Select3:談話室に残る (セシアン)
【選択肢】
▶︎ 談話室に残る (セシアン)
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(私も特にすることもないし、ここにいよう)
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「おっ、リルちゃんもここで休む?」
「ええ、そうするわ」
「やった〜♪ せっかくだしお喋りしよーぜっ」
そう言って彼は、ソファーに腰掛けた私の隣にわざわざ移動し腰を下ろした。
(わざわざ隣に座らなくても話はできると思うのだけど……。それに────)
「……セシアン?」
「んーー?」
「………………近くない?」
私の脚と、彼の脚がくっつくくらいに。
(距離感がおかしいような……)
「え〜そう? 嫌?」
「嫌……というか、狭くない?」
「オレは平気だよ♪」
「……そう」
(彼が狭くないのなら、それでいいか。少し気になるけれど、気にしたら負けな気がしてきたわ)
セシアンは私の後ろの、ソファーの背もたれに腕を回すと、さらに距離を詰める。
「実はオレ、前からリルちゃんのこと知ってたんだよね〜」
「? どこかで会ったことあったかしら?」
「ん〜会ったっていうか、学園ですれ違うくらいだったんだけどね。人形みたいな子がいるっていう噂は聞いてたんだけど、実際見るとホント綺麗でびっくりしたよ。ずっとキミと話してみたかったから、今回一緒にダイヤ生に選ばれてホント嬉しい♪」
そう言って笑うセシアン。
だが私には、それが彼の本当の笑顔ではないような気がした。
(社交界慣れしている、というか。貼り付けられた笑顔、というか。まるで笑顔の仮面を被っているみたい)
「ん〜? なぁにリルちゃん、オレの顔じっと見て……あ、もしかしてオレのこと好きになっちゃった?」
「いいえ?」
「即答!? え〜、リルちゃんならいつでも大歓迎なんだけどなぁ」
「そんな日は来ないから安心して」
「えー! そんな〜! ……まぁそーいうところも可愛いけど! 初めて学園ですれ違った時も、オレのこと見向きもしなかったもんな〜」
「……よく覚えているわね」
彼には申し訳ないが、私はすれ違ったことにすら気がついていないというのに。
随分と記憶力が良いのだなと思わず感心してしまう。
「自慢じゃないけど、大抵の女の子はオレとすれ違うと振り返ったり、顔を赤らめたりしてすぐに好意を示してくれるんだけど」
(思いっきり自慢では……????)
「キミだけは他の子とは違って、照れてるわけでもなく本当にオレに興味がないって感じだったから、珍しくて。だから気になってた。キミはどういう子なのかって」
「随分な自信なのね。まぁ……貴方はとても社交的だし、女性の扱いに長けているというのは認めるけれど」
加えて彼は容姿も整っていて、ダイヤ生に選ばれるくらいの実力を持っている。
そんな彼に一目惚れしてしまうご令嬢が多くいても不思議ではない。
しかし、それは全ての女性に当てはまるわけではないはずだ。それは当然、私だけに限った話ではないはず。
それなのに、どうして一度すれ違っただけの私をそんなに鮮明に覚えているのだろうか。
(並々ならぬ記憶力を持っている……とか?)
