、ベリルを頼んだよ」


「お任せを。彼女には指一本触れさせません」


「もしかしたら、ベリルの出番ねぇかもなぁ?」


「す、少しくらい出番を残しておいてね? ただでさえさっきの試合、何もしていなかったんだから……」


「ふ……緊張しているかと心配したが、そんなことはなさそうだな」


「リルちゃん、無理はしないでね! みんなで応援してる!」


「ええ!」


 みんなの応援を背に、私はレドとシェナと共に演術者の入場口へと向かった。



 ───────────────────



 相手チームは、対面の入場口にいるはず。

 そこに姉様がいるのか、それはまだ分からないけれど……きっと、戦うことになる。


 入場口手前で会場係が演術者のエントリー確認を行っている。

 私たちが入場口を通過しようとすると、それを会場係の女性に止められた。


「───お待ちください。これより先、非演術者の同行は禁止されております。お見送りはここまででお願い致します」


 会場係が入場を止めたのは、三人ではなく、レドとシェナだった。


「は? 見送り?」


「我々も彼女同様、演術者としてエントリーしていますが?」


 レドが言うと、会場係は怪訝な顔をしながら首を横に振った。


「いいえ? 失礼ですが、魔導学園の三試合目代表者はベリル・エーデルシュタイン様のみと伺っております。皆様からお預かりした演術者登録票にも、そのように記載されておりますので」


「え……?」


「いえ、そんなはずは────」


 係から確認しろ、と渡された紙には、三試合目の出場者は私の名前のみが記入されていた。


「ふ、ふざけんな! なにかの手違いだろ! ルデンが書いた登録票は俺たち全員も確認して────は? お、おい、この字───」


「これは……ルデン様が書かれた文字ではありません。登録票が……すり替わっています」


「ど、どういうこと? 何故、そんなことに───」


 困惑する私たちをよそに、会場係は時間を確認するとコホンッと咳払いをした。


「───そろそろ三試合目が始まりますので、同行者様はお引取りを」


「お、おい待てよ! 俺らが渡した登録票には、ちゃんと俺とレドの名前も書いてあっただろッ!!」


「いかなる状況であろうと、出場者の変更は受け付けられません。これ以上ここでお騒ぎになられるようでしたら、魔導学園には棄権していただくことになりますが」


 会場係は人を呼ぶと、レドとシェナの前に立ち塞がった。


「くそ……っ、どうなってんだ!」


「……仕方ありません。ベリルさん一人を出場させるくらいなら───棄権しましょう。ルデン様もお許しになるはずです」


「……っ。───ああ、そうだな。ベリル、さっさと運営に棄権の報告を───」


「…………」


 私は、二人に向けて静かに微笑んだあと、入場口へと歩みを進める。


「……っお前、まさか一人で出るつもりじゃねぇだろうな!?」


「そんな……! おやめください、ベリルさん!!」


「レド、シェナ。私、行ってくる。こう見えて、私の魔法は戦闘向きなの」


「ッそういう問題じゃ───」


「貴方たちに私自身のことを打ち明けてから、なかなかそのタイミングがなかったのだけれど……化け物だと言われた力を、まだ全部、真に見てもらっていないから。私の姿を見て、尚、共にいてくれるのなら───私は姉様の前に、堂々と立つことができる。みんなの役に立てるのなら、私は〝化け物だって構わない〟と、そう……言えるから!」


 私は二人に、とびきりの笑顔を見せた。


「ルデンたちにも伝えて。〝私が負けることはありえない〟って」


 私は二人に背を向けると、そのまま振り返ることなく入場口へと向かった。

 二人が私を呼び止める声は、心配しているような、それでいて少し怒っているような。そんな声だった。


(これ……たぶん勝ってもみんなに怒られるコースね)


 けれど、迷いはない。

 ここでスピネル姉様と戦わなかったら、真の意味で、前には進めない気がしたから。


(自分のためでもあるけれど……この力は、みんなのために使いたい)


 スゥ──と呼吸を整え、会場アナウンスと共に決戦の場へと足を進めた。



 魔術学園の入場で、会場全体が歓声に包まれた。

 それに対して、私には歓声とは程遠いざわめき。

 それもそうだろう。

 元より私は、魔導学園の学生からも代表者として歓迎されていないし、また相手学園も一般の観客も、まさかこちらが一人で出場してくるとは誰も思うまい。


 対峙した魔術学園の代表は、一人で登場した私に少しばかりの同情の眼差しを向けた。


「……ふん、まさか一人で出てくるとはね」


「……いいんですの? これなら早く決着がつきそうですわね」


「…………」


 姉様は何も言わずに、私を見据えていた。


「……姉様」


(やはり、出場してきたわね)


 これで予想が外れていたら、悲惨だった。


(今こうしてこの場にいることが無駄になるところだったもの)


 姉と戦うことが出来る。

 私は自分を鼓舞するように、口元に孤を描いた。

 その様子が気に入らなかったのか、スピネルは眉間に皺を寄せた。


「……随分、舐められたものね。(わたくし)たちを倒すのは、貴女一人で十分だということかしら」


 姉の声には、明確な怒りがあった。


「……どう捉えていただいても結構です。私は〝化け物〟ですので」


「……。…………そう」


 姉様は一瞬、何か言いたそうに口を開きかけたけれど、その先の言葉を発することはなかった。



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