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RoughJewel ──ラフジュエル──  作者: norn
第四章 〜過去〜

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ルールと種目

 


 ───────────────────


 交流祭の開催が近づき、演術内容の詳細が発表された。

 時計塔に足を運んでくれたゲルド理事長が、自らその説明を行ってくれた。


「今回の演術は、全部で三種目。一試合目は互いの学園の代表者から、さらに一名選び、それぞれ魔法、魔術の美しさを競ってもらう。二試合目はチーム戦。宝石を模した結晶を相手チームに砕かれないよう守る防衛戦だ。攻撃部隊と防衛部隊に別れ戦うのがよさそうだね。そして最後、三試合目は対人戦。言わば模擬戦闘というやつだ。相手を気絶、または降参宣言をさせたら勝利となる。もちろんこれはあくまで演術。死闘ではないからそこはくれぐれも履き違えないでほしい。理解しているとは思うけれど、殺傷はなしだ、いいね? ……まぁとはいえ、毎年軽い負傷者は出るから……三試合目が一番の難関になるだろうね。以上が全三種目。あぁそれと、公平を期すため、勝敗は王宮魔導師が審査するよ」


「妥当だな」


「教授陣だと自分の学園に票を入れたいもんね」


 ゲルド理事長は「その通り」と頷いた。

 一通り話し終えた理事長に、今度はルデンが質問を投げかけた。


「一試合目は代表者一人という事でしたが、二試合目と三試合目の出場人数には規定はあるのですか?」


「二試合目のチーム戦は両者全員出場だね。つまり6対6で戦ってもらうよ。三試合目の出場人数は一人から三人ということになっているが、まぁ3対3になるだろうね」


「なんで三試合目だけそんな曖昧な規定なんだ?」


 そんなシェナの疑問に答えたのは、理事長ではなくレドだった。


「三試合目は怪我を伴う可能性がありますから、強制はできないということでしょうね。それでも一人は必ず犠牲となりますが」


「ああ、私も三試合目に関しては強制はしないよ。棄権しても構わない」


「そんなこと言って、あんたさっきあたりまえのように3対3になるって言ってなかったか?」


「ははは、そうだね。だって君たちは棄権なんてしないだろう?」


「……しねぇけど。その顔なんか腹立つな」


「誰がどの試合に出るか、どの役割を担うかなどは君たちに一任するよ。交流祭までに決めておいてくれ」


「よろしいのですか?」


 意外そうにルデンが返すと、理事長は楽しそうに笑った。


「もちろん。正直最終的な勝敗はどちらでもいいんだ。この交流祭の目的は学生たちが切磋琢磨する姿を見ることにあるからね。それは私たち教える側の楽しみでもあるし、他の多くの学生たちには良き刺激となるだろう。まずは君たち自身が楽しんでくれたら、私はそれで構わないよ。四年に一度の機会だ、悔いのないようにね」


 そう言うと、ゲルド理事長は「それじゃあ、あとは若者に任せるとするかな」なんて年長者のセリフを残し、気分が良さそうに去っていった。


 時計塔の扉が閉まってすぐ、セシアンが呟いた。


「理事長はああ言ったけど、せっかくなら勝ちたいよなー」


「無論、出るからには妥協はしない。王宮魔導師の前で失態は晒せないだろう」


 ラルドの言葉にセシアンは同意したけれど、シェナは「王宮魔導師になど興味が無い」と言わんばかりに自分の尻尾をつまらなそうに揺らした。


「あー、確か交流祭の演術者はお偉いさんにアピールする機会なんだっけか? けど俺ら、ダイヤ生になった時点で学園卒業したら王宮魔導師の資格貰えんだろ? 別に気にしなくていいんじゃねぇの?」


「それはあくまで任期を終えたらの話だ。もしも散々な結果を残したら、ダイヤ生の資格すら剥奪されかねないだろう」


(それは……確かに)


 ラルドの言い分ももっともだ。

 結果次第では最悪、ダイヤ生の任を解かれてしまう可能性だって十分にある。

 そうしたら、このメンバーで過ごす時間は確実に減ってしまうだろう。

 そんなことを想像して肩を落とした私に対して、ルデンは安心させるように微笑んだ。


「でも僕たちならきっと大丈夫だよ。ギルドの依頼を通して魔物と戦うことも多かったし、確実に力はついているはずだからね」


「そうですね。竜種討伐よりは楽な仕事でしょう」


「あー……あれな」


 皆、旧魔術邸の一件を思い出して苦笑いを浮かべた。


「分かるわ〜。アレが最初にして最大の敵だったよねぇ」


「確かに、竜種と比べたらただの人間を相手にした方が楽ではあるな。それで、肝心の振り分けはどうする」


「一試合目と三試合目のメンバー決めと、二試合目の前衛後衛も決めなければなりませんね」


「対人戦だとやっぱりシェナは入れたいよな」


「そうだね……任せていいかい?」


「あぁ、任せろ!」


「あとは……その流れで言うと───」


 ルデンがレドに視線を移す。

 レドはルデンが次に言うことをすでに理解しているようだった。


「はい、ルデン様。お任せを」


「うん、頼んだよ」


「三試合目、あと一人はどうする? 俺が後衛として出てもいいが」


「それなら、僕が後衛でレドたちを強化するから────」


「あ、ねぇルデン。その席、私に譲ってくれないかしら?」


 ルデンには申し訳ないが、彼の言葉を遮るように割って入る。


「えっ、ベリルが?」


「いや、いくら腕に自信があるっつっても、危険すぎるだろ。無傷で試合を終えるとか、たぶん無理だぞ。相手の実力が分からねぇ以上、今の段階じゃ庇いながら戦えるか分からねぇ」


