霧の森
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───そうして、学園を目指し森を歩くこと早30分。
辺りは徐々に霧に包まれていた。
「霧が深いな……皆、はぐれないよう気をつけてくれ」
「はぁ……今度は霧かよー。今日のオレたち、とことんツイてねーわぁ」
ふと、シェナが足を止めた。
それに気がついたラルドがシェナに声をかけた。
「おい、どうした」
「なん……で」
彼は信じられないという表情で唖然とした。
「───屋敷の匂いが近付いてきてる」
突如、森の霧が晴れていく。
そして彼の言葉を証明するように、私たちの目の前に例の屋敷が現れた。
「ば、馬鹿な。屋敷と反対方向に真っ直ぐ進んでいたんだぞ!」
「んん?? あの霧で方向感覚がなくなった……ってわけでもねぇよな。少なくとも霧が出るまでは直進してたわけだし。もう一回、学園方向に歩いてみる?」
セシアンの提案に、レドが「それなら、」と付け加えた、
「今度は全員で行くのではなく、学園方向へ歩く者と、ここで待つ者とで二手に分かれませんか。そうすればまたここへ戻って来てしまっても、どちらの方角から戻ってきたのか確かめられますし」
彼の提案に、ラルドは肯定的に頷いた。
「確かに。霧で迷って方向が反転したのかくらいは分かるな」
「ええ。それでもし、30分経っても戻ってこなければ無事霧を抜けられたということになりますので、残りのメンバーも進むという形を取りましょう」
「そうだね、分かった」
ルデンの了承も得たところで、問題はその選出者だか───。
「俺が走れば30分もかからねぇ。俺だけで行く」
例のごとく、シェナが立候補してくれた。しかし……。
「確かに時短には賛成だけど、一人はダメだ。レド、シェナと行ってくれるかい?」
「人間じゃ獣人の速さについて来れねぇ」
「もちろん。だから僕がレドに身体強化の魔法をかける。それなら君の速さにもついていけるさ」
「身体強化魔法って上級魔法だよな〜」
セシアンが「おぉ!」と感嘆の声を上げると、ルデンは少し照れたように笑った。
「はは、そうだね。僕は誰かを強化したり回復させたりする、いわゆるバフ系の魔法が得意なんだ。だから任せてくれ。レド、頼めるかい?」
「承知しました。一時おそばを離れること、お許しください」
「構わない。それと危ないと思ったらすぐ引き返すように。二人とも気をつけてくれ」
「……チッ、遅ければ置いていく」
「ええ。ルデン様、なるべく早く戻って参りますので、しばしお待ちを」
ルデンがレドに身体強化魔法を施した後、二人はものすごい速さで走り出し、遠ざかって行った。
「うわー、もうあんな小さく見える……どんだけ速いんだよ」
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そして、シェナとレドが出発してから15分後。
私たち待機組は、背後からのガサガサと草を分けるような音につられ振り返る。
振り返るとそこにはシェナとレドの姿があった。
「戻りました」
なんと彼らは、15分も時間を削って戻ってきたのだった。
しかも、シェナもレドも息一つ上がっていない。
「えっ!? はやっ!? てかなんでオレらの後ろにいんの!」
「ルデン様、やはりおかしいのは我々ではなくこの森のようです」
「二人共おかえり。そのようだね……」
「15分ほど進むとまたあの霧に見舞われ、この場所に戻されていました」
「常に俺の鼻であんたらの位置を確認しながら走った。だから方角が狂ったわけじゃねぇのは確かだ」
「私たちから見て二人は直進して行ったのに、帰ってきたのは後ろから……」
どういうことなのかと首を捻っていると、セシアンもガックリとうなだれた。
「となると……。はぁー……この森パックマン方式かよ……」
「ぱっく……? すみません、それが何かは分かりませんが、一方通行ということは確かです。この森は霧を抜けるとまた元の場所に強制的に戻される────ループしているのだと思われます」
「ということは……俺たちはこの森に閉じ込められた、のか?」
「……恐らくは」
「「……………………」」
しばらく、全員その場で立ち尽くす。
どうしてこんなことになってしまったのか。
こんなことが本当に起こり得るのか。
……考えても、答えは出せるはずもない。
皆の沈黙を最初に破ったのはルデンだった。
「……ここにいても魔獣が寄ってくるだけだ。一度、屋敷の中に戻ろう。もう一度、あの地下の部屋を調べてみないか」
「さんせーい。オレも提案しよーと思ってたところ」
そう言うセシアンに向けて、ラルドがジト目を送る。
「屋敷は気味が悪いんじゃなかったのか?」
「いやいや、気味の悪さで言ったら屋敷も外も変わんねーって。それに、レドとシェナも少し休んだ方がいいでしょーよ」
「お気遣い感謝いたします」
「ふん……」
ルデンが私に視線を向けた。
どうやら、私の意見も聞いてくれるらしい。
「私も、地下の部屋をもう一度調べた方がいいと思うわ」
彼は頷き、優しく微笑んだ。
「決まりだね」




