【セシアン5-5 HAPPYEND√】拉致
セシアンルート 【HAPPYEND】
条件:セシアンの好感度が50以上であること。
シレネが私を訪ねてきてから、私はセシアンと顔を合わせづらくなっていた。
【HE√】
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とは言っても、彼と距離を置くことができずにいるのが現状だ。
だって─────。
(普通に、こうしてダイヤ生のみんなと集まる時には顔を合わせるし)
さすがに過度なスキンシップはやんわりと拒否しているけれど。
「リルちゃん、一緒に帰ろ〜!」
そしえ今日も変わらず、とびきりの笑顔が私を迎えてくれる。
「…………」
「リルちゃん? どったの、そんなジト目でオレのこと見つめて。ははっ、そーゆー目も可愛いからいいけど。どんなリルちゃんも、オレは大好きだよ!」
(……身を引け、と言われましても)
目の前には、こんな調子で私に愛を囁く彼。
私ばかりがモヤモヤした気持ちを抱えて、なんだか馬鹿らしく思えてきた。
(なんだか、イライラしてきたわ)
本の中の恋する女の子だったら、彼のためを想って身を引くのかもしれない。
けれど生憎、私はそういうしおらしいタイプではないらしい。
そもそも彼から誘いをかけてくるのに、何故私が責められなくてはならないのか。
シレネの言い方からして、彼らの婚約は家同士が決めたもののようだし、彼女が婚約破棄をしたらモルガナイト家が破滅する、とまで言っていたのだ。
シレネに嫉妬してほしいがために、わざわざそんな、婚約破棄のリスクを背負ってまで、私のことを誘うだろうか?
彼が政略結婚に不満を持っていようが、家を破滅させるリスクのある遊びをするだろうか?
否────彼は、愚かではない。
「ねぇ、セシアン」
「んー?」
「セシアンに婚約者がいるというのは、本当?」
私は思い切って本人に直接聞いてみることにした。
だって、一人でモヤモヤして、うだうだ考えるより、確かめた方が手っ取り早い。
これでもし、本当に婚約者に嫉妬してほしいという理由で私に思わせぶりな態度を取っているのだとしたら、一発───いや、三、四発くらいは、最大火力の魔法を叩き込んでも許されるはずだ。
「え、婚約者? オレに!? いないいない!! そーゆー誘い、全部断ってるから!」
「……シレネ・スイセンという女性に覚えは?」
「シレネ……あー、シーラで会った子でしょ? その子、この前オレのことつけてきてさ〜。あぁでも! 今回は結構キツめに言っておいたから、さすがに諦めてくれたはずだよ」
(………………)
「……その女性、全く諦めていないわよ」
やはり、婚約者云々の話は全て彼女の嘘。
私をセシアンから引き離すための狂言だった。
(はぁ……やられたわ。まんまと彼女の思惑通りに悩んでしまった。モヤモヤした時間、返して欲しいわ)
「え……まさか、アイツに何か言われた?」
「自分は貴方の婚約者だって。だから貴方と関わるなと釘を刺されたわ」
「………………うわぁ。ごめん、リルちゃん……」
「いいわ、これで心置き無く貴方に触れ────」
全て言い終わる前に、冷静に口をつむぐ。
心置き無く、貴方に触れられる。
そう思っていることは事実だが、危うく、全て口に出すところだった。
「……えっ」
「な、何でもないわ! コホン、そ、それより早く行きましょう?」
誤魔化すように、私は彼の手に指を絡ませた。
「……っ!?!!」
彼がいつも私にするように、今日は私から彼の手を取ってみたけれど……何だか妙に力が入っているというか、強ばっている気がする。まるで、緊張しているみたいに。
(散々手を繋いでいるのに、今更緊張はないか……)
と、思いつつ「どうしたの?」と首を傾げてみる。
「……や、えっと……初めてリルちゃんから手繋いでくれたから……その、嬉しくて……やばい、かも……」
「……!」
(そ、それで照れるのはずるいと思う……)
時計塔を出てしばらくしてから、セシアンが突然足を止めた。
「あ……ごめん、リルちゃん。オレ時計塔に忘れ物してきたかも……」
「え、本当? まだそこまで離れてなくてよかったわ、取りに帰りましょう?」
「うん、ごめん! ありがと! ……はっ!? あ"〜〜せっかくリルちゃんから繋いでくれた手……離したくねぇ……」
(そ、そんなに嬉しく思ってくれたの……?)
「ふふ、何それ。そんなの好きな子にする反応じゃない」
「(その好きな子がリルちゃんなんだって……そう言ってんだけどなぁ。いつになったら本気にしてくれんだろー……はぁ…………)」
「私も一緒に行くわ」
「あーいや、走って行ってくるわ。ここで少し待っててくれる?」
「分かったわ」
彼の後ろ姿を眺めていると、背後から「すみませーん」と声をかけられた。
振り返ると、3人組の男たちが荷物と地図らしき紙を持って近づいてくる。
(制服じゃない……外部の方が、何故学園に───)
「学園の改装工事に来たんスけど、迷っちゃいましてー。道を聞いてもいいっスかー?」
(ああ、そういう……)
「ええ、構いませんよ。行先はどちらですか?」
「あー、東棟に行きたいんスけどー」
「東棟……それなら地図で言うとこっちの道を────」
警戒を解いた私は彼らの接近を許した。
───それが、いけなかった。
「───へへっ」
────ガチャンッ。
その音と共に、地図を指さした手の手首にずっしりとした重みとひんやりとした金属の感触。
それが何か理解する間もなく、もう片方の手首にも黒い枷がはめられる。
「なっ、」
私は男たちと距離をとるべく、風魔法で彼らを吹き飛ばすことを試みた。
しかし─────
(え……っ、魔法が発動しない!?!)
「へへ、すげー力使う魔女だって聞いてたから身構えてたケド、楽なシゴトだなぁオイ! これであの金額の報酬なら何回だってやってやらァ」
「ハーイ、首にも失礼しますよーっと」
首にも金属の錠を取り付けられる。
「これで、魔封じ対策はバッチリっと」
下衆な笑みを浮かべる男たち。
私は一歩、二歩と、彼らから距離をとろうとする。
「な……に…これは……。あなたたち、一体なんなの!?」
「お、おいッ、さっさとこの女運び出そうぜッ!?」
「オー、そーだなァ。てことで失礼すんぜー嬢ちゃん」
「ちょ、やだ、触らないで! 助けてセシア────」
「お、おいッ! 暴れんなッ!」
二人の男に押さえつけられ、もう一人に湿った布のようなものを口に当てられた。
(これ、たぶん吸ってはいけない───)
「おい、早くその女を担げ! 連れの男が気付きやがった!」
(セシアン────)
めいっぱい身体をよじって抵抗するが、だんだんと身体の力が抜けていく。
抵抗も虚しく、私の意識はそこで途絶えた────。
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《Sideセシアン》
「助けて、セシア────」
「?」
彼女の声が聞こえた気がして、時計塔に入る前に振り返る。
「……っ!?」
遠目だが、ベリルが大柄の男三人に囲まれている。
彼女の腕と首には黒い何かが付けられていて、その鎖は男が握っているように見えた。
「ベリルッ!!!!」
ベリルの元へと走りながら、身体強化魔法を詠唱する。
ぐったりとしたベリルを男の一人が担ぎ上げ、そのまま猛スピードでオレから距離を離して行く。
(くそッ! アイツら身体強化されて……ッ)
「ベリルッッ─────!!!!」
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