作戦会議
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「─────と、いうのがこの本に書かれた煮込み料理のレシピね」
私はレドから借りた料理本を手に、ルデンたちに情報共有をした。
「そしてこちらがマグマ生成機と思われる魔術道具です」
「「「「…………」」」」
レドが地下から運び出してきた魔術道具を、机の真ん中に置く。
その魔術道具は金属製のティーポットのような形をしていて、丸みを帯びた表面に赤い宝石がいくつかはめ込まれている。
「ええと。その本は本当に料理本なのかな?」
「堅牢の白鯨とはどんな生物なんだ……」
「へぇ、美味そうだな」
「嘘でしょ? 今の話で美味そうに感じる要素あった!? つーか美味そうな料理一個もないねこの本!?」
ルデンたちは各々感想を述べながら、まじまじと魔術道具を観察している。
「まさかこの魔術道具がマグマを作り出す物だったなんて……」
「正確にはマグマに類似する液体が生成されるようなのですが、効果としては厚い装甲を持った魔物の甲羅や鱗などを溶かすことができるようです」
「マグマに浸けないと溶けない装甲を持った魔物がいる事実に驚きだわ……。竜種にだってマグマはオーバーキルでしょー」
「だがこれなら蝕竜の死体を残さずに処理できるな。問題はどう奴にその液体をかけるかだが……」
「かけるのはリスクが高すぎますね。暴れもするでしょうし、そこそこ大きいこの魔術道具を持ち運びながら蝕竜の攻撃を避けるのは難しいと思います」
レドの意見を聞いたルデンは、ふむ……と口元に手をやり考える素振りを見せた。
「レシピには大きな鍋を用意すると書いてあるけど、現状蝕竜が入るだけの大きな鍋はないし、あっても鍋がマグマの熱に耐えられない」
「この本の著者は一体どんな調理器具を使ってその白鯨というのを調理したんだ」
「調理器具もだけど、そもそも食材がぶっ飛びすぎでしょ。誰に向けた料理本なのホント。こんなの歴戦のハンターになってやっとスタートラインじゃん」
「鍋の代わりか……。あーじゃあ地面に深い穴を掘るのはどうだ? あの竜種、陸移動で生活してるだろ? だから……そうだな、奴の行動範囲的に、あの湖までの道がいいな。そこにマグマ入り落とし穴でも仕掛けておけばいいんじゃねぇか?」
「落とし穴か。原始的だが今回はそれが一番最適かもしれないな」
「僕も賛成だ。……ぶっつけ本番にはなってしまうけれどね。レド、この魔術道具の使い方はその本に載っているのかい?」
「はい。魔術道具と呼ばれるだけあって、起動には魔法陣が必要です。加えて特殊な魔術詠唱をしないと陣が起動しないようなので、残り数日でそれをマスターしなければなりません」
「うげぇ、これまた随分複雑な詠唱式だこと〜。最低でも明日明後日はみんなで勉強会になるねぇ……」
そうね、と私も頷く。
「詠唱式は分担しても一人三つ以上覚えることになると思うわ。あとでその分担も決めましょう」
「……」
「? なにかしら、ラルド」
「(俺やルデン、レド、そして一応セシアンも、学園内での成績的に恐らく問題ないだろう。だが、こいつは……)」
「?」
じっと見つめてどうしたのか、と首を傾げてみるが、ラルドは「……いや、何でもない」と呟いた後、視線を逸らした。
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「………ふわぁ、ねみぃ」
小さなシェナが、大きなあくびをしながら身体を伸ばす。
「あぁ、もうこんな時間か。明日から忙しくなるし、明日に備えて今日はもう休もうか」
時計を確認したラルドも「ああ」と返事をした。
「だね〜。あーレド、ティーカップ片付けるの手伝うよー」
「ありがとうございます」
「我ラ主ノ部屋ニ居ル。モウ隠レルノ止メタ、用事アッタラ呼ベ!」
「あいよー。あれ、リルちゃんはまだ寝ない感じ?」
「私も、本を片付けたら部屋に戻るわ。電気は私が消すから」
「僕も手伝おうか?」
「ありがとう。でも大丈夫よ、すぐ済むから」
「分かった、それじゃあ僕らは先に休むね。おやすみベリル」
「おやすみなさい、ベリルさん」
「……お疲れ」
「あんたも早く休めよ」
「おっやすみー、また明日ね!」
「ええ、おやすみなさい」
みんなの話し声が遠ざかっていく。
静かになった談話室は、普段より広く感じた。
(……おやすみ、か。彼らとおやすみの挨拶を交わす日が来るなんて、思いもしなかったわ)
この屋敷に閉じ込められていなかったら、彼らとこんな関係になることはなかっただろう。
(こうして、彼らと生活を共にするのも残り僅かなのね。それを残念に思うのは……さすがに不謹慎かしら。まだ、無事に脱出できるかもわからないのだし。……それにしても、彼らとの生活を名残惜しく思うだなんて、自分でも驚くし不思議な気分。初めはどうでもいいと思っていたのにね)
私の平凡に、彼らは不要な存在で。
……初めは邪魔だとすら感じていたのに。
それに関して罪悪感を覚えるくらいには、彼らと関わりを持ってしまった。
……彼らは、本当の私を知ったら、一体どう思うのだろうか────。