「自信、とは少し違うかもな〜。(オレの魔眼は制御できないし)」
何かをつぶやくと、彼は自虐的な笑みを浮かべながら自分の片目に手をかざした。
「ねぇ。キミはまだオレのこと、異性として気になっていないんだよね?」
「ええ、そうね……」
〝まだ〟という言葉が気になった。
(まるで、これからそうなると言っているみたいじゃない)
自信過剰にも程があるなと若干引いていると、彼はまた、あの貼り付けられた仮面で笑った。
「はは。なら……そうだな。試してみてもいいかな? キミがどこまでオレのコレに耐えられるか」
セシアンは立ち上がると、私の前に立ち、両手をソファーの背もたれに伸ばす。
彼の顔が私の顔へと近づくと同時に、ソファーはギジリと音を立てた。
「(たまにいるんだよな、オレの魔眼の ────魅了耐性がある子。初めはかかりにくくても、意識して使えばすぐに落ちる。中でもキミは特に耐性が強いみたいだけど、どうせキミもすぐに他の子と〝同じ〟になる。だから期待はしない。あくまで試すだけだ)」
「?」
セシアンと視線が交わる。
視線を逸らそうとしても、何故だか彼の瞳から目が逸らせなかった。
彼のライトグリーンの双眸が妖しく揺れ光る。
「オレの目、見てて?」
「……」
「…………」
「……」
「どう? 好きになった?」
その時、彼は初めて、私と話している中で笑顔をやめた。
(なんだ、そんな表情もできるのね)
彼の笑顔の仮面の裏には、何もない、という表現が的確だろう。
全てを諦めているような、そんな表情。
(いつも軽口を叩いていて、悩みなんてないように見えるけれど───)
「貴方も色々あるのね」
「…………え?」
「よく分からないけれど、貴方が自分に相当自信を持っているのは分かったわ」
(見つめられただけで好きになる、なんてあるわけないがないのに)
「……なんとも、ない、のか?」
「何が? ふふ、驚いた表情も新鮮ね。何故驚いているのか分からないけれど、笑顔を貼り付けているより、こっちの方が余程好感を持てるわよ」
「!」
セシアンはキョトンとした表情を見せたあと、面白そうに吹き出した。
「……っあはは! ……そっか、そうなんだ! オレの魅了が効かない子もいるんだっ!」
「ちゃーむ?」
「ごめんごめん、試すような真似して」
そう言ってセシアンは私から離れ、再び私の横に腰を下ろす。
「オレさ〜、実は生まれた時から魔眼持ちなんだよね〜」
「魔眼……って、魔力を持った瞳……だったわよね」
「そうそう。効果は人によって違うんだけどさ〜、オレの魔眼は魅了っつって、女の子を強制的に惚れさせちゃう厄介なヤツなのよ。自分である程度制御はできるんだけど、完璧に抑えることはできないから、耐性がない人ほどかかりやすい」
「そういえばさっき試すって……もしかして、私に魔眼を使ったの?」
「あはは……ごめん、良い気はしないよな」
「当たり前じゃない……。魅了にかかってたらどうするつもりだったの?」
「別に? どーもしないよ。かかったらそれまで。あーあ、キミも同じかーって思うだけ。オレが手を叩けば魔法は解ける。それで終わりっ」
「…………」
「ごめんごめん、今後はもうキミを試すような真似は絶対しない。だからそんな顔しないで? 美人に睨まれるのも悪くないけど、リルちゃんには嫌われたくないかな」
眉を下げながら肩を落とすセシアン。
ひとまず一応の反省はしているらしい。
私ははぁ……と大きめにため息をついてから、プイッとそっぽを向いてみせた。
「…………次に同じことをしたらラルドに言いつけるわ」
「ちょ!? めっちゃ怒られるやつじゃん!? つーかオレと話してる時に他の男の名前出されるのも新鮮だわ!」
言いながら、彼は楽しそうに笑っている。
理由は分からないが、この笑顔は本物のように感じた。
「オレ、やっぱキミと一緒にダイヤ生に選ばれてホントよかったわ」
「さっき聞いたわ」
「うん♪ でももう一回言いたくなっちゃった。ね、これからもまた時間ができたらこうやって話そーよ。今度はキミの話も聞かせて?」
(……まぁ、こうやって話すくらいなら、問題ないか)
我ながら甘いとは思うが、彼の本物の笑顔に免じて、今日のところは許してあげることにした。
「……面白い話はできないかもしれないけれど、それでもよければ」
私の言葉に彼は再び嬉しそうに笑った。
セシアン 好感度+20




