夕食
───しばらくして。
皆で厨房へ行くと、ちょうどレドが料理をテーブルに並べているところだった。
「うわっ、美味そー!」
セシアンの言う通り、料理の見た目はもちろん、野菜のスープとパンの匂いが食欲をそそった。
「流石だな」
ラルドが言うと、レドは軽く微笑みながら「いえ、」と謙遜した。
「今日は急な話でしたので、簡単なものしか作りませんでしたが」
「いいや、充分だよ。いつも任せきりですまない」
「いえ、ルデン様の従者として当然です」
「ありがとう。シェナについては何か聞いているかい?」
「食事は部屋でとるそうです」
それを聞いたラルドは自分の分の食事をトレイに移した。
「なら俺も部屋で済ませることにする。食器は自分で下げに行くから気にしないでくれ」
「分かりました。私もこの後厨房の片付けをしますので、皆さんはゆっくり食べていてください」
「え、片付けまで任せきりにするわけにはいかないわ」
ルデンはともかく、私たちの分まで用意させた上に、さすがに申し訳なさすぎる。
せめて後片付けくらいはお手伝いしたい。
セシアンと、そしてルデンまでもが同じように頷いた。
「そーだよ! それくらいならオレらでもできるし!」
「ああ。レドは休んでいてくれ」
「お気遣いありがとうございます。ですが好きでやっていることなので、お気になさらず。私も後で夕食は済ませますから」
そう言って、一礼したレドは厨房の奥へと入っていった。
「…………」
小さく息をついたルデンを見て、隣のセシアンが指でちょいちょいと私を呼ぶ。
「(……なぁリルちゃん、殿下すげーしょんぼりしてるように見えるんだけど、オレの気のせい!? 絶対みんなで食べたかったって思ってるよね!? じゃあ俺らも部屋で食べるー?とか言いそうになったけど、言える雰囲気じゃねえ!)」
「(私もそう見えるし、絶対言わないで……)」
コソッと耳打ちしてきたセシアンに合わせ、私も小声で対応する。
「……二人とも? どうかした?」
「え!? いや、なんでも! ま、まぁ人数少なくなったけど、せっかくだし三人で食べよーぜ! な、リルちゃん!」
「ええ、せっかくレドが綺麗に並べてくれたんだし、ここで食べましょう。ルデンもそうするでしょう?」
「……うん、そうだね。学園の友人と一緒に食事するなんて初めてだから、嬉しいよ」
「わ〜キラッキラの微笑みが眩しい……これが王子か……」
(何言ってるのとつっこみたいところだけれど、これに関しては同感だわ……)
そんなこんなで、その日の夕食は三人で─────というか、結果を言うと次の日も、またその次の日も食事は三人でとっている。
食事以外はというと、基本的に皆各々好きなことをしている。
ルデンとラルドは大体の時間を書斎で過し、レドは厨房で料理をしていたり、セシアンは談話室でのんびりしていることが多い。シェナは日中、外で日向ぼっこ(?)していて、夕方になると何故だか部屋に籠ってしまう。
────私たちが屋敷に閉じ込められてから、ついに10日が経とうとしていた。
その間、もちろん学園の救助も王国軍の救助も来ていない。
確かに、こちら側には王子であるルデンがいるため、何かあっても助けてもらえると、どこかで期待していた。
けれど、王国の捜索隊が動くには遅すぎはしないか。
学園を出てから既に10日。
あの理事長のことだ、王子が学園に戻っていないことを知ったら、すぐに捜索隊の派遣や王国軍に話を通すはず。
それなのに、良くも悪くも、この屋敷では何事も起こっていない。
なにか、外から介入できない問題が起こっているのではないか。
このまま、救助を待つだけでいいのか。
そんな不安が日々募っていた。
(それに……私なりに屋敷を調べて、気になることも出てきたし)
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そして、今日も何の進展もないまま、夕食を終えた。
「はぁ〜屋敷に閉じ込められてから、これが10回目の夕食か〜。ふつーに快適に過ごせてるから危機感麻痺してきたわ」
セシアンの言葉に、私とルデンも同意する。
「本当に」
「さすがに捜索隊が到着してもいい頃合いなんだけどね」
「それはオレも思った。まぁ、変な霧も出てるし、苦戦してんのかねぇ」
「(王宮魔導師も動いているはずだから、苦戦は考えにくいんだけどな……)」
うーん……と何か考えているようなルデンを横目に、セシアンは「そういえば、」と言葉を続けた。
「ココ最近、なーんか変な夢見るんだよなぁ。目覚めると忘れるから、それがすげー気持ち悪ぃ〜の」
「あ、それ、私もなのよね。いつもは夢とか見ないのに、この屋敷に来てから夢を見るの」
(しかも肝心な何かを思い出せないのよね……)
「えっ、ニ人もなのかい? 実は僕も同じで……」
「え……それって────」
セシアンが言いかけたタイミングで、レドがトレイワゴンを押しながらやってきた。
「皆さん、お皿お下げしますね」
「あぁレド、ありがとう」
「いつもありがとう。私たちの分まで、ごめんなさい」
「今日も超美味しかったよー!」
「ふふ、お口にあったようで何よりです。ところで───どなたかシェナさんに夕食を持って行って頂けませんか? 食事は出来上がったのですが、片付けの方のキリが悪くて……」
「なら、私が行くわ」
今日はこの後、ちょうど自室に戻ろうと思っていたため、ついでに立候補してみた。
「あ、じゃあオレもついて行こーっと!」
「ベリルさん、セシアンさん、ありがとうございます。ではお二人にお願いいたしますね」
「それなら僕はレドの片付けを手伝ってから談話室に戻るよ」
「おっけー、んじゃまたあとで〜」
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