引き留めてくれたのは 【シェナ√】
ふいに、シェナに肩を引き寄せられた。
彼の腕が背中に回り、そこでようやく、自分が抱きしめられていることに気が付いた。
彼の胸に当たった頬から、体温と鼓動を感じる。
「シェ…ナ……?」
溢れ出る涙が彼の服を濡らしてしまう。
離れなくてはいけないのに、突き放すことなんて到底できはしなかった。
「俺は別に、あんたが平凡だから一緒にいるんじゃねぇ。あんたが、あんただから、人間だろうと獣人だろうと関係ねぇと思えてんだ。あんたは俺が獣人だから一緒にいんのか?」
それは違う! と首を振ると、彼は満足そうに笑った。
「だろ? あんたが何者でも関係ねぇ。人間だろうと魔族だろうと、魔物だろうとな! 俺はあんただから信じてもいいと思えたんだ。だから俺は、最期までベリルという人間を、魂を信じる。他の誰にも、お前を否定させない。もしそんな奴がいるのなら、俺が噛み殺してやる。……だから安心して、お前が背負ってるもの、全部吐き出せよ。全部、俺が受け止めてやるから」
「……っ」
(シェナは……私を信じてくれてる……)
「……ふふ、シェナに言いたいことを全部持っていかれてしまったね」
「フッ、まったくだな」
「つーか何しれっと抱きしめてくれちゃってんの? 返してオレのリルちゃん!!」
「別にテメェのじゃねぇだろ」
そう言いながらも、彼の腕の中からふわりと解放された。
「ふふ、ですがおかげでベリルさんの涙は止まりましたね」
言われて気づいた。
さっきまで溢れていた涙が止まっている。
「シェナに全部言われてしまったけれど、僕たちも同じように君を想っているよ。だから───君が抱えているものを、僕たちにも分けてくれないかな?」




