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RoughJewel ──ラフジュエル──  作者: norn
第二章 〜仲間〜

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昨夜の姿について

 


 ひとまず朝食を残さず頂き、食器の片付けを手伝った後、談話室へと場所を移す。

 レドが入れてくれた紅茶を飲んで一息ついたところで、ルデンが口を開いた。


「事情を聞きたいところだけど、本当に話していいのかい? シェナが辛かったら僕たちも無理には聞かないよ」


「いや、もう見られちまってるし隠しても今更だろ。それに、こいつが信じる人間になら話してもいいと判断した」


 そう言って、シェナは私の方を向く。彼と視線が交わった。


「!」


「はーい、アイコンタクト禁止! 何二人でいい感じになってんの! シェナも抜け駆け、駄目、ゼッタイ」


「お前はいちいち口を挟むな。それで? 何が原因なんだ」


 ラルドが問うと、シェナは一呼吸置いた後、改めて覚悟を決めて話し始めた。


「俺は……俺のこの身体は、呪われているんだ」


「呪い?」


 聞き返すとシェナはコクリと頷く。


「あぁ。昔ある魔女に呪いをかけられて……それからは夜になると身体がガキの姿になっちまう。満月の夜は特に呪いが強まって、昨日みたいに熱が出てぶっ倒れるんだ」


(そういえば、昨日は満月だったわね……)


「幼児化できる獣人なんて滅多にいねぇから、俺の呪いを知った人間は貴族の愛玩用に売れると踏んで、何度も捕まえられては奴隷商に売り払われそうになった。その度に逃げ出して、住む場所を変えて。……だからなるべく他人に知られねぇように隠してきたんだ」


「……だから毎回夕方になると部屋に篭っていたのか」


 ラルドは複雑そうに目を伏せた。

 セシアンも納得したと言わんばかりに頷いている。


「そっか……さすがに毎回シンデレラごっこしてたわけじゃなかったか」


「殺すぞ」


「冗談だって! それにしても呪いでちっさくなってたなんてな〜。オレはてっきり、背後から黒ずくめの男に殴られてヤバい薬飲まされたのかと思ったよ〜」


「あぁ、アポトキシン4はち───」


「あーー! あーー! お前(ラルド)まで乗ってきたらつっこむ人間いなくなるでしょーが!!」


 よく分からないが言い合っているセシアンたちは置いておいて、レドも「そうでしたか……」と眉を下げた。


「大変……でしたね。では尚更、そのような大事なことを……我々に話してしまってよろしいのですか?」


「……まぁ、話さざるを得ねぇっていうか、口止めって言った方が正しいな。……頼む、この事は口外しないでくれ。獣人領を出てから散々危ない目に遭ってきたが、ヘリオドールへ来てやっと落ち着ける暮らしができるようになったんだ。これ以上、俺のせいであいつらに……弟や妹に苦労させるわけにはいかねぇんだ……ッ」


(……ああ、シェナにもご兄弟がいるのね)


 顔を歪ませて、頭を下げるシェナを見て、胸が苦しくなる。

 憎んでいるはずの人間に頭を下げるなんて、本当はしたくないでしょうに。

 自分のプライドを捨ててまで、それだけ家族のことが大切で、守りたい存在なのだと分かった。


「シェナ、頭を上げるんだ。僕らにそんなことをする必要はないよ」


 ルデンはシェナが座る長椅子に移動し、大丈夫だと安心させるようにシェナの肩に手を置いた。


「……すまない、君や、君の家族を危険な目に合わせて。獣人の奴隷制が廃止されたとはいえ、まだ王国中を取り締まれているわけではないのが現状だ。君のように王家が見逃している事案がいくつも存在するのだろうね……。ヘリオドール第2王子として、君に謝罪する。すまない」


 そう言うと、ルデンはシェナに頭を下げた。


「……あんたが謝る必要もねぇんだが、まぁ、謝罪は受け取っておく。ありがとな」


「(帰ったら、貴族間の奴隷売買について再度入念に調査すべきだな。シェナのような獣人族がまだ被害にあっている可能性が高い)」


 口には出さないが、ルデンの表情から察するに、すでに今後の対応を考えているのだろう。

 彼に習って、私もシェナに対してできることをしたい。

 まずは───


「私も、口外は絶対にしないと約束するわ」


 私の言葉に、レドとセシアン、ラルドも頷く。


「みんな、貴方の味方よ」


「……あぁ。ありがとな」


 シェナは少し照れくさそうにぎこちない笑みを浮かべた。


「ところで……呪いは魔女がかけたとおっしゃっていましたが、その呪いを解く術はないのですか?」


「今のところ、その魔女自身に呪いを解かせるか、魔女を殺すしか方法はねぇ。……けど、昔のことで魔女の顔も朧気なんだ。唯一覚えているのは、魔女はヘリオドール王立魔導学園の卒業生だってことだけ。だからオレはこの学園に来たんだ」


「何故魔女が学園の卒業生だと?」


「この学園は卒業時全員に魔法使いのローブが渡されるだろ。それを着てたんだよ。紋章もこの学園の物だったから、それは間違いねぇ」


「なるほど」


 ラルドは自身の質問の答えに納得したように頷く。

 ルデンも小さく「そうか……」と呟いた。


「シェナは呪いを解くために学園に通っているんだね」


「あぁ」


「うん、僕も呪いを解く方法がないか調べてみるよ。話してくれてありがとう、シェナ」





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