夢の内容
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───夢を見た。
いや、これは夢というより、屋敷の主の〝記憶〟と言った方が正しい。
豊かだった森が、次第に朽ちていく。
村人や家族が、病で死んでいく。
───許さない。
──────許サナイ。
心に広がるのは、凄まじい憎悪。……そして、後悔。
「貴方は……誰を憎んでいるの……?」
一面真っ白な空間の中、ひとつ、輪郭がぼけた黒い影のような何かに問う。
『お願いだ。全ての元凶を断ってくれ。奴がいなければ、森が枯れることもなかっただろう』
「……奴?」
『ここは、あの時、あの瞬間を再現した空間。このままではまた同じことの繰り返しだ。君たちで、どうか、森を救ってくれ。そうすれば、私の無念は晴らされる。妻と娘と、同じ所へ逝ける』
「森を……救う?」
『私の魔力では15日間を再現するのがやっとだった。この空間は15日しか保てない。あと██日で消滅する』
「消滅? 消滅したらどうなるの!?」
影に近づくと、それはまるで煙のようになり霧散した。
先程からいくら問うても会話が成り立っていないように感じたのは、そもそも影に私の声は届いていなかったのかもしれない。
何にせよ、会話ができるような相手ではないと落胆していると、再び脳内に聞き覚えのある声が響いた。
「「────死シテナオ、憎シミニ囚ワレタ主ヲ、屋敷ニ縛ラレタ主ヲ、ドウカ救ッテ」」
それは先程の影の声とは別の───私たちを屋敷に閉じ込めたであろう者の声。
「待って! 私たちはどうすればいいの!」
当然、その問いの答えはない。
私の言葉は、ただ、白い空間に溶けていく。
『───謎を解け。謎を解くヒントは、全て屋敷の中にある。謎を解き元凶を絶てたのなら、元の時空へ送り届けよう』
再び、影の声がこの白い空間全体に響き渡る。
その言葉を最後に、白い空間はまるで鏡が割れるように砕け散った。
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「……ん」
チュンチュン、という鳥の鳴き声で目を覚ます。
窓からは朝日が射し込んでいた。
(また変な夢を見たわ……。また、森がどうとか、空間がどうとか言っていたわね)
そこまで考えてハッとする。
(夢の内容を覚えているわ……!)
それも、鮮明に。
「…………ル」
(謎を解き元凶を絶てたのなら、元の時空へ送り届けようって……)
「…………リ……ル」
(もしかしなくてもこの夢、屋敷に閉じ込められたことと関係している!?)
「ベリル!!」
「何!?…………あ、シェナ」
(ん? なんでシェナが目の前に……と、そうだ、私昨日シェナの看病をしていて、そのまま寝てしまったんだわ)
床に座ってベッドに突っ伏していたため、身体が痛い。
「『あ、シェナ』じゃねぇだろ、ずっと呼んでんのに」
「ご、ごめんなさい、考え事してて……あら? 今日は大きいシェナなのね?」
目の前の彼は昨夜とは変わって、いつもの見慣れた大きさのシェナだ。
シェナは気まずそうに視線を逸らしたが、今までのような棘のある雰囲気は無くなっていた。
「もう熱は下がった?」
「……ああ。あんた、ずっとここにいてくれたのか」
「あー……いてくれたというか、そのまま寝てしまっただけなの。本当はタオルとか変えてあげなきゃだったのに、ごめんなさい」
「ふっ、素直な奴。……ありがとな、ベリル」
「……………………」
普段の彼では想像もできないくらい毒の抜け切った表情と雰囲気に、改めて目を丸くしてしまう。
素直にお礼を言われたこと、初めて名前で呼ばれたこと。
色々と情報量が多すぎる。そして何より───
「…………なんだよ」
「いえ……貴方も笑えるんだなって……」
「……俺をなんだと思ってんだ」
呆れ顔のシェナも、とても新鮮だ。
ここで、コンコン、とタイミングよく扉がノックされる。
控えめに開かれた扉から、レドが顔を覗かせた。
「お二人共、おはようございます。シェナさん、お身体大丈夫ですか? 水をお持ちしたのですが……」
「…………ああ。……悪い、手間かけさせた」
「………! 」
(ああ、ほら……レドも驚いてる……)
私も今のレドと同じ表情をしてたかと思うと、その様子に少し笑ってしまった。
「……いいえ、礼は彼女に。朝食にスープを作ってみたのですが、食べられそうですか?」
「ああ」
「では後ほどお部屋にお持ちしますね。ベリルさんの朝食もご用意してありますので」
「わかったわ、ありがとうレド。すぐ向かうわね」
「……俺も、下で食べることにする」
「えっ」
これもまた予想外な言葉に、私とレドは思わず顔を見合わせてしまう。
「夜の……あの姿のこと、見られたからには一応話さねぇと」
「!」
(話したくないのかと思ってあえて聞かなかったのだけど、事情を話してくれるのね)
「分かりました。では食堂の方にご用意しますね」
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