【レド5ー3】襲撃者
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中庭は学生たちで騒然となっていた。
人の波をかき分け、ルデンの姿を探すが、中庭には既にいないようだった。
中庭にいた学生たちが、訝しげに私たちを見ている。
(……何?)
どうやら、彼らが見ているのは私たちではなく、レドのようだった。
「───ベリル、レド」
学生の人だかりの真ん中に、真っ直ぐ道ができる。
その道を進んで来たのは理事長、ゲルドだった。
「理事長……っ! ルデンは……!?」
「落ち着きなさい。ルデンは無事だ」
理事長の言葉を聞いて、ひとまず息をつく。
「よかった…………」
「……二人とも、私と共に来てくれ」
今までに見たことがないほど真剣な表情で言う理事長。
それが、事態の重さにより拍車をかけた。
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理事長室まで連れて来られた私たちは、まずルデンの容態と、何が起こったのかを聞いた。
「───昼過ぎ頃。中庭で、賊の襲撃にあったようだ」
(それって───私たちと別れた、少しあとってこと!? そんな……!)
「幸い、切り傷の方は浅い。だが、刃に毒が塗られていたようで、毒が抜けるまでしばらく安静が必要だ。殿下に毒耐性がなかったら、確実に死んでいたと医術師は言っている。最初から賊は、殿下を毒で殺すつもりで切ったということだ。外部の人間が人目に付くかもしれない場所で、白昼堂々と暗殺を実行するのは極めて難しい。すなわち───内部に暗殺者が紛れ込んでいる可能性が非常に高い」
「……っ」
「それに殿下ほどの実力で不意をつかれたということは……顔見知り、もしくはその場にいても不思議に思わない誰か、が犯人である可能性が高いんだ」
「学生や……教員に暗殺者がいるかもしれない……ということですか? そんな考察を立てるということは……ルデンは、襲撃者の顔を見ていないのですね」
「あぁ、残念ながら。毒の即効性が高く、背格好も分からないそうだ」
「そう……ですか」
「だが───それらしい人物を見た、という目撃者が出ている」
「本当ですか……!? 一体誰────」
誰かと問う前に、思わず口を噤む。
理事長は真っ直ぐにレドのことを捉えながら、口を開いた。
「───レド。中庭から逃げるように立ち去る君らしき人影を見た、という学生が複数人いるんだが……それに対し、何か弁明はあるかい?」
(な……っ)
「君は殿下の従者で、ダイヤモンドに選ばれた優秀な学生の一人でもある。だから、私としても君を疑うことは不本意ではないんだ。けれどね、そのような証言が上がってしまったら、私も事情を聞かなければならない」
「…………」
(……どうして、何も言わないの!)
「……」
(───レドは、犯人ではないわ)
私は短く息を整え、一歩前に出た。
「理事長、発言してもよろしいでしょうか」
「なんだい?」
「レドに犯行は不可能です。何故なら、ルデンが襲われたと思われる時間、私は彼とずっと一緒にいました」
あえて、レドが教授に呼ばれて行った空白の時間を伏せて進言した。
「!?」
レドはぎょっとした表情で私の方に顔を向けた。
「ほう、君が証人になる、と? 一体どこにいたのかな?」
「ちょうど、中庭と理事長室の間くらいの廊下で、ルデンを待ちながら話をしていました。ルデンは理事長に呼ばれたと言っていたのですが……何故中庭なんかに。理事長室とは真逆ですよね」
「それなんだが、今日、私は殿下を呼び出していないんだよ。おそらくその呼び出しが、賊の罠だったんだろう」
「……そうですか。では、理事長はルデンを誘い出すために利用され、レドは罪を着せるために利用されたのかもしれません。そもそも、レドはルデンの従者で、学園の外でも共に行動することができるのですよ? わざわざ見つかる可能性の高い学園内でルデンを狙うメリットがありません。現に複数人の学生に目撃されているのでしょう? 聡明な彼なら、そんなミスは犯しません。さらに言うなら、主の毒耐性について、従者がそれを知らないはずがありません。毒耐性持ちを殺害するのに、毒を用いるのは不自然です! 細かい点を挙げればまだいくつも挙げられますが───まだお聞きになられますか?」
「……いや、いい。レドが犯人とするなら、不審な点が多いというのは私も分かっていたよ。これはあくまで念の為の事情聴取だ。気を悪くしたのならごめんね」
「…………ルデン様は、今どちらに───」
「安全な場所で処置を受けている、とだけ伝えておく。君たちのことはもちろん信用しているが、襲撃者が特定されるまではレドの容疑を完全に晴らすことができないのも事実。従者として、主を守れなかったという悔いもあるだろうが、今はどうか抑えてくれ」
「───……分かりました」
「それと、もうすぐ王宮魔導師が調査のためここへ到着する予定だ。彼らからも軽く事情を聞かれるだろうから、二人は時計塔で待っていてくれ」
「……姿を目撃されたのは私だけで、彼女は無関係です。彼女は寮へ帰してください」
「……っ」
今度は私がレドの方へと顔を向け、彼に抗議の視線を送った。
「ベリルを巻き込みたくない気持ちは分かるが、君の無実を証明できるのは現在彼女のみだからね。ベリルも、レドの証人として魔導師たちに状況を説明してくれ」
「もちろんです」
「では、また時計塔で」




