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RoughJewel ──ラフジュエル──  作者: norn
第二章 〜仲間〜

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Select2:屋内 (ルデン・セシアン・ラルド)


【選択肢】


▶︎屋内 (ルデン・セシアン・ラルド)



※共通ルートシナリオも少しだけ入ってます。



 


(屋内……いや、人数的には外がいいのかしら?)


「外の調査は大してなさそうですし、探索場所の多い屋内に人員を割いても良いかもしれませんね」


 返答に迷っていると、レドが助け舟を出してくれた。

 なので、ありがたくその意見に乗っかることにした。


「分かったわ、それじゃあ私は屋内の方にするわね」


「ああ、よろしくベリル」


「やった〜! オレもリルちゃんと一緒にいたかったから大歓迎〜!」


「足は引っ張るなよ」



 ───────────────────

 ※


 チームを分けたところで、ルデンが場を切り替えるようにパンッと手を叩いた。


「よし、それじゃあそれぞれ作業に入ろうか」


「はい。(こちら)の周辺調査が終わり次第、一度そちらと合流しますね。何かあればお呼びください、ルデン様」


 レドがルデンに一礼すると、ルデンも「ああ」と頷いた。


「よろしく頼むよ」



 ───────────────────




 レドたちと分かれた私たちは、そのまま屋敷の入口へと向かった。


「誰が最初に入る〜?」


「誰でもい───いや、どんな罠があるか分からんな。貴様が行け」


「いやそれ聞いて率先して行く奴いる? 余計嫌になったんだけど???」


「僕が先行するよ」


「え、ほんと───って痛ぁっ!?」


 ゲシッ、と。

 ルデンが見ていないタイミングで、ラルドがセシアンの脚を蹴る。


「……ったく、わーったよ!! 王子に何かあったら責任取れねーし! オレが行きますよーだ! つーかお前が行けよな、ラルド!」


 文句を言いながらも、セシアンが先行し屋敷の中へと入る。

 幸い、何もなかったようだ。

 彼の後に続いて私たちも屋敷に入る。

 屋敷の中は、やはり長年放置されていたせいでどこもかしこも荒廃した状態になっていた。

 昼中だというのに廊下はかなり暗く、奥まで光が届いていない。


「うわ、怖っ! マジで霊とか出そうなんだけど!?」


「……屋敷と呼ぶより廃墟と呼んだ方が正しいな」


「けほっ……あまりこの埃は吸い込まない方がいい。魔法で埃の吸い込みを緩和できるけど、それでもあとで換気は必要だね」


 それぞれ自然と分担する形となり、各自部屋を見て回る。


「にしても本当、雰囲気あるわ……リルちゃん大丈夫? 怖くない? あ、手繋ごうか??」


「……お構いなく」


 セシアンをスルーし、近場の適当な部屋の扉を開け、中を覗く。

 その部屋も当然、家具や絵画は駄目になっていて部屋中埃と蜘蛛の巣で凄いことになっている。

 恐らくどの部屋もこんな状態になっているのだろう。


(これは……想定していたとはいえ、中の片付けは相当大変ね)


