表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RoughJewel ──ラフジュエル──  作者: norn
第二章 〜仲間〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/147

子供

 

 ───────────────


 トレイに並べられた夕食を落とさないようにしっかりと持ち、階段を登る。

 セシアンと共にシェナの部屋の前に立ったが、それだけではもちろん中の様子は分からない。

 コンコンと扉をノックしてもシェナからの応答はなかった。


「シェーナさーん、夕食持ってきたぜ〜」


「…………」


 セシアンが扉の前で声を張るが、返ってきたのは静寂だけ。


「…………。もうっ、部屋に引きこもってばかりでロクにご飯も食べないでっ! お母さん悲しいっ」


「……それつっこんだ方がいい?」


「できればお願いします!」


「料理作ってくれるのはレドだし、どちらかというとお母さんはレドでは?」


「思ってたのと違うツッコミきた!?」


 そんな彼とのふざけたやり取りの間も、シェナは部屋の向こうで無言のまま。


「これほんとに部屋にいんの?」


 そう思うのも無理はない。

 一週間以上彼らと生活を共にしたが、夕方以降、シェナの姿を目撃した者は私を含め誰もいないだろう。


「いるはずだけど……。レドに言われた通り、扉の前に食事を置いておきましょうか」


「そだね〜」


「シェナ、ここに置いておくわね」


 一声かけてから部屋の前を離れようとした時。



 ────ドサッ。

 突然中で大きな物音がした。


(この音、床に何かが倒れた? でも各部屋にそんな大きな音が出そうな物はないし……まさか!)


「シェナ!?」


「お、おい! 大丈夫かよ!? シェナ! 返事しろって!」


 ゴンゴンと扉を叩いても返事はない。


(これ……もしかして無視しているわけではなくて、返事ができない状況なの? シェナに入るなと言われた手前、勝手に入るのは忍びないけれど……)


「シェナ? 入るわよ?」


 部屋の扉を開け、中へと入る。

 するとそこには─────


「「え……?」」


 そこに倒れていたのはシェナではなく、小さな獣人の男の子だった。


(な、何故子供が? 一体いつ屋敷に入って───いえ、今はそれどころではないわ!)


 私は倒れた子供の傍に駆け寄り、優しく抱き起こす。


(狼の耳と尻尾……それに銀色の髪。身体は小さいけれど、この子、シェナとそっくりだわ……)


「ねぇ、君? 大丈夫? 私の言葉、分かる?」


 彼はうなされながら、小さく小刻みに震えている。


「すごい熱……!」


 手のひらで額を押さえると、男の子は苦しそうに薄目を開けた。


「……っ、なん、で」


 私の腕の中で目を覚ました男の子は、私とセシアンの姿を見て絶望した表情を浮かべる。


「なんでっ、テメェらが、ここに! 部屋に、入るなっ、て! 言った、だろうが……!!」


「え……」


 それは〝シェナ〟から言われた言葉。


「貴方……シェナ、なの?」


「……っ」


 核心をついてしまったようで、男の子……もとい、シェナは私たちをキッと睨んだ。

 子供の姿なうえに、高熱により目が潤んでいるため、全く怖くはないのだが……。


「……っはぁぁぁぁああ!?! なっ、え!? お前なんで縮んでんの!?」


「っるさい! 寄るな……人間! 俺に、触るな!」


 手をブンブンと左右に振り私たちを遠ざけようとするが、熱のせいで全く力が入っていない。


 同時に廊下からドタドタと複数の足音が近づいてきた。


「何事だ、セシアン! 書斎まで声が聞こえてきたぞ! 一体何を騒いで───っ!?」


 騒ぎを聞きつけたラルド、そしてルデンとレドも次いでやって来た。


「シェナ……なのかい?」


「……寄るな。……見るな」


 シェナは壁の端にうずくまり、弱々しく言う。


(……まるで怯えた野生の獣のようだわ)


 今大勢で彼を囲むのは、彼に相当なストレスを与えてしまうだろう。

 しばらく考えてから、私は部屋を出るべく立ち上がった。


「みんな、今は一旦部屋を出ましょう?」


「えっ、でも……」


 セシアンの言いたいことは分かっているつもりだ。

 このまま彼を放っておいたら、さらに病状が悪化するかもしれない。

 私はコクリと頷いた。


「分かってる。シェナの看病は私に任せてもらえないかしら?」


「看病って……シェナは大丈夫なのかい!?」


 シェナの身体を案じて、反射的にルデンは彼の元へと駆け寄ろうとしたが、すぐにグッと堪えたように留まった。


「すごい熱なの。今はそれをなんとかしないと」


 短い言葉でも状況を把握してくれたレドは静かに頷いた。


「分かりました。水、それと汗を拭くものを持ってきますね」


 レドを先頭に、一旦、皆シェナの部屋を出る。


「看病すると言っていたが、一人で大丈夫なのか?」


 ラルドの問いに、大丈夫だと頷いてみせた。


「ええ、平気よ。本当は誰もそばにいてほしくないのでしょうけれど、今は彼一人でどうにかできるような状態ではないから、誰かがそばにいないと。みんなの中なら体格的に私が一番突き飛ばしやすいでしょうし、彼もそういう相手の方が少しは安心できるでしょう?」


「突き飛ばしやすいって……」


「突き飛ばすどころか噛み付いてきそうなんだけど?」


 呆れたように言うラルド。

 セシアンも心配そうに私を案じてくれた。

 ルデンは目を伏せしばらく考える素振りをみせた後、再び私と視線を合わせた。


「……けれど、僕もベリルと同意見だ。シェナは怯えているように見えたから」


「ええ……」


 しばらくシェナの部屋の前で待っていると、荷物を抱えたレドが戻ってきた。


「水とタオルの用意ができました」


「ありがとうレド。それじゃあベリル、頼めるかい? 何かあれば僕も行くから」


「ええ、ありがとう」


 レドから看病セットを受け取り、彼らが談話室へと戻っていくのを見送った後、私は静かにシェナの部屋の扉を開けた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