引き留めてくれたのは 【セシアン√】
ふいに、セシアンに肩を引き寄せられた。
彼の腕が背中に回り、そこでようやく、自分が抱きしめられていることに気が付いた。
彼の胸に当たった頬から、体温と鼓動を感じる。
「セ、シ…アン……?」
溢れ出る涙が彼の服を濡らしてしまう。
離れなくてはいけないのに、突き放すことなんて到底できはしなかった。
「……オレにはさ、リルちゃんがなんで泣いてるのかも、なんで平凡でありたいのかも、よく分からない。でもさ、何も知らなくても、これだけは言えるよ。リルちゃんがこんな風に泣いて、我慢して、傷付いて────その先に得られる平凡って一体なんなんだろ、って。そんな平凡なんか捨てちゃえよ、って」
「そ、れは……っ」
「うん、何も知らないから言えることだよね。それも分かってるよ。でもさ、だったらオレにも教えてよ。キミが抱えてるものを。なんでキミが、平凡に囚われているのかを。───じゃないと、オレも一緒に背負えないじゃん?」
「え────」
見上げると、そこにはセシアンの笑顔があった。
「……ふふ、セシアンに言いたいことを全部持っていかれてしまったね」
「……貴様と同意見になるとはな。というかいつまで引っ付いているつもりだ。いい加減離れろ」
「えー」
彼の腕の中からふわりと解放された。
「ふふ、まぁまぁ、いいではありませんか。彼女の涙を止めてくださったわけですし」
言われて気づいた。
さっきまで溢れていた涙が止まっている。
「だな。珍しくいい働きすんじゃねぇかお前」
「珍しくは余計じゃない?」
「セシアンに全部言われてしまったけれど、僕たちも同じように君を想っているよ。だから───君が抱えているものを、僕たちにも分けてくれないかな?」