 果たして今日一日で終わるのだろうか。


「リルちゃん……お化け屋敷とか平気なタイプ?」


 何故か着いてきたセシアンが、恐る恐るといった感じで聞いてくる。


「お化け屋敷……に入ったことがないからよく分からないけれど、出るのはただの魔物(ゴースト)でしょう?」


「いーや分かんねーよ? 魔物(ゴースト)と幽霊は別物じゃん?」


「そうなの?」


 私が首を傾げると、セシアンは得意げにウンウンと頷いた。


「そうそう。ゴーストは魔物の種類の一つだけど、幽霊はなんつーか……この世に未練がある元人間が化けて出てきたものっつーか」


「あぁ、そういう……。確かに、人間が1番怖いって言うものね。それなら私も、幽霊、怖いと思うわ」


「あーうん、そうじゃなくて……いや、ウン……まぁ…そうなんだけど。とりあえずリルちゃんが幽霊の類は怖くないってことは分かったよ」


「?」


 歯切れの悪いセシアンに対し再び首を傾げていると、背後からラルドに「おい、」と声をかけられた。


「貴様ら入口の前で止まるな」


「お、早かったなラルド。手前の部屋確認できた?」


「とっくにな。大体貴様ら喋っていないで手を────」


「お〜!奥の部屋は談話室か〜!」


「おい! 聞け!」


 入口付近で言い争っている(じゃれ合っている)2人を置いて、かつて談話室だったような部屋に入る。

 暖炉、ソファー、本棚……在り来りな家具ばかりで、特にめぼしいものは見つからない。

 そのうちルデンもこちらと合流した。


「そっちは何かあったかい? 2階も見てきたけど、ほとんど客室のようだ。見たところ魔術道具らしきものはなかったよ」


「こちらもです」


「オレとリルちゃんも同じく〜。ま、フツー魔術道具なんてモンその辺に置いとかないっしょ」


「珍しくまともな事を言うんだな。同感だ」


「オレがいつもまともじゃないみたいな言い方しないでくれます?」


「僕も君たちと同意見だ。多くの魔術師は自分の使う魔術道具を他人に見られることを嫌う。となると、少なくとも人目につきやすいところには置かないだろうね」


「んー。けどそれっぽい隠し部屋とかなかったけどなぁ」


「まぁ……理事長も、『屋敷に魔術道具がある』と明言していたわけではないからな」


「え、じゃあ空振りって可能性もあるってこと!? うーわ、汚れ損じゃん。手っ取り早く〝魔術道具発見魔法!〟とかないわけー?」


「そんな都合のいい魔法あるわけないだろう。探知(サーチ)とは違うんだぞ」


「ああ。実はダメ元で探知(サーチ)も試してみたんだけど、やはり探知(サーチ)には引っかからなかったよ」


(……探知(サーチ))


 探知(サーチ)とは、ある程度周辺の、魔法や魔術を使う者の居場所を特定する魔法。

 魔法使いも魔術師も多かれ少なかれ体内に魔力を持っているため、探知(サーチ)はその魔力の流れに反応するのだ。

 ただし、これは魔族・魔物・獣人・人族にのみ有効で、物や魔力を持たない生物には効果がない。

 ちなみに魔術道具は魔法が付与されているとはいえ、通常は〝物〟として扱われるため探知(サーチ)には反応しないのだが────


(一度使用したことのある魔術道具があれば、術者の魔力が微かにでも残っているかもしれない。魔術道具本体ではなく、それに付着した魔力を感じることができれば────)


 私は目を瞑り、心の中で小さく〝探知(サーチ)〟と呟く。


 周囲には私を含めて4つの反応。


(これはルデン・セシアン・ラルドのものね。あとは……屋外に2つ。これは外を探索しているレドとシェナのもの。その他に反応は……ん、)


 ふと、気がつく。

 一瞬だけ、ほんの一瞬だけだが、確かに感じた。


(地下に〝何か〟が反応した?)


 場所はこの談話室のちょうど真下辺り。


(この下にまだ空間があるってこと?)


 ここは旧魔術師邸。

 隠し部屋があっても不思議じゃない。

 何らかの魔術を使わないと入口が分からないような仕組みになっているのかもしれない。


(この事を彼らに言うべき? けれど隠し部屋について確証があるわけではないし……。それに先程、ルデンは探知(サーチ)を試したと言っていたわよね)


 探知(サーチ)のような魔法は使用者の魔力量によって精度が大きく変わる。

 魔力量だけは人に誇れる私でも、微かに反応したくらいだ。

 彼らに再び探知(サーチ)を促しても、結果は変わらないだろう。


(実際に隠し部屋を見つけられれば話は早いんだけど……)


「…………」


「リルちゃんどったの? 本棚の前でなんか唸ってたけど」


「気になる本でもあったかい?」


「え……あー、別にそういうわけじゃ……」


(どうするべきか悩んでいた場所がたまたま本棚の前だったというだけで……)


