村調査
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セシアン、シェナと共に森を歩くこと30分。
ふと、セシアンが足を止めた。
「そういえばさー、オレらより前に屋敷に来たヤツらはなんでみんな日記つけてたんだろーね? フツー日記なんて持ち歩かなくねー?」
「確かに……」
よく考えてみればその通りだ。
全員が日記をつけていたことも疑問だが、皆が偶然日記を携帯していたなんて都合がよすぎる。
「ハッ! 忘レタ! 忘レタ! 日記渡スノ忘レタ!」
「なーんだ、忘れちゃったのかぁ! なら仕方な────」
「「「…………」」」
パチクリ、と瞬きを数回繰り返す。
この場にいる全員が動きを止めた。
「あのさ……今誰か会話に入ってこなかった???」
頭にハテナがたくさん飛んでいても、その〝声〟はお構い無しに言葉を続けた。
「日記ツケロ、言ウノ忘レタ! 日記、渡スノ忘レチャッタ! 屋敷ニ日記、置イテコナキャ」
私たちの他には誰もいないはずなのに、近くの草木がガサッと揺れる。
茂みから透明な何かが飛び出し、同時に謎の声も聞こえなくなった。
「今の……私たちを捕らえた犯人の声よね?」
「チッ! 透明化してやがったのか!!」
「匂いで追える感じ?」
「わりぃ、屋敷の匂いと同化してて特定できねぇ」
「仕方ないわ。あの声の主、私たちをずっと監視していたのね……。あの声の内容からするに屋敷に戻ったようだけれど、私たちはどうする? 一度戻る?」
「いや、屋敷に戻ってまた往復するってなると時間がかかり過ぎる」
「そうだねー、まぁルデンたちなら大丈夫っしょ。気になるところだけど、もうすぐ村に着くし進もーか」
「ええ、分かったわ」
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「で、無事村に到着したわけだけど……」
村の入口、簡素な作りのアーチを目前に、セシアンが村の中の様子を伺う。
「このまま正面から入るのか?」
「まー、見た感じ安全そうだから大丈夫だとは思うけど……」
「シェナ、人間の匂いはする?」
私が尋ねると、シェナはすぐにクンクンと鼻を使ってくれた。
「あぁ、するな。村人はいる」
アーチをくぐり少し歩くと、目視でも人の姿が確認できた。
「あ、ほんとだ。手前の家のあのお爺さんに話聞いてみよっか」
「そうね」
「すみませーん、お爺さん、今少しいいですかー?」
「あんだってぇ?」
「お爺さーーん!!! 今!! 少しお話、いいですかーーー!!!!」
「ふぉっふぉっ若いのは元気がいいのぅ。おぉ、こっちのお嬢さんはべっぴんさんじゃのー」
「えっ、あ、ありがとう……」
「スーーーっお爺さーーん!!!」
「うるさいのぅ、聞こえておるわい」
「聞こえてんのかよ!!」
「ど、どうどう……」
「お主ら魔術師のバーベナ様んとこのお弟子さんかのぅ? せっかく来てくださったところ悪いんじゃが、村には入らん方がええぞい」
(弟子? 私たちを誰かと勘違いしているのかしら?)
「村に何かあったのか?」
「村になぁ、病が流行っとるんじゃ。隣村は全滅しとる。ここらはまだ無事じゃが、隣村の支援に行っていた家の連中にも先日同じ症状が出ての。この村も時期に隣村と同じことが起こるじゃろう。ワシはもう身寄りのない老いぼれじゃからええが、お主らは未来ある若者じゃ。病なんてもらうもんじゃあないぞ」
「その流行病はいつ頃からなのですか?」
「そうじゃのぅ、森に大トカゲが放たれた日から、森がおかしくなっていったんじゃ。隣村の方の草木は枯れてしまうし……思えばそれからかもしれんな」
「大トカゲ……それが例の怪物か?」
「それに……草木が枯れる?」
「爺さん、今大トカゲが放たれたって言ったじゃん? それって誰かが意図的にやったって意味?」
「そうじゃ、領主のカルミア家の娘さんがたいそう虫嫌いなそうでな。その大トカゲは虫を餌にするらしくての。領主様が森の虫を駆逐するために奴を放ったんじゃ。今や森の虫を喰らい尽くしてさらに身体が大きくなっとる」
「けど虫なんてちっこいの、量食ってもたかが知れてるじゃん? 大トカゲなんて言われてるけど、人間も襲われてるとか?」
「いんや襲わぬな。それが唯一の救いじゃ。あんなのに襲われたら村は一瞬で壊滅するのぅ。気になるのなら見に行ってみるといい。この地図をお主らにやろう。ここが今おる村、このバツ印が奴の今の根城じゃ」
「お、ありがとー、爺さん!」
「じゃがくれぐれも奴をどうにかしようとは考えるでないぞ。ありゃ人がどうにかできるもんじゃないからの。あんたらのとこの魔術師様でもあの大トカゲにゃ敵わんだろーさ。それと、隣村の方には行くでないぞ。まぁ、そこまでの道はもう生き物の死骸だらけじゃから、近寄らんと思うが」
生き物の死骸だらけ……?
「そう……分かったわ、情報ありがとうお爺さん」
「ふぉっふぉっ、いいんじゃいいんじゃ、気をつけてなぁ」
そう言って、老人は村の中へと姿を消した。
「あの爺さん、ボケてねぇといいけどな」
「信憑性がねー。まぁ受け答えしっかりできてたし、信じましょうかねぇ。で、どうする? 情報は手に入ったけど」
「お爺さんが言ってた大トカゲの居場所って、ここから遠い?」
「いや、そんなには離れてねぇな。見に行っても夜には屋敷に帰れる距離だ」
「なら姿だけでも確認しに行きましょうか。お昼ご飯を逃すことになるけれど……」
『(うわ、かわいっ。めっちゃしょんぼりしてる〜!)』
「?」
「リルちゃんがお願いしたら、レドならまた作ってくれるよ♪」
「なら、見に行くってことでいいな。セシアン、身体強化はできるか?」
「できるよー。スピードはシェナとレドには劣ると思うけどね」
「いい、お前に合わせる。日暮れまでに戻らねぇと、オレが戦闘面で役に立てなくなるから少し急ぐぞ」
「あーそっか、縮むんだもんな。りょーかい」
「あの、シェナ? 私は────ひゃあ!?」
言い終わる前に、ふわりと身体が宙に浮き、シェナの腕に抱き抱えられる。
いわゆるお姫様抱っこという形で。
「くっ、オレも獣人だったらリルちゃん抱っこして走れたのに!!」
「俺の方が速い」
「わーってるよ!! くそっ羨ましい!」
「あの、シェナ……?」
「心配すんな、落とさねぇから」
「いえそういうことじゃなくて───」
「口閉じてろよ、舌噛むから」
「えっ、待っ────〜〜〜〜〜〜〜!?」
シェナは私を抱えたまますごい速さで走り出す。
勢いを殺さず木の上に飛び上がると、そのまま木から木へと飛び移りながら進んでいった。
(凄い、なんて身体能力なの……!?)
セシアンもシェナのスピードにしっかりついて来ている。
「怖いか?」
シェナに問われ、いいえ、と首を振ると、彼は満足そうに口角を上げた。
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