「たぶん、姉様───スピネル・エーデルシュタインは三試合目も出場してくるわ。長く顔を合わせていないとはいえ、姉の性格は分かってる。それに実力も。姉の相手は、私がしたい」


「ベリル…………」


 シェナの心配は有難く受け取るけれど、今回は何を言われても譲れない。


「お前の実力を疑うつもりはないが、やれるのか?」


「ええ、戦力的なことを心配しているのだったら、そこは問題ないわ。任せて」


「……!」


 ラルドの疑問にも揺るぎのない態度で答えると、彼は驚いたように軽く目を見開いた。


「ははっ、色々吹っ切れたっつー顔してんな!」


「ふふ、みんなのおかげでね」


「さっきはああ言ったが、心配いらなかったみたいだな! けどいざとなったら俺とレドでカバーに入る。それでいいか?」


「ええ、よろしく」


 レドも口元に弧を描き、頼もしく頷いた。

 私の様子にルデンも観念したようで、仕方ないとため息をついた。


「……分かった、君の意見を尊重する。けど! くれぐれも防御魔法は重ねがけしておいてね?」


「分かったわ」


「それじゃあ三試合目はベリル、シェナ、レドの3人で。一試合目はどうしようか? 確か魔法の美しさを競うんだったね」


「あ、じゃあオレ出るわ〜!」


 セシアンがヒラヒラと緩く手を振りながら名乗りを上げた。


「本当かい? 助かるよ! 僕たちの中で一番魅せる魔法が得意なのはセシアンだからね」


「あー、まぁそれもあるんだけど。ふっふっふ、審査員に女の子がいたらオレの魔眼(チャーム)が効くだろうし?」


 セシアンは不敵な笑みを浮かべると、悪戯っぽくペロッと舌を出した。


「え……? セシアン、魔眼持ちだったのかい!?」


「それも……魅了(チャーム)、ですか」


「あれ、言ってなかったっけ? そーそー、オレ魔眼持ちなんだわー。オレのは相手を操れるほど強いもんじゃねーけど、動揺させるくらいの効果はあると思うよ〜。女の子限定だけど」


「ふはっ、最初から正攻法で戦う気ないのかよ! ずるくねぇか?」


「魔眼だって立派な能力の一つっしょ! 問題なしなし!」


「それ、相手と審査員に女がいなかったら破綻するぞ」


「その時はその時!」


 ジト目を送るラルドを華麗にスルーしたセシアンに、ラルドはやれやれと呆れ顔で言う。


「はぁ……相変わらず無鉄砲な奴だ」


 ルデンも内心複雑な気持ちを抱えながらではあるが、セシアンをフォローした。


「ま、まぁ、セシアンの言う通り、魔眼も個人の能力の一つだし、魔眼持ちが出場してはいけないという規定はないから……」


「そうですね。使える武器は使っていきましょう」


「じゃあ、一試合目はセシアンで。二試合目は防衛戦ってことだけど───」


 ラルドが意見を述べたいと挙手をした。


「それなんだが、相手学園の代表者の名を見るに、六人中四人が比較的防衛向きの魔術師だ。防衛戦という名の通り、相手は守りを強固にしてくると仮定していい」


「分かった、その上で作戦を練ろう」


「はい。ラルドさんの見立てですと、相手の前衛は二名、後衛は四名、ということになりますが……そうなると、こちらの前衛は二名以上選出した方がいいかもしれませんね」


「ああ。二人以下で四人が造る壁を突破するのは至難の業。もし突破できても、突破までに相当時間が取られるだろう。消耗戦に持ち込まれた場合、どちらもジリ貧になる」


「だったら、初手から最大火力で殴り込みに行った方がいいって話だな!」


「そうだ。俺は遠距離での支援に特化している。そのため、前衛の頭数に入れてもらって構わない。後衛で防衛しながら攻撃の支援をしよう」


「おー! いいね! そーなると、オレも前衛に上がろうかな。後ろにいてもすることないし」


「その場合僕も前衛だね。対象者が近くにいないと、僕の強化魔法が入らないからね」


「それじゃあ、私はラルドと一緒に後衛ね。防衛に専念するわ」


 よろしく、とラルドを見ると、彼は頷きながら「頼む」と返した。

 二試合目の配置は、前衛がルデン、レド、セシアン、シェナ、そして必要に応じてラルドが支援をするとのこと。

 後衛での防衛は、ラルドと私ということになったが、ラルドが前衛の支援をしている間は、主に私が防衛の主軸となるだろう。

 皆の奮闘を無駄にしないためにも、防衛に専念しなければ。


 一通りの話し合いを済ませた私たちは、レドの入れてくれた紅茶を飲みながら一息つく。


「よーし! これで一応振り分けは終わったよね! あ〜楽しみだなぁ、交流祭!」


「そうだね。勝っても負けても悔いがないよう戦おう! ゲルド理事長が言っていたように、まずは僕たちが楽しまないとね!」


「ええ、そうね」


(姉様と面と向かって顔を合わせるのも……何年ぶりかしら)


 まだ少し、不安はあるけれど。

 でも、きっと大丈夫。

 だって─────



(こんなに心強い、仲間がいるんだもの)



 ───────────────────




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