声の正体
「……それって、スコーンを盗み食いした犯人が、この部屋にいるということじゃないの? 森での時みたいに透明化して」
「可能性大!! つーことでシェナさん頼んだ!」
「任せろ」
シェナはクンクンと鼻を使い部屋を歩き回る。
「スコーンの匂いが強いのは……ちょうどベリルの後ろ辺りか?」
「私の後ろ? この辺かしら」
えいっ、と試しに空を手で切ってみる。
「フギャッ」
「あ」
ただ空気を切るだけのはずが、私の手にはグニャリと柔らかい感触があった。
ポヨンポヨンと、私が叩き落とした何かが床をバウンドする。
(なにかしら……紫の……コウモリ?)
「ナイスヒット」
「よく当てたな……」
私の手がクリティカルヒットしたからなのか、透明化が解けたようで全員視認できるようになった。
床で悶えるコウモリの隣から、ヌッと緑色の謎の生物も姿を現す。
(あ、もう1匹いたのね)
「え、何この3分クオリティコウモリと……ホントに何!? 緑のも増えたんだけど!」
「何ヲスル小娘ッ! 痛イ! 」
「ベリルさん、手は大丈夫ですか? 今消毒の魔法を……」
「失礼ナ! 黒イノ、我ヲ心配スル! 我ラ綺麗! 消毒イラナイ!」
「はい、念の為拘束させてもらうよ」
「何ヲスル黄色イノー! ハーナーセー」
コウモリの方はジタバタと暴れていたが、緑色の生物は大人しくしている。
「それで? 君たちは何者なんだい?」
「よくも俺らを閉じ込めてくれたな。クソ雑魚じゃねぇか」
「雑魚違ウ! 我ラ主ノ使イ魔!」
そう言いながら、紫のコウモリ(?)は自信満々に胸を張って見せた。
緑の謎生物も、それを真似るように動いた。
そして再び、紫のコウモリが声を上げた。
「我ラノ主、魂残ッタママ! 我ラ、主ノ最後ノ願イ、叶エル! 我ラ契約、残ッタママ!」
緑の謎生物が、同意するようにコクリと頷く。
「主言ッタ、謎ヲ解クマデ死ネナイ。主言ッタ、魔法使エル奴優秀! ダカラ屋敷入ッタ魔法使イ、森ヲ救ウ!」
再び、緑がコクリと頷いた。
「それで、私たちをこの空間に飛ばしたの?」
「ソウ! 此処ハ主ノ残シタ時空ノ狭間。主、此処創ッテ肉体捨テタ。主言ッタ、正シイ歴史知ラセタイ。主言ッタ、過去ハ変エラレナイ。デモ、森救ワレタ並行世界ナラ創レル! ダカラ人間捕エル!」
「我らより前に捕らえた人間はどうしたのです?」
「前ニ来タ人間、スグ死ンダ、失敗。1回目ト2回目、我ラノ姿見テ攻撃シテキタ、失敗。ダカラ3回目カラ、ズット我ラ隠レテタ。ケド今見ツカッター。小娘見事ナリー」
「え……あぁ、うん」
「デモ我叩イタコト許サナイ! 痛カッタ!」
「それは……ごめんなさいだけど。でも私たちをこの時空に閉じ込めてたのは貴方たちなのでしょう? あと数日でこの空間ごと消滅して死ぬかもしれないっていう危険な目に合わされているんだから……お互い様じゃない……?」
お互い様というか、私たちの方が割に合わない目に合っている。
「ム、ソレモソウ。我小娘許スー」
(……なんだろう、この滲み出るアホ感。この子たち、あまり知能が高くないタイプの魔物なのかしら)
「アト、空間消滅シテモ死ナナイ」
「えっ、そうなの?」
「15日経ッタラ元ノ世界戻レル……ハズダッタ。主悪気ナイ。主ノ魔術、不完全ダッタダケ。空間消滅シテモ、魔術ガ解ケレバ、消滅シタ人間モ戻ッテクル。主、人間殺スツモリ無イ」
「つまり僕たちがこの件を解決したら、前に囚われた人たちも元の世界に帰れるんだね!?」
「ソウ! ダカラ安心スル!」
「安心できるわけがないだろう。言い換えれば、俺たちが失敗したら他の奴ら同様、消えた時空の中で救われるかも分からない希望に縋るしかなくなるということだろう! 実際何人もの人間が謎を解けずに消滅した。次にくる人間があっさり謎を解けるとは思えない」
「ソウ。ケド、オ前タチ優秀。一番謎ニ近付イタ。モウ、何ヲスベキカ、分カッテル」
「まぁ、ラルドの心配もごもっともだけど、オレらが失敗しなきゃいいって話だよな」
「貴様は何故そう楽観的でいられるんだ」
「そりゃ〜ラルドのこと信頼してるし? もちろんみんなのことも」
「………………」
「あれ〜? ラルドくん照れてる〜?」
「〜〜〜っ!!!」
「こいつ、いつも一言余計なんだよな。丸く収まりそうだったのに」
「はは、まぁ、こういう風に言い合える仲なのはいいことだけれどね。二人とも、まだ話は終わっていないからね。ラルドも一旦落ち着いて」
「…………………………」
「あ、そーだ。なぁコウモリよ、なんでオレらに日記付けさせようとしてたの?」
「主言ッタ、一人ガ駄目デモ、後ノ人間ニ残ス物ガアレバ、謎ヲ解ク手助ケニナルッテ。ダカラ日記付ケサセタ。主モ日記ヨク書イテタカラ、真似シタ」
「なるほどね〜」
ラルドは「たいして役に立たなかったけどな」と言わんばかりの視線をコウモリに送っていたが、その意図に気づかないコウモリたちは満足そうに胸を張っている。
「空間が消滅しても、あなた方は消えないのですね」
「平気ー。我ラ自由ニ時空渡レルー」
「その能力をオレらにも使ってくれたら話は早いんだけどねー。何にせよ、こっから出るにはあの竜を何とかしないといけないっつーことねぇ」




