【レド5ー5】行方
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───レドが姿を消してから、王宮魔導師はレドをルデン襲撃の犯人として捜索を進めていた。
目撃情報が出たタイミングで行方をくらませたため、捕まることを恐れて逃げた、と思われたのだ。
あのタイミングでは、誰だってそう思うだろう……。
私や、ルデンでさえも、レドの無実を証言しているのだが、なかなか聞き入れてもらえなかった。
王宮魔導師や衛兵はレドの捜索に全力を傾けているようだが、彼が消えてから一週間以上が経っても行方の手がかり一つ掴めないままである。
それは、私やルデン、セシアン、ラルド、シェナも同様に……。
(レド…………)
彼は、自身でケリをつけると言っていた。
それに、彼が言った『最後』という言葉。あれは、一体どういう意味の『最後』だったのだろうか。
(まるで───もう、会えないみたいな言い方だった……)
このまま、行方をくらませたまま、二度と戻って来ないつもりなのだろうか……。
彼は……無事なのだろうか。
(レドに……会いたい……)
学園にいても、こうして街を歩いていても、気付くと深い溜息ばかりついている。
何をしていても、彼のことばかり考えてしまう。
(レドを探そうと思っていたら、街まで来てしまったけれど……冷静に考えたら、こんな人通りの多い場所に潜伏したりしないわよね……)
木を隠すなら森の中、とはよく言うが、今回の場合に関しては検討外れだったかもしれない。
「…………」
ふと視線を感じ、立ち止まる。
(まただ……)
気配が掴めるようで掴めない────そんな感覚がここ数日間続いていた。
しかも、今日の気配は────。
歩きながらその気配を探る。
(今日はなんだか……つけられているような気がするのだけれど……)
学園を出てからずっと、そんな気配がしていた。
(……まさか、レド?)
「…………」
(ここでは人目につくわね……)
私はその気配に気が付いていないフリをしつつ、人気のない路地へと入った。
(……もう、この辺でいいかしら?)
路地の奥まで進んだところで、後ろを振り返る。
それと同時に、私の背後でドサッと何かが倒れた。
倒れたのは、黒いローブを着た男のようだった。
そしてそのすぐ近くには───
「…………」
「レド!?!」
ローブの男の後ろにいたと思われるレドの手には、血のついたナイフが握られている。
倒れたローブの男に目をやると、地面には赤黒い液体が足元まで徐々に広がってきていた。
「!?」
「ベリルさん、こちらへ」
状況を理解する前に、レドに肩を抱かれて路地のさらに奥まで連れて行かれる。
「……チッ、追っ手が多い」
彼は小さく舌打ちをし呟くと、周囲に気をやりながら警戒の色を見せる。
(追っ手……? 周囲に人の気配はないように感じるけれど……というか! ど、どういう状況!? レ、レドが目の前にいて……!?)
「……ふっ、今ので完全に反逆として見なされたか────。ベリルさん、少し失礼しますね」
「え───わっ……!」
突然、身体がふわりと浮く。
レドに横抱きにされた私は、そのまま彼に運ばれるがまま路地を抜け、森へと出た。
「ここまで来れば───粗方撒けたか」
しばらく森を走ると、レドは私をそっと地面に下ろした。
私と視線が交わった時、彼は少し気まずそうに視線を逸らし口を開いた。
「…………すみません、ベリルさ───」
「レド……っ!!!」
ガバッとレドに抱きつく。
その行動に驚いたのか、彼はピタリと硬直した。
「どうして……っ、どうして急にいなくなったりしたの!? なんで……なんで置いて行ったりしたの……!? 心配したのよ!?」
「…………ベリルさん」
レドは私の背に腕を回し、私を安心させるように抱きしめ背中をさすってくれる。
そのおかげでだいぶ落ち着きを取り戻せた。
「レド……今までどこに居たの? それに───さっきのローブの男は一体……貴方の仲間ではなかったの?」
「学園を離れたあとの数日間は、ルデン様を狙う賊の特定と、暗殺者ギルドから派遣されてきた賊の排除に追われていました」
「え……もう真犯人を特定したの!?」
「ええ。その者はすでに捕らえているので問題ありません」
「そ、そう……さすが……」
(何事でもないように言うけれど、とんでもなく早い対応よね!? さすが王子の従者……)
「そして、先程のローブの男は、ここ数日ベリルさんを始末するため暗躍していた者です」
「あ、ここ数日の気配はそういう……。それも、始末って……殺そうとしていたということ? 何故……」
「それは……私の忠誠心を図るため、だと思います」
「忠誠心?」
「ええ……。私はもうすでに、ルデン暗殺の任務を放棄しています。彼らはそれが反逆なのか、作戦なのかを見極めるため、わざと分かりやすく貴女を狙い、私を誘い出していたのです。もしも反逆ならば、貴女を助けに来るだろうと────」
「つまり……さっきのローブの男は私を殺そうとしていて、それをレドが助けてくれた。けれどそのせいで、向こうは完全に貴方が反逆者であると認識した、ということ……?」
レドはコクリと頷いた。
「……ごめんなさい、私のせいで。私が軽率に人気のない路地になんて入ったから…………」
「貴女が気に病む必要はありませんよ。私が反旗を翻しているのは事実ですし、いずれ向こうにも悟られていたと思います。……まぁ、貴女が路地に入って行った時はヒヤリとしましたが。路地で何をしようとしていたのですか? 追尾されていたことには気が付いていましたよね?」
「……ええ。だけど、もしかしたらレドなんじゃないかと思って……。私……貴方に会いたくて……」
シュンと肩を落とすと、レドは少しだけ驚いた後、私を愛おしそうに見つめた。
「まったく……貴女という人は本当に……可愛いことを言ってくれる」
ふわりと笑みを浮かべるレドに、心臓がキュンと鳴った。
「貴女に迷惑をかけたくなくて貴女たちの元を去ったはずが……結局、貴女を危険な目に合わせてしまいました。申し訳ありません」
「そんなこと……。一人でカタをつけようとするなんて、水臭いわ。私も、貴方の力になりたいの。襲われそうになっておいてこんなことを言うのは説得力の欠けらも無いけれど……極力自分の身は自分で守るようにするから。だから……貴方のそばにいさせてほしいの」
「……ベリルさん。ありがとうございます。しばらく奴らはベリルさんを標的に動くはずですから、しばらく私のそばにいてくださると助かります。……ひとまず、隠れ家に移動しましょうか。一度撒いたとはいえ、追っ手に追いつかれたら面倒ですので」
(隠れ家なんて持っているのね……さすがだわ)
「ええ、分かった」
私はレドと共に隠れ家へと向かった。