 するとセシアンが、何かひらめいたかのように「そうだ!」と声を上げた。


「そういや童話とかでは本が仕掛けになったカラクリとかよく出てくるよなー!」


「お前……本読めるのか……?」


「そんな心底驚いた顔しないでよ!? なんだと思ってんのオレのこと!」


「はぁ、カラクリなんてただの童話の中だけの話だろう。魔法や魔術が栄える前ならともかく」


「夢がないなぁラルドくんは。そうだったら面白いのに、って話! オレもカラクリなんて見たことないし。本棚の裏に隠し部屋なんてあるわけ────」


 ─────ガコン。

 セシアンの言葉を遮るように、本棚の中で何かが外れるような音がした。


 そして次の瞬間、目の前の本棚はゴゴゴゴと音を立てて床に沈んでいった。


「───って、えええええ!!!?」


「嘘……だろう……」


 本棚の代わりに現れたのは、地下へと続く階段だった。


「すごいな! お手柄だセシアン!」


「……く、まさか貴様の馬鹿馬鹿しい話が本当に起こるとはな。お前、一体本棚に何したんだ?」


「え、いや褒めてもらってるところ悪いんだけど、オレ何もしてねーんだわ!? なんか勝手に動いたんだけど!?」


(やっぱり、地下に空間があったんだわ)


 となると、私が探知(サーチ)で捉えた魔力反応も実際に存在する可能性が高い。


「とりあえず下へ行ってみようか」


「そうですね。私が先行します」


 ラルドに続き、下の階へと降りる。

 階段を降りた先には、いくつも本棚が並べられた書斎があった。


「書斎がないなと思ってはいたが、ここにあったとは……」


 その蔵書の数を見て、ルデンも圧巻だと驚いているようだった。


「他の部屋は廃墟って感じだったけど、ここは割かしキレーじゃね?」


(確かに……長く使われていないはずなのに、荒廃が進んでいないわ)


 ラルドが手近な本を手に取ると、目を丸くする。


「なっ、これは……!」


「うわっビックリした。急に大声だすなよー、珍しいな」


「これは王都でも売られていない、一部の魔術師たちの間だけで取引されていたという幻の魔導書!? それに……こ、こちらの棚の本は全て、絶版されたはずの禁書ばかりだ……」


 ルデンも手近な本を手に取ると、パラパラとページをめくってみる。


「本当だ。こちらの魔導書も我が王国(ヘリオドール)では売買を禁止しているものだ。見たところ、異国の魔導書も多々混じっているね……」


「え! じゃあ貴重品発見!? ミッションクリア!? なーんだ、案外簡単に終わったじゃん!」


「…………」


 ───いや、まだだ。


(この本たちから、()()()()()()()()()()。私の探知(サーチ)に反応したのは、恐らく……)


 探知(サーチ)を使わずとも、この部屋に降りてから強く感じている魔力。


(この()()()からだ)


 そこは、何の変哲もないただの壁。

 私は壁に手を伸ばし、そっと触れてみた。

 壁に向かって軽く魔力を注ぐと、冷たかった壁が触れた箇所からじんわりと熱を持ち始め、そこに巨大な魔法陣が浮き上がった。


「「っ!?」」


(彼らも気づいたみたいね)


 ───この部屋の奥の、魔力を帯びた〝何か〟を。


「ベリル」


 ルデンが私を庇うように間に入った。

 代わりに、ラルドが魔法陣の解析を試みる。


「これは……幻術の魔法陣か……」


 ラルドの言う通り、この陣は幻術の魔法陣で間違いないだろう。

 それを証明するように、幻術の魔法陣で隠されていた扉が徐々に姿を現した。

 先程まで上の階であったような扉とは異なり、狂牛と悪魔を掛け合わせたようなキメラの装飾がされている。


 一歩進んで、扉を開けようとドアノブに手を伸ばすと、ルデンの手が重なった。


「この先はたぶん、他の部屋とは雰囲気が違う。念の為ベリルは僕の後ろに」


「……分かったわ」


 慎重に、部屋へと入る。

 中は薄暗く、そして様々な魔術道具が置かれている。

 そして書斎同様、不気味な程に、この部屋も荒廃していない。

 まるで当時のまま時が進んでいないかのように。


(私の探知(サーチ)に反応したのは、この部屋自体だったみたいね)


「扉の装飾もそーだけど、全体的に悪趣味な部屋だなー」


 セシアンの言うとおり、確かに悪趣味な部屋だ。

 この部屋に入ってから、息が詰まる。

 部屋の雰囲気? 閉塞感があるから?

 ……本当に、それだけだろうか。


(この背筋がゾクリとするような感覚は、なに?)


