本音
※次回エピソードで〝シナリオ〟の分岐があります。
会話の内容が変化するため、目次から
〝一番好感度の高いキャラクター〟
のシナリオ(エピソード)に飛んでください。
───────────────────
───子供の頃から、私は魔法を使うことが得意だった。
大人をも凌駕するこの力は皆から疎まれ、次第に私は独りになっていった。
あの時から、私の時間は止まったまま。
認めてもらいたい。
受け入れてもらいたい。
そんな思いを抱えたまま、私は己の魔力を封じ込め、平凡であることを選び続けている。
(平凡って、普通って、なんなのだろう……)
意識が夢の中から現実に引っ張り上げられる。
視界に入った時計の針は、すでに夕方を指していた。
少しの仮眠で済ませるはずが、最近よく眠れていなかったせいもあって、寝すぎてしまったらしい。
今日はダイヤ生の活動は無い日なので、ここを使わせてもらったのだが……。
ぼんやりとした意識のまま辺りに目をやると、そこにはいるはずのない人物の輪郭が、徐々にクリアになっていく。
「……ん? あ、みんなー、リルちゃん起きたみたい」
「…………セシアン?」
(どうして彼がここに……? それに、みんなって───)
「おはよう、ベリル。よく眠れた?」
「おは、よう……? ……あれ、なぜ私、ソファーで寝て……? 机に突っ伏して寝てしまったような……」
「悪ぃな、俺がソファーまで運んだ。あんなとこじゃ気持ちよく寝てられねぇだろ。そんで、ついでに言うとそのブランケットはラルドがかけた」
「え……あ、本当だわ。どおりで暖かいと……」
「……ふん。風邪でも引かれたら面倒だからな」
「そこは面倒、じゃなくて心配、でしょ。素直じゃないんだから」
「ベリルさんのご友人に、貴女はここにいらっしゃるとお聞きしまして」
(友人……ってアッシュ、よね? でもアッシュと別れたのは昼のことだから……)
「もしかして……私が起きるまで待っていてくれたの……?」
だとしたら何時間、彼らを待たせてしまったのか。
「最近眠れてないって聞いたよ。……ああ、本当だ、まだ顔色が良くないな……」
ルデンは優しく私の頬を撫でた。
「ごめんね……君をここまで追い詰めてしまって……。こんなことなら、初めから君を囲ってしまえばよかった。そうしたら、君が危ない目に合うこともなかったかもしれない……」
ルデンは苦しそうに顔を歪めた。
「貴方がそんな表情をする必要はないのに……。もしかしてみんなも、私が階段から───って話を聞いて探しに来てくれたの? 心配かけてしまってごめんなさい。でもこの通り、私は元気だから」
「そんな顔で言われても、説得力の欠片もない」
「そうだよ〜。例え身体は大丈夫でも、心が大丈夫じゃないでしょ。リルちゃんはもっとオレたちを頼っていいんだよ? ていうか頼ってよ! 寂しいじゃん」
「セシアンさんの言う通りですよ。私たちに遠慮など必要ないのですから」
「あぁ、あんたは俺らの中心で、笑っててくれりゃそれでいい」
照れ隠しなのか、シェナは少し乱暴にわしゃわしゃと私の頭を撫でた。
(……やめて、これ以上、優しくされたら……手を伸ばしてくれたら……)
私はまた、期待してしまう。
その手を取りたいと願ってしまう。
「みんな、ベリルのことが大好きなんだ。だから────」
最後のルデンの言葉で、私の中で張り詰めていた糸が、プツリと切れた。
堪えていた涙が頬を伝う。
泣きたくなんてないのに、その意思を無視して涙がこぼれ落ちて止まらない。
「べ、ベリル……!?」
「ど、どうしたの!? な、泣かないでリルちゃん。あ!? やっぱどっか痛くした!?」
「ちが、う……違うわ……。もう……期待したくないの。裏切られたくないの! 貴方たちは優しいから───何も知らないから……! 私を好きでいてくれる。でも───本当の私を知ったら……貴方たちも、きっと離れて行ってしまう! 私は……貴方たちに嫌われたくない……貴方たちを騙すことが苦しくても、痛くても、拒絶されるよりずっといい……!」
涙を滲ませて俯く私の背を、誰かが優しくさすってくれている。
───思えば、ずっとそうだった。こんな風に優しくされるたび、彼らを騙している罪悪感が私を苛み、そのたびに心を殺した。平凡な自分を偽った。
「ずっと、努力してきたの……普通になろうって、平凡でいようって! そうすれば……私を化け物だと言う人はいなくなるから……!」
(あんな思いをまた味わうくらいなら……いっそ、彼らを突き放してしまった方が───)
そんな考えが頭をよぎった瞬間───




