交流祭
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───そして、早くも交流祭当日。
予定通り、此度の交流祭は魔導学園にて開催された。
そのため、普段めったに使用できない学園の大聖堂の門が開かれ、そこで私たち両学園対抗の演術が行われることになった。
会場に入ると、まずその広さに驚かされ、次に観客席へと目がいく。
「おわー、すごい人混み! うちの学園ってこんな学生数いたんだ!? 向こうの代表者さん、めちゃくちゃアウェイじゃない?」
目を輝かせながらキョロキョロと周囲を観察するセシアン。
確かに、この広い大聖堂の中がいっぱいになりそうなほどの賑わいだ。
「いや、今年はあちらの学生も一般観戦者として来場することができるみたいだから……あぁほら、僕らとは違う制服の学生も一般客の中に」
「お、ホントだ!」
「おい、あまりキョロキョロするな。一緒にいる俺たちまで恥ずかしいだろう」
「だって大聖堂入ったの初めてなんだもーん」
「私も。結構広いのね」
(それに、この天井の高さなら屋根を破壊せずに済みそう)
指定された場所で待機していると、すぐに会場の係の者が現れ、案内をしてくれた。
「魔導学園代表者の皆様。各選出者の記入はお済みですか? 以後出場者、選出者の変更は受け付けませんので、よくご確認の上ご提出ください」
「はい、問題ありません」
ルデンが記入用紙を提出すると、その場で会場係がテキパキと確認を済ませる。
「ではお預かり致します。開始まで、こちらの控え室でお待ちください」
係に案内された控え室へと向かう途中。
私たちは、相手選手となる、魔術学園の代表者たちと対面した。
「……あ…………」
唇から小さく漏れ出た音は、すぐに大勢の人の声の波に呑み込まれた。
「…………」
一瞬だけ、視線が交わる。
肩まで伸びた、私と同じ銀色の髪。金色の瞳は父譲りで、切れ長の凛とした目元。
よく知ったその顔は、会わない間に少し大人びたように感じる。
「スピネル、姉さ────」
「御機嫌よう、ルデン・ヘリオドール第二王子殿下。そして、魔導学園代表の皆様。わたくし、魔術学園代表のリーダーを務めます、スピネル・エーデルシュタインと申しますわ。本日はどうぞ、よろしくお願い致します」
姉は優雅に、貴族の挨拶を済ませる。
久々に聞いたスピネル姉様の声。
姿や顔立ちも昔と比べて大人になったけれど、このキリッとした切れ長の瞳は、昔と全然変わっていない。
(……私の知る、スピネル姉様だわ。……けれどやはり、彼女の目に私は映っていないのね───)
「初めまして、エーデルシュタイン嬢。そして魔術学園代表の皆さんも。お互い、良い演術にしよう」
ルデンが微笑むと、その美しさに相手学園の代表者は男女問わず頬を染めた。
「…………」
再び、スピネルと視線が交わる。
が、それも一瞬のこと。
すぐにその視界から私の存在を外されてしまった。
「……では、我々も控え室の方へ。皆様、また後ほど」
そう言うと、姉様は代表者を引き連れ私たちの横を通り過ぎて行った。
「(ベリル、大丈夫。君は一人じゃない)」
「!」
ルデンを見ると、大丈夫だと私を安心させるように微笑んでいた。
「(ベリルさん、これからは私たちも一緒です)」
「(リルちゃん、大丈夫だよ。オレらが味方だから)」
「(ベリル、お前ならもう平気だ。もう過去に囚われる必要はない)」
「(ベリルの隣には俺らがいる、安心しろ)」
ルデンも、レドも、セシアンも、ラルドも、シェナも────みんなが、背中を押してくれた。
「────ええ」
スゥ、と呼吸を整える。
「────スピネル姉様」
私は凛とした声で、魔術学園の集団の背に名を投げた。
それに対し、真っ先に反応したのは姉様以外の代表者たちだった。
「今、スピネル姉様って……」
「……え? スピネル様に、妹様が?」
「妹様も代表者なんですの……?」
他の代表学生はどよめきながら振り返る。
しかし姉様だけは振り返ることなく、けれどその場に立ち止まった。
「お久しぶりです、スピネル姉様」
「…………」
「姉様、私は────」
「私に───」
姉様は私の言葉を遮るように言葉を重ねた。
「私に、妹はおりません」
「……っ」
「……私が貴女の姉だったあの日々は、遠い昔のことです。今はただ、互いの学園の代表者として、務めを果たすだけ」
姉が今、どんな顔で話しているのか───私には分からない。
彼女は再び、足を進めた。
「……」
「……ベリル」
私の名を呼ぶルデンの声は、私よりも落ち込んでいるようだった。
「平気。言葉を交わしてくれただけで良いわ。それにもう、言葉は不要。この先は演術で、全てをぶつけるから!」
「───うん、そうだね!」
ルデンは眉を下げ、優しい表情で微笑んだ。
「おう、その意気だ!」
シェナにバシッと背を叩かれ、背筋が伸びる。
「もう……」と言いながら、その励ましに感謝し微笑むと、ラルドが口元に弧を描いた。
「ふ、良い表情になったな」
「ええ、ベリルさんは一層美しくなられましたね」
そんなことをレドに言われ、少し照れてしまう。
「うんうんっ! 頑張ろー! てことで、第一陣行ってきまーす!」
拳を高く掲げたセシアンに、思わず笑みがこぼれる。
「ええ! 応援しているわね!」
皆、力強く頷き彼を送り出した。
────ついに、魔導学園と魔術学園による、演術対抗戦が始まった。