「これは……手記かな? どうやらここは先代の魔術師が使用していた私室のようだね」


 ルデンは手記と思われる書物をパラパラと読み進める。

 その手記の間から、はらりと紙が床に落ちた。

 拾い上げた紙には文字が書かれていた。


「これは……何語?」


 紙に書かれた文字はこの王国の言語ではなく、私には読めなかった。

 紙の裏には文字が書き殴られた跡もあったが、それもよく分からない。


「貸してみろ」


 ラルドに拾った紙を渡す。


「魔人語だな」


「読めるの?」


「ふん、当たり前だ」


 そう言うと、彼は文字を目で追っていく。

 読み進めていくうちに、彼の表情がみるみる変わっていった。


「これは……なん、だ」


「んー? なんて書いてあったん?」


 ラルドは小さく息を整えたあと、紙に書かれた内容を声に出して聞かせた。


「『この屋敷に来たのは、間違いだった。屋敷は一方通行、入った者は出られないようになっているのか? あぁ、どうしてこんな事になってしまったんだ。私にこの謎は解けない。もう出してくれ、家に帰りたい』」


 どうやら、誰かが書き残したもののようだ。


「僕たちより前にも、この屋敷を訪れた者がいたのか? それより出られないって……」


「『もし、私と同じようにこの屋敷に入ってしまった者がいるならば。その者のために、これを残す。まだ間に合うかもしれない、早く立ち去れ。〝屋敷が揺れる前に〟〝扉が閉まる前に〟。でないと、この()()に取り残される。元いた時空に帰れなくなる』」


「な、何言ってんの? ……時空?」


「最後に『謎を解け。───この屋敷は〝生きている〟』と書き足されている」


 確か、紙を拾った時に裏にも何か書き殴られていたような……。


「……裏は?」


 ラルドに問うと、それを確認した彼は息をのみ、一呼吸置いて告げた。


「…………〝死にたくない〟と」


「どういう……ことだ?」


「わ、かんねーけど、一旦外に出た方が─────」



 ───次の瞬間、屋敷全体がゴゴゴゴと大きな音を立て揺れだした。

 加えて、地面も小さく小刻みに振動しているような気がする。


「……っなんだ!」


「おいおい、勘弁しろよ! ホントに揺れだしたんだけど!?」


「っ、とにかく地上へ───」



『───時空構成、()()完了。実行マデ、残リ1分』


 ルデンの言葉は、謎の声によって遮られた。


『捕ラエタ、謎ヲ解ク者! 捕ラエタ、〝奴ラ〟ヲ裁ク者! 捕ラエタ、主ノ無念ヲ晴ラス者!謎ヲ解ケ、謎ヲ解ケ!』


「何を、言ってる、の」


「な、んだ、この声は!」


「声が、頭に響く……!」


「くっ、みんな走れ! 屋敷を出るぞ!」


 全員部屋を飛び出し、書斎を抜け階段を駆け上がる。


「───ルデン様! どこにいらっしゃいますか!?」


 廊下に出たところで、屋敷の入口扉の方からルデンを呼ぶ声が飛んでくる。


「っ……レド!」


「ルデン様! ご無事ですか!?」


「レド! シェナ! 早くこの屋敷から出るんだッ!!」


 ルデンは走りながら声を荒らげた。


「おい、どうした───」



 ─────バタン。

 前方で入口扉が突然閉まる。


「あ? なんで勝手に閉まって……」


 ただ、入口の扉が閉まっただけ。

 扉なのだから、閉まって何ら不思議じゃない。そう二人は思っているだろう。

 けれど、私たちは知っている。

 あの残されたメモには『〝屋敷が揺れる前に〟〝扉が閉まる前に〟。でないと、この時空に取り残される。元いた時空に帰れなくなる』と書いてあった。

 意味は分からない。けれど、何か良くないことが起こるような気がした。


 再び、屋敷全体がぐらりと大きく揺れだした。




 ───────────────────

 ※


 その揺れは徐々に大きくなっていき、立っていられなくなる。


(早く……外に出ないと……)


『───時空構成、実行完了。転送者、6名』


 どうしてだろうか。

 視界がぐわんぐわんと歪み、次第に白くなっていく。

 意識が朦朧(もうろう)としながら手探りで入口扉に手をかける。


 けれど、その扉が開くことはなかった───。





ルデン・セシアン・ラルド 好感度+10



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