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RoughJewel ──ラフジュエル──  作者: norn
第二章 〜仲間〜 【各エピソードシナリオ】

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Select3:厨房に行く (レド)


【選択肢】


▶︎ 厨房に行く (レド)



 

 ───────────────────



(一人で6人分作るのは大変そうだし、一応、手伝いはいるか聞きに行こう)



 ───────────────



 そう考えた私は、早速レドのいる厨房へと足を向けた。

 少し迷ってしまったが、屋敷の一階奥に両開きの扉があり、その先が食糧庫となっていて、その中に隣接する形で厨房はあった。

 厨房は吹き抜けとなっていて、入口から中の様子を伺うと、レドはすぐに私の気配に気がついた。


「ベリルさん? どうなさいましたか?」


「何か手伝うことはあるかしら?」


「ああ、手伝いに来てくださったんですね。ありがとうございます。ですが、今のところ大丈夫そうです。お気遣い感謝いたします」


「そう? 分かったわ。人手が必要になったらいつでも呼んでくれて構わないから」


「ええ。…………」


 私がそそくさと厨房を出ようとすると、レドは私を呼び止めた。


「すみません、やはり……少し手伝っていただけますか?」


 急な心境の変化でもあったのだろうか。

 ともあれ、何もせずにいるのも忍びなかったので、こちらとしても好都合だ。


「分かったわ。何をすればいい?」


「そうですね……では、この食材を洗っていただけますか?」


「ええ、任せて」


 レドからジャガイモやニンジンなどの野菜を手渡される。

 その野菜はどれも新鮮そのものだった。


「土がついてる……まるで収穫したてみたい」


「不思議ですよね。私も最初に見た時は驚きました」


 野菜についた土を、丁寧に水魔法で洗い流していく。

 このくらいの魔法ならば生活魔法の範囲なので、魔法を扱える者であれば誰でも使うことができるだろう。

 なので、彼の前で使っても問題はない。実に平凡だ。


「…………」


「…………」


(なんだか視線を感じるのだけど……)


 さっきからレドの視線がとても気になる。

 この視線は気のせいではないだろう。

 理由を探っている中で、ある一つの結論に辿り着く。


(あぁ、もしかして……)


「───心配しないで。()なんて入れないから」


「……」


 レドはとても驚いたような顔をしている。


「出会って間もないし、警戒して当然よね」


「何が、でしょう?」


 あんなに熱心な視線を送っておいて、とぼけるつもりなのだろうか。

 まぁ……本人には言いづらい内容ではあるが。


「……貴方は王子(ルデン)の従者だから。食材に何か細工しないか、てっきり監視しているのかと。貴方の目を盗んで何かできるとは思っていないから。安心して」


 私が言うと、レドは一瞬目を見開いてから、堪えきれずという感じで吹き出した。


「…………っふ、ふふ」


 意外な反応が返ってきて、こちらも驚いてしまう。


「…………どうしたの?」


「貴女は聡明な方なのですね。ご安心ください、私も疑ってなどおりませんよ。改めて見ると本当に、人形(ドール)のように美しい方だなとつい見惚れていました」


「………………」


 はぐらかすにしても、もう少しまともな言い訳はなかったのか……思わずジト目でレドを見ると、彼はふふっと静かに微笑んだ。


「おや、その顔は信じていませんね? 本当ですよ。学園でも貴女の噂はよく耳にしていましたから」


「……噂?」


「ええ。容姿はもちろん、立ち振る舞いも美しく、まるで人形(ドール)のようだと」


(……たぶんそれ、表情が変わらないから皮肉を込めて人形(ドール)だと言っているんじゃないかしら)


「皆、貴女のことが気になっておられるようですね。───あぁ、もちろん私も含めて」


「…………。それで、実際関わってみてどう? 印象は変わったかしら? 皆が言うほど特徴もない、ごくごく普通の、平凡なつまらない人間だったでしょう?」


「任命式の時も、貴女はご自分を平凡な人間だとおっしゃっていましたね。私にはそうは思えませんが」


 彼の言葉を聞き、思わず眉をひそめてしまう。


「……何故?」


「そうですね……勘、です」


 根拠がなかったことに安堵しつつ、それを悟らせないように私はふいっと彼から視線を逸らした。


「……その勘は残念ながら外れているわね」


「ふふ、そうなんでしょうか? ともあれ、実際関わってみて印象が変わったのは確かです。貴女は聡明で、周りをとてもよく見ている。そして何より───()()()()()()()()ようです」


