【セシアン5-5’ BADEND√】歪
セシアンルート 【BADEND】
条件:セシアンの好感度が50以下であること。
シレネが私を訪ねてきてから、私はセシアンと顔を合わせづらくなっていた。
【BE√】
───────────────────
シレネの言葉の真偽は定かではないが、もしも本当に婚約者がいたら────そう思うと、彼の口から真実を聞き出せずにいた。
それどころかこの前は、私を好きだと言ってくれた彼に────。
───────────────────
「どうせ…………遊び、なんでしょう?」
「え─────」
私の言葉に、セシアンは傷ついたような表情を浮かべる。
そんな彼の表情には気付かないふりをして、言葉を続けた。
「上辺だけの〝好き〟なんて……いらないから」
「上辺だけ……? なんで……なんで信じてくれないんだよ……っ! ねぇ……どうしたら、オレの気持ちはキミに伝わるの!?」
「……ごめんなさい」
「ベリル! 待って、ベリル────!」
───────────────────
───彼に酷いことを言って、喧嘩別れのようになってしまった。
それ以来、彼には会えていない。
あの時の私は、完全に冷静さを欠いていた。
(あれは……さすがに、私が悪かったわ。……彼に、ちゃんと謝ろう。それで彼に、本当のことを聞かなくちゃ────)
彼を探し学園中を回っていると、階段である人物に声をかけられる。
その人物とはいつだったか、前にセシアンと歩いていた時に私に声をかけてきた男子学生だった。
「エーデルシュタインさん! そんなに急いで……どうかしたの?」
「あ……ごめんなさい。今、人を探していて────」
「もしかして、モルガナイト君?」
「ええ、彼のことをどこかで見かけたりした?」
「ごめん、見てないや。見かけたら君が探してることを伝えておくよ」
「本当? ありがとう! それじゃ────」
「あっ、待って! えーと……ごめん、そのままじっとしてて!」
彼は私の頬の横の髪に指を差し込む。
そして素早く髪を梳くと、私からそっと離れた。
「はい、取れた。ごめんね、急に触って。埃が髪についちゃってたみたいで」
「! あ、ありがとう。気が付かなかったわ」
(埃を髪につけたままでいたなんて……恥ずかしいわ。身なりを気にする余裕すら、なくなっているなんて)
「いえいえ、どういたしまして。それじゃあ、またね」
「ええ、また───」
彼にお礼を言って別れ、再びセシアンの捜索を再開しようとしたその時────。
グイッと強引に腕を引かれた。
「痛っ────」
「…………」
私の腕を引いたのは、私の目的の人物だった。
「セシアン……!」
「…………オレじゃダメなのに、アイツのことは受け入れるの?」
「え────」
セシアンは手の甲で、私の唇を強く擦った。
まるで、何かを必死にぬぐい取るかのように───。
「い、いたいっ、セシア────」
「キス、してたよね? アイツと───」
「え……?」
「アイツに頬を染めて……。そんなにアイツのキスが嬉しかったの?」
「キスなんてしてな───んっ、んんっ!?!」
彼の唇が、強引に私の口を塞いだ。
「……ん。オレ以外の男とキスするなんて、許せないなぁ」
「やめ……っ、ん、」
彼の舌と一緒に、何か異物が口の中にねじ込まれる。
異物は私の口の中で溶けていった。
そして突然、睡魔に近い眩暈に襲われる。
「はは……効いてきた? オレは魔法で毒耐性つけてるから何も感じないけど、キミのその様子じゃ、もう立ってるのも辛そうだね」
「ど……く…………?」
「……っおっと、大丈夫? 危ないから、オレが抱えてあげるね。あぁそれと、安心して? これは身体に害のない毒だから────」
「セ……シア…………ど……して────」
「……キミが言ったんでしょ? 上辺だけじゃ嫌だって。だから、証明してあげる。オレがどれだけキミを愛しているか────」
「…………」
「て、もう聞こえてないか。あはは、楽しみだなぁ、キミはすぐにオレのことを受け入れてくれるはず。───待ってて……すぐに教えてあげるから」
───────────────────
「……ん」
目を覚ました私は、ベッドに寝かされていた。
身体を起こすと、すぐにその異常さに気が付くことになる。
私の両手と両足には鎖付きの枷がはめられていて、ベッドの周りには柵────というか、鉄格子がされてあるからだ。
そこに囚われた私の姿を、彼はベッドの近くの椅子に座りながら満足そうに眺めている。
「……リルちゃん、おはよう。よく眠れた?」
「セ、セシアン……? この状況は……一体何…………!?」
その問いに対しセシアンは、楽しそうに笑いながら答えた。
「これ? 全部キミのために用意したんだ。その枷も特注品。キミがオレの元から逃げ出さないように、枷には魔封じが施してあるんだ。これからはじっくり、時間をかけてオレの愛をキミに教えてあげられるよ」
鉄格子の扉を開けたセシアンは、ベッドに私を押し倒す。
そしてまた強引に唇を塞いだ。
「……っ」
好きな人に口付けされているのに、全く嬉しくない。
だって、彼は……私の知っている彼ではなくなっていたから。
「セ……シア…………────」
「愛してるよ、ベリル────永遠に」
私の流す涙にも、彼は気が付かないまま────この檻の中で、彼は私を何度も愛すことだろう。
───私の心は、ゆっくりと壊れていった。
そしていつしか、彼の望むままに、彼の歪を受け入れることになる─────。
【BADEND / 歪み】
〆