「…………」


 彼は、どこまで見抜いているのだろうか。

 出会って間もないはずなのに、彼には全て見抜かれているような気になってくる。


 確かに……私は、ずっと怯えているのかもしれない。

 平凡でない力を知られてしまうことが、怖くてたまらない。

 知られてしまったら、私はまた1人になってしまうから。


「……ふふ、貴方の方がよく周りを見ていると思うわ。……貴方の言う通りね。私は、自分が思っている以上に、臆病な人間なんだと思うわ」


「……。臆病、というのは決して悪いことではないと思いますよ」


「え?」


「臆病なのは、それだけ慎重に物事を考えることができる、ということではありませんか? この行動で未来にどんなことが起こるのか、事前に結果を予測することは身を守る上でとても重要なことです。未来の結果を予測し、それで動けなくなってしまう者もいるでしょうが、少なくとも貴女は違う。貴女の臆病(それ)は、転ばぬ先の杖のように感じます。予測した悪い結果にならないよう、貴女は事前に準備を怠らない。その臆病さを活かして、貴女は自分を守っている。臆病さは決して、デメリットだけではないはずですよ」


「…………」


(そんな考え方、したことなかったわ)


 考えてもみなかった答えが返ってきて、少しだけ、気持ちが軽くなったような気がする。


 レドは空気を変えるように、さて、と切り出した。


「食材は洗い終わりましたね」


「え、ええ。はい、これ」


「ありがとうございます。……おや? 頬に土がついてしまいましたね」


「え、本当? どこ?」


 私は指摘された方の頬を手で払う。


「あぁ、汚れが広がってしまいますので、私が拭いますよ」


 そう言って、彼はポケットからハンカチを取り出し水で濡らす。


「手間をかけさせてしまってごめんなさい、ありがとう」


「いいえ」


 レドの綺麗な顔が、私の顔に少し近づいた。


(レドもすごく整った顔をしているわよね。どこを見ていたらいいのか分からなくなるわ)


 視線を合わせたままなのは気まずいので、少し逸らす。

 そこで、今まであまり見ていなかった彼の耳に目がいった。


「その耳……」


(先の方が尖っている?)


「ん? ああ、これですか? そういえば言っていませんでしたか。私は人間と魔族の混血なのですよ」


「そうだったの?」


 人間と他種族との間に産まれた子は、混血と呼ばれる。所謂(いわゆる)ハーフというやつだ。


「申し訳ありません」


「? なぜ謝るの?」


「この髪色と目の色は魔族に多いので、気味が悪いと思う方も多いのですよね。貴女にも不快な思いをさせてしまいました」


 確かに、人間と魔族は昔敵同士だった。

 終戦して何百年も経つのに、今でも魔族を嫌う人間が多くいるのは事実。

 けれど────


「不快な思いなんてしていないわ。混血だろうと貴方は貴方だし、気にする必要はないでしょう? それに私は貴方の髪も、瞳も、とても綺麗だと思っているのよ?」


 思ってもいない言葉を返されたのか、彼はとても驚き、私の頬を拭くハンカチを止めた。


「そんなことを言う人間(ひと)は初めてです……」


「そうなの? その人たちには見る目がないわね。こんなに綺麗なのに」


「あ、ありがとう、ございます……。貴女のその白銀の髪も、紅の双眸も、とてもお綺麗ですよ」


「ふふ、ありがとう。そうだ、私たち瞳の色が一緒ね! お揃いで嬉しいわ」


「っ!」


 レドは弾かれたように目を見開く。

 そして、私から少し離れると口元に手をやり視線を逸らした。


(ん……? なんだろう、動揺している?)


 普段の彼はあまり表情を変えないので、動揺した姿はとても珍しく新鮮に思った。


「レド?」


(私、何か気に触ることを言ってしまったかしら……)


「────いえ。ああ、頬の土は拭き取れましたよ」


 心配に思ったが、彼はすぐにいつもの彼に戻った。


「ありがとう、レド」


「いいえ、こちらこそありがとうございます。お手伝いも、助かりました。長々と付き合わせてしまい申し訳ありません」


「いいえ。私も、貴方と話せてよかったわ」


「はい、私もです」


 目を細め微笑むレドに、私も小さく笑みを返す。


(深く関わるつもりはなかったけれど、案外、みんなと話してみるのも悪くないのかもしれないわね)






レド 好感度+20



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